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組織課題から逆算して、人事施策をデザインする──組織診断から考える、成長組織の壁 (4)

前稿『組織課題は、なぜ構造で捉えなければならないのか』では、組織で語られる個別の事象を構造化し、組織課題として可視化する方法について書きました。しかし、組織課題が見えただけでは、組織は変わりません。

次に必要なのは、どの課題を優先して解くのかを決め、その課題から逆算して人事施策を設計することです。本稿では、診断結果を経営や事業責任者との対話につなげ、複数の人事施策をデザインし、実行していく考え方について述べます。




診断結果から優先課題を決める

組織診断では、複数の組織課題が可視化されます。目標設定、評価、マネジメント、組織構造、部門間連携、人材育成。どれも重要に見えますが、すべてを同時に解決することはできません。

そこで、診断結果を経営や事業責任者と共有し、何を優先して解くべきかを対話します。判断の軸となるのは、重要度と緊急度です。重要度とは、その課題を解決したとき、事業や組織にどれほど大きな効果があるか。緊急度とは、放置した場合に、どれほど早く事業や組織へ影響が及ぶか。

ただし、診断で示された数値だけで優先順位を決めるわけではありません。事業戦略や経営状況を重ね合わせ、今の会社が最優先で解くべきボトルネックを見極めます。例えば、評価への不満が広く認識されていても、事業の急拡大によってマネジメント体制が追いついていないのであれば、評価制度の改定より先に、管理職の役割や組織構造、権限設計を整える必要があるかもしれません。

優先順位づけとは、課題の深刻さを並べることではありません。事業戦略の実現を最も阻んでいる組織課題を特定することです。


人事施策から考えない

優先課題が決まると、次に打ち手である人事施策を考えます。このとき避けたいのは、最初から「評価制度を変えよう」「管理職研修を実施しよう」「1on1を導入しよう」と、人事施策ありきで議論を始めてしまうことです。これらはすべて施策であって、目的ではありません。

例えば、ミドルマネジメントが十分に機能していないという組織課題があったとします。原因が管理職の経験不足であれば育成施策が必要です。一方、役割が曖昧なのであれば役割定義を見直す必要があります。過大な管掌範囲が問題であれば、組織構造や権限分担を見直すべきです。

同じ組織課題に見えても、背景にある構造が異なれば、必要な人事施策も変わります。だから、まず解くべき組織課題を定める。その課題から逆算して人事施策を考える。この順番を崩さないことが重要です。


人事施策を3層でデザインする

ここでいうデザインとは、単に人事施策を選び、並べることではありません。一つの組織課題を解決するために、複数の人事施策が相互に作用する状態を設計することです。次の3つの層で人事施策をデザインします。

第1層:人事施策を組織課題解決に適合させる

まず、人事施策は解決すべき組織課題に対して有効にデザインされる必要があります。

例えば、マネージャーに部下育成の役割を担ってもらうために研修を実施するのであれば、一般的なコミュニケーションスキルを教えるだけでは不十分な場合が多いです。マネージャーに何が期待されているのか。現状、どのような行動が不足しているのか。その差分を埋める内容として研修を設計する必要があります。

組織課題との適合を起点に、個々の施策を設計する。これが第1層です。

第2層:複数の人事施策を相互に作用させる

一つの人事施策だけで、組織課題が解決することは多くありません。

例えば、マネージャーに部下育成を期待するのであれば、研修を実施するだけでは十分ではありません。研修で必要なスキルを学び、役割や権限の定義によって期待される行動を明確にし、評価制度でその行動を評価する。そして、1on1の運用を通じて日常的な実践機会をつくる。

このように、複数の人事施策を組み合わせることで、初めて継続的な行動変容が期待できます。複数の施策を同時に展開する際は、それぞれが相互に作用し、効果を高め合うように設計します。

マネージャー向けのコミュニケーション研修と並行して、メンバー向けに1on1の活用研修を実施し、そのタイミングに合わせて1on1の運用ルールも見直す。こうすることで、研修で学んだ内容を現場で実践しやすい環境が整います。

第2層では、個別の人事施策を独立して設計するのではなく、組織課題の解決に向けて相互に作用する一つの仕組みとしてデザインします。

第3層:既存の人事施策と調和させる

第3層では、新たに始める施策だけでなく、すでに存在する制度や運用との関係も考慮に入れて、既存の制度や運用を含む一つのシステムとして、人事施策をデザインします。

先ほどの例で言えば、研修で身につけたスキルを人事制度の評価項目に加えることで、現場での実践度を高めることができます。また、当該スキルの発揮を等級要件に反映すれば、昇給や昇格の判定基準となり、行動変容をさらに促進できます。

一方、新しい施策がどれほど優れていても、既存の仕組みと矛盾すれば、期待した効果は生まれません。よって、新規施策同士の組み合わせだけでなく、既存の人事制度や施策との整合までを含めて統合的にデザインします。

この3つの層を一体として捉えることが、人事施策をデザインするうえでの要点となります。


経営と人事がそれぞれの役割を果たす

人事施策のデザインは、人事部だけでは完結しません。

組織構造や管理職の役割、評価の考え方、現場の業務分担など、人事施策の多くは事業運営そのものに関わるため、経営や事業責任者の意思決定を伴います。だからこそ、優先課題を決める段階から、経営や事業責任者が当事者としてコミットする必要があります。

人事が制度をつくり、現場へ展開するだけでは組織は変わりません。経営や事業責任者が、なぜその課題を解くのかを示し、現場で何を変えるのかを意思決定する。そして、人事がその変化を支える制度や施策をデザインする。経営と人事がそれぞれの役割を果たして初めて、組織課題は解決へと向かいます。


人事施策は実行して終わり、ではない

人事施策は、成果が表れるまで時間がかかるという特徴があります。

役割を定義しても、すぐに行動が変わるわけではありません。研修を実施しても、すぐにマネジメントが改善するわけではありません。制度が変わり、行動が変わり、その行動が習慣になる。さらに、その習慣が組織に定着するまでには時間が必要です。

人事施策は一度実行して終わりではありません。狙った行動変容が起きているか。施策同士が想定した相互作用を生んでいるか。既存の制度や運用が変化を妨げていないか。さまざまな観点で検証し、必要に応じて修正します。

短期間で成果が見えないからといって、次々に施策を入れ替えれば、組織は変わる前に方向性を失います。人事施策には検証と改善を重ねながら、粘り強く取り組む必要があります。


おわりに

組織課題に万能な人事施策はありません。重要なのは、施策から考えるのではなく、解くべき組織課題から逆算することです。

診断によって組織課題を可視化する。経営や事業責任者との対話を通じて、事業戦略の実現を阻むボトルネックを見極める。その課題から逆算して人事施策をデザインし、複数の施策と既存の仕組みが相互に作用するよう設計する。そして、効果を検証しながら粘り強く改善を続ける。

人事の仕事は、制度や研修を個別につくることではありません。組織課題を起点に人事施策をデザインし、組織の変化を実現することです。



最後までお読みいただき、ありがとうございました。「成長組織の壁」をテーマにお届けしてきた本シリーズは、今回で一区切りとなります。本シリーズでは、組織課題を構造で捉え、診断し、人事施策へとつなげる考え方について整理してきました。

しかし、組織が整えば、人が育つわけではありません。次稿からは、「人材育成のシステムデザイン」をテーマに、人が育つ組織は何が違うのか、その仕組みについて考察を深めていきたいと思います。

成長企業の戦略人事を経営視点で考えるコラム「経営と人事のあいだ」を、今後も継続して発信していきます。

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※ ヘッダー画像とタイトルはAIを用いて作成しました。

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