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小説・ココイロ談義⑦完

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2人とも本音を心に秘め、しばし思いを巡らせる。

静寂を破ったのは晴子だった。

「ここ一か月くらいはピンクじゃなかったな。グレーがかったピンク? 曇りを取ろうとするんだけど、こすればこするほどにじむの。しんどかったな」
広翔についての思いを初めて言葉にした瞬間だった。自ら閉じていた扉を開くと、凝り固まっていたグレーのピングが、声の響きとともにゆるゆると溶けていく。

「そう、だから」少しずつ力が戻ってくる。

「ずっと引っかかってたつっかえが取れたの。一番怖かったことを言われたら、緊張の糸が切れた。そうしたら、心の雲が晴れて――」

「晴子の心が晴れたか」海月はふっと微笑んだ。

「そうね」晴子も笑うと空を仰いだ。「そうそう、今日みたいな感じ」

「私はさ、青だと思う」

「え?」

「恋の色」

「どうして?」

「海みたいな青やねん。ビーチとかの明るいやつじゃなくて、もうちょっと濃いの。静かで透明やけど、いろんなものを受け止める感じ。あたしも相手もそういう青。あんたみたいに、片方だけじゃなくてさ」
意地悪な笑顔を晴子に向ける。

「なにそれ、恋なの?」晴子は納得できない顔をした。

「さあ」何でもいいじゃん、とでも言うかのような適当な返事をする海。

「海の青……名前に入ってるから?」

「別に、そういう訳じゃないけど」

「きっとそうだよ」晴子は決めつけた。「あたしは晴子だから空かな。2人とも青だ」初めて気づいた考えに我ながら驚いた。

「そういえば……」晴子は思い出した。「私の名前、なんで付けたかお母さんに聞いたことがあるの」

「昭和な名前」

「うん」海月が茶化しても気にしていないらしかった。

「私が生まれた日、びっくりするくらいの快晴でね、人生で見た中で一番青かったんだって。『この子の誕生を祝ってくれんたんだ!』って、勝手に決めたって。私が元気に泣いてるのを見て、『よくわかんないけど、最高に幸せ!』って思ったっていってた。変なお母さん」思い出し笑いをした。

「だから晴子」

「うん」

「青やな」

「青ね」

「それってさ、恋じゃないな」

「そうだね。じゃあ……愛だね」目を輝かせて晴子は振り返る。

「愛ねえ」考えるように右上を見る海月。

「違うの?」

「愛でもいいんだけどさ。なんでもかんでも愛っていうの、安っぽいからすきじゃない」

「そうなんだ」”愛”が好きじゃないってどういうことだろう、と不思議に思った。

「もっとさ、広くて深いんだよ。たぶん」

「へえ……」
晴子は海月のいわんとしていることはよく分からなかったが、穏やかな表情で空を見上げる海月の瞳の奥に海を見た気がした。

少し鼓動が高鳴る。
どうして自分はドキドキしたのだろう? これは恋じゃない。私はそういうのじゃない。なら愛? よく分からない。——考えるのはやめた。ただ、不思議と心地いい今に身をゆだねよう。

「海月、ありがとう」

「は?」

「いいから」

1人納得した晴子が満面の笑みを向けると、海月もまた大人びた透き通る笑顔を見せる。海月が空を見上げると、晴子も自然とそれに従った。木漏れ日からのぞく濃く澄んだ青が2人を照らした。

<完>

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ほかにもいろいろ書いてます。


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