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流離の冒険者 ♯1 旅立ち 【連載小説】(ファンタジー小説)

【あらすじ】
ーー小さな灯は、やがて大きな灯となる。

数か月前から、名もなき冒険者として、新たなスタートを切った少年は、この世界を彷徨っていた。

冒険とは、いったい何なのか。
それを見つけるための旅に出る。

どんな小さなことでも、手を抜けない。
これは、かつての憧れをもつ少年の冒険譚である。

流離の冒険者 ♯1 旅立ち【あらすじ】

ーーズシーィン!

「そろそろ、この装備もあついな‥‥‥日陰で休もう」

鉄として熱いのか、装備として暑いのか、もはやわからない。

原因は、この厚手のフルアーマーだとはわかっている。

木陰に吸い寄せられ、フルフェイスのヘルムを脱ぎ、汗を拭う。

「冒険者とは、こんなにも大変だったのか‥‥‥」

とあるクエストをこなすために、わたしはモンスター討伐に出ていた。
依頼内容の割には、報酬がいい。

全身フルアーマーで姿を隠し、完全武装で臨む。
もちろん、そんなことまで準備する必要もない。

「スライム3体で金貨1枚‥‥‥3回こなすだけで、ひと月は余裕で生活できる、だが‥‥‥これは普通ではない」

依頼人との会話を思い出しながら、わたしはボーッとしていた。

「いやー、お待ちしていました!どうぞどうぞお座りください!」

「うむ‥‥‥失礼する」

ーーズシーィン!

「この辺境の地での依頼を受けてくれる方がいるとは。村の英雄です!どうです、村一番の特産品である、この高級ソファーの心地は?」

「最高だと思うぞ」

この依頼人が、何を言っているのか理解できない。
わたしが今感じていることを、何も考えていないのがわかる。

当たり前だが、わたしが感じていることは‥‥‥


ただの鉄の感触である。地べただろうが、この感触は変わらない。

「それで、スライムを倒せばいいのだったな」

「ええ、その通りでございます、ですが、なかなかこれを達成してもらえる方がおらず、困っておりまして‥‥‥報酬がこのように跳ね上がっているのです。わたしも、街から依頼されて、この依頼を頼んでいるもので‥‥‥」

「なるほどな‥‥‥わかった。では、行ってくる」

「よろしくお願いします。冒険者様」

ーードュクシ! ギギッ!

「また、ゴブリンじゃないか。これで何体目だ‥‥‥」

わたしは、森の深くまで来ていた。だが、出会うのはゴブリンばかり。
少し、休んでいると水の音が聞こえる。

その方向に歩いていくと、何かの気配がする。

ーーガサガサ‥‥‥

茂みから、とてつもなく大きな袋が動いているのが見える。
あれはなんだ‥‥‥

わたしは、警戒モードに入り意識を集中させる。
最悪の場合、戦闘になるかもしれない。

囁くように、この森を焼き尽くすかもしれない魔法を詠唱しつつ、剣を構える。その魔法を剣に込める可能性まで考慮して。

ーードサッ!バラバラ!コロコロ!‥‥‥

「痛いです。とほほ」

幼き少女が転んでいる。袋に包まれていた中身を遠目で観察する。

「どんぐり‥‥‥だと」

「えっ?誰!」

しまった、「どんぐり」の声で気づかれてしまった!

あと、おそらく必要ないが、あのわたしの詠唱も「どんぐり」によって途絶えてしまったことも‥‥‥

この動揺を隠すため、暑さに耐えフルフェイスヘルムで来ていてよかった。

これが、知性ある魔族であった場合、わたしの冒険者人生は、この瞬間に終わっていたとも想える。

「あっ、驚かせてすまない。わたしはスライム退治でここに来た冒険者だ。戦う気はない」

剣を置き、ヘルムを脱いで少女を見つめる。
少女はそれでも警戒しているようだ。

わたしは、鋼鉄のアームを外し、あたりに散らばるどんぐりを拾い始める。

「手伝おう」

その姿をみて、少し安心したようだった。
少女も一緒に拾い始める。

「‥‥‥ありがとう」

「いや、いい。すまないが、この辺でスライムが出るポイントを知っていないか?わたしは、ここのことをよく知らないようなんだ」

「‥‥‥スライムが出たと聞いたのは、もっとあっち」

指をさして教えてくれたのは、わたしの思っていた位置とは違う。
少女の話では、もっと森の深いところだという‥‥‥

「なるほど‥‥‥わたしはこの依頼を甘く見ていたようだ。教えてくれてありがとう」

「こくり」

「村まで送ろう。あと、礼として高いところで取れる木の実を見つけたら教えてほしい。わたしが取りながら帰ろう」

少女はにっこりとしている。

鼻歌を歌いながら、ともに森をお散歩する。
鋼鉄のアーム越しに、温かいものを感じながら。

村に到着する。わたしは村人に歓迎された後、依頼をこなすためスライム討伐に向かう。

ーードュクシ!ピキー!

「これで、最後か」

ーーコロコロ‥‥‥

「これは、冒険者には危険かもしれないな。隙がうまれる。いい勉強になった」

二度とこのような依頼が、ギルドで募集されないように、わたしはこの周辺のスライムを殲滅した。

わたしは、依頼通りスライム3体を討伐したと受付で報告する。
ギルドマスターへのプレゼントとして、袋に大量の魔石と手紙を添えて贈りつける。

本当に必要な依頼は‥‥‥

食料クエストであるという想いを込めて。

ーーつづく。



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