【第3話】「内受容感覚の偏り」が引き起こす“二次的な困りごと”──見えない感覚のズレが、行動や気分に与える影響とは?
【内受容感覚】 【シリーズ連載】【基礎知識】
はじめに
「体調は悪くないのに、なぜか落ち着かない」「すぐに癇癪を起こす」「自分でもわからない不安がある」
——そんな“説明のつかない困りごと”に、出会ったことはありませんか?
このような現象は、心理的要因や環境ストレスのせいと片づけられがちですが、実は“内受容感覚の偏り”が背景にある可能性も少なくありません。
本記事では、シリーズ第3話として、
「内受容感覚の偏りがもたらす二次的な困りごと」について取り上げます。
気分・行動・体調の不安定さが“体内感覚のズレ”から来ていることは、案外見落とされがちです。
内受容感覚とは(第1・2話の振り返り)
第1話では「説明がつかない症状の背景にある“見えない感覚”」として内受容感覚を紹介しました。
第2話ではその役割と分類(①強度 ②感受性 ③気づき)を3つの視点で解説しました。
👉 本シリーズをまだ読んでいない方はこちらから:
第1話:「説明がつかない症状」の背景にある“見えない感覚”
第2話:内受容感覚の分類と役割──“見えない感覚”を3つの視点から捉える
“二次的な困りごと”とは?
内受容感覚が過敏/鈍麻/気づきづらい場合、それ自体は他人にはわかりません。
しかしその結果として、次のような行動・気分・身体症状が“二次的に”現れることがあります。
✔️行動面:癇癪、過食、拒食、過度な活動性、突然のフリーズ
✔️気分面:不安、抑うつ、怒りっぽさ、情緒の波の激しさ
✔️身体面:疲労感、腹痛、頭痛、吐き気、過呼吸など
これらは時に「心の問題」とされがちですが、
「身体の中の感覚のズレ」という視点から捉えると、支援の方向性が変わってきます。
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受容感覚のズレがもたらす“3つの困りごと”
内受容感覚の偏りは、ただの「感覚の問題」ではありません。
気づかれずに二次的な問題として表出し、誤解されやすく、対処も遅れがちです。
今回は「行動」「情動」「身体症状」の3項目ごとに、内受容感覚との関連をわかりやすく表にまとめました。



💡 表の補足ポイント
「強度」 :入力される刺激の“強さ”。小さな刺激でも過剰に反応す
るかどうか。
「感受性」:センサーの感度のばらつき。鈍すぎても鋭すぎてもズレ
が生じる。
「気づき」:自分の身体感覚に“気づけるか”。この差が行動・情動の
選択に直結。
🔍 POINTまとめ
「行動」「情動」「身体症状」は、どれも内側の感覚(内受容感覚)への気づきと調整力に依存します。感覚のズレを「性格」や「甘え」と誤解すると支援が遠回りになってしまいます。センサーとしての“自分の身体”に気づく視点が、支援・理解・対応の第一歩になると考えます。
🔖 参考文献一覧(要約付き)
1. Craig, A. D. (2002). How do you feel? Interoception: the sense of the physiological condition of the body. Nature Reviews Neuroscience, 3(8), 655–666.
→ 内受容感覚は自己認知と感情の基盤。
2. Paulus, M. P., & Stein, M. B. (2010). Interoception in anxiety and depression. Brain Structure and Function, 214(5-6), 451–463.
→ 不安・うつは感覚の誤処理と関連。
3. Murphy, J., Brewer, R., Catmur, C., & Bird, G. (2017). Interoception and psychopathology: A developmental neuroscience perspective. Developmental Cognitive Neuroscience, 23, 45–56.
→ 内受容感覚の発達と精神疾患との関係性。
4. Van Oudenhove, L., Vandenberghe, J., Demyttenaere, K., & Tack, J. (2004). Psychosocial factors, psychiatric illness and functional gastrointestinal disorders: A historical perspective. Digestive and Liver Disease, 36(2), 81–88.
→ IBSなど身体症状への内受容感覚の影響。
5. Jenkinson, P. M., Taylor, L., & Laws, K. R. (2024). Interoceptive impairments across psychiatric disorders: A meta-analysis. Neuroscience & Biobehavioral Reviews, 158, 105400.
→ 精神疾患に共通する内受容の異常。
6. Trevisan, D. A., Foss‐Feig, J. H., & Perkins, T. (2023). Interoceptive precision deficits in attention-deficit/hyperactivity disorder. Journal of Child Psychology and Psychiatry, 64(4), 876–885.
→ ADHDにおける内受容感覚の精度低下。
7. Trevisan, D. A., Huron, A., & Rinaldi, C. M. (2023). Atypical interoception in autism spectrum disorder: A review. Autism Research, 16(2), 249–264.
→ ASDにおける感覚のズレと情動制御。
8. Li, X., Zhang, S., & Zhang, Q. (2025). Interoceptive dysfunction and depressive symptoms: Evidence from structural modeling. Journal of Affective Disorders, 335, 70–79.
→ うつ症状と内受容感覚の構造的モデル。
9. Khalsa, S. S., Lapidus, R. C., & Tsukayama, E. (2023). Interoceptive awareness and fatigue: Findings from chronic fatigue syndrome. Psychosomatic Medicine, 85(1), 38–45.
→ 慢性疲労症候群における感覚鈍麻と自覚困難。
10. Garfinkel, S. N., Seth, A. K., Barrett, A. B., Suzuki, K., & Critchley, H. D. (2015). Knowing your own heart: Distinguishing interoceptive accuracy from interoceptive awareness. Biological Psychology, 104, 65–74.
→ 心拍認識の正確さと感情安定性の関連。
🔜 次回予告
次回【第4話】では、
「支援の前に自分のことを知ろう」をテーマに、
内受容感覚の“強度・感受性・気づき”を自分でチェックする方法を紹介します。
・「私は感じすぎ?それとも鈍いの?」
・「他人の気持ちに寄り添えないのは、もしかして…」
・「子どもを支援したいけど、まず自分の感覚ってどうなんだろう」
そんな疑問を持つ方に向けて、
医療職・教育者・家族・本人それぞれの立場で使える、自己理解のヒントをお届けします。
支援の第一歩は、“自分のセンサー”を知ることから。
一緒に“感じる力”を見直してみませんか?
もしこの記事が、
「少しでも参考になった」「気づきがあった」「誰かに伝えたい」と感じていただけたら、
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次の記事を書く大きな原動力になります。
シリーズは今後も、
“感覚のズレ”と向き合うヒントや支援の視点を継続してお届けしていきます。
どうぞ引き続きよろしくお願いいたします。
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