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真夜中はきみの時間 第三話【創作大賞2024 応募作品】


◯回想(大学・学食)
   天音、学食のテーブルでパソコンを開いている。
   そこに優、走ってくる。
優「あーまーねーちゃんっ!」
天音「刈谷さん、びっくりしたあ」
優「執筆中?」
天音「今は課題中」
優「そか!あのね、天音ちゃんに相談があるんだけど、今いい?」
天音「あ、うん、大丈夫」
   パソコンを閉じる天音。
   優、天音の横に座り、
優「私ね、演劇サークルに入ってるのね」
天音「そうなんだ、知らなかった」
優「大学内で演劇する時は人数もいて先輩方がいてなかなか出番ってもらえないのよ。だから、友達と別で劇団を作って、活動しようって言ってて」
天音「すごいね」
優「でね、今度公演をするんだけど、脚本に迷ってて。既存のものよりオリジナルがやりたいのね。でも自分たちではピンとくるものが出来上がらなくて…そこで!」
   優、天音の手を握り、
優「天音ちゃんに書いてもらいたいなあって思って!」
天音「え…私!?」
優「こないだの小説すっごく面白かったし、天音ちゃんならいい脚本書いてくれそうだなあって」
天音「でも私、舞台の脚本書いたことないし…」
優「大丈夫だよ!天音ちゃんのアイデア貸してもらいたいの!お願い!」
   天音、戸惑いながら、
天音「わ、わかった…」
優「ほんと?やったー!ありがとう!」
   優、天音に抱きついて喜ぶ。
   天音、戸惑いながら笑う。
   (回想終わり)


◯天音の家(朝)
   天音、洗面台で顔を洗っている。
   鏡に映る自分の顔を見て、
天音「…今日お休みでよかった。泣いたのバレバレだ」
   重い瞼にくすりと笑う。

   × × ×
   リビングでコーヒーを飲む天音。
   スマホを見る。
   検索履歴には『工藤謙士』の文字が残っている。
   スクロールすると新着ニュースの中に『工藤謙士、初ラジオ番組スタート』の文字。
天音「すごいなあ」
   記事をタップしようとしたが手を止め、
天音「うん、私も頑張らねば」
   一人頷き納得し、スマホを閉じる。
天音「よし!」
   気合いを入れ直して、パソコンに向かう。


◯カフェ
   謙士、仕事モード(前髪重め+眼鏡あり)
   マネージャーの見上と向かい合って座っている。
見上「謙士、見たか?数字」
謙士「…はい」
   見上、タブレットを見ながら、
見上「新人声優が曜日ごとにパーソナリティを交代するインターネットラジオ、火曜日担当工藤謙士。再生数なあ…。本人の人気、出演作品の話題性、まあ顕著に出るから気になるだろうけど、反省活かしていくしかないよ」
謙士「はい」
見上「緊張してた?第一回目」
謙士「…自分のキャラ迷子」
見上「仕事モードの謙士は面白くないもんな」
謙士「え!見上さんそう思ってたんですか?」
見上「圧倒的にプラベの関西弁の時の方が突き抜けてるだろ、声も」
謙士「ええー」
見上「仕事の時は真面目でいいんだよ。ただ、フリートークとなると、ちょっと面白味にかけるんだよなあ」
謙士「はい…」
見上「最近はSNSもあって線引きが曖昧になってる業界人も多いから、そういう意味では俺としては有難いよ。完全に分けてくれるお前はわかりやすいし、いうてプライベートも仕事も真面目だし信用してる。でも、もしかしたらラジオでは、謙士の素の部分がカギになってくるのかもな」
謙士「…」


◯公園
   天音、公園のベンチに座っている。
   買い物袋からアップルティーを取り出し、飲む。
天音「やっぱり美味しいなあこれ…」
   ベンチの隣に掲示板があり、目をやる天音。
   いろんなポスターが貼られている。
天音「…スポーツクラブ、健康体操、劇団…」
   パッと目を離し、手元を見つめる。
志保の声「天音ちゃん?」
   ハッとする天音。
   目の前に志保がいる。
天音「わっ…む、紫谷さん!」
志保「志保でいいよお。こんにちは、一人?」
天音「し、志保さん。はい。ぼーっとしてました」
志保「いいねえぼーっとする時間。すきすき。私もね、ぼーっと散歩。あ、それこないだ謙士くんも飲んでた。仲良しだねえ」
天音「(笑って)美味しいんですこれ」
志保「私も今度買ってみよー。あ、劇団の公演があるんだあ」
   志保、掲示板のポスターを見る。
志保「見に行ったことある?こういうの」
   天音、顔が強張る。
天音「…あり、ます」
   志保、優しく微笑み、
志保「そっか。私舞台作るの好きなの。次の作品、いろんな人とコラボレーションしたいと思っててね、天音ちゃんどう?」
天音「えっ?私?」
志保「もし何か表現したいことがあったら、一緒にやろうよ。じゃあ、またね!」
天音「あ……」
   志保、軽やかに走って去っていく。
   ベンチに一人残される天音。


◯居酒屋(夜)
   名波、カウンターで飲んでいる。
   笠田、カウンター内から、
笠田「今日、天音ちゃんお休みだよ」
名波「知ってますよ」
笠田「知ってるんだ…」
名波「普通に飲みに来たっていいでしょ」
笠田「ほどほどにしてよ、お客さん」
   ガラッと戸が開き、謙士(仕事モードの前髪重め+眼鏡あり)入店。
   カウンター席に案内され、名波の横に座る。
笠田「いらっしゃいませ。何にします?」
謙士「烏龍茶と、とんぺい焼き一つお願いします」
笠田「はい。少々お待ちくださーい」
   ほろ酔いの名波、謙士を見て、
名波「お兄さんいい声ですね」
謙士「えっ…ありがとうございます」
名波「眼鏡もお似合いです」
謙士「あ、ありがとうございます…」
   笠田、烏龍茶を持ってきて、
笠田「ごめんなさいね、ちょっと酔ってるみたいで」
謙士「ああ、はい。大丈夫です」
   烏龍茶を受け取り、飲む。
名波「真面目そうな方だ」
謙士「(苦笑いして)どうも…」
名波「女の子って、やっぱりちょっとヤンチャな男に惹かれるものなんですかね?」
謙士「え?」
名波「俺の好きな人、最近ちょっとヤンチャな…派手な感じの人と一緒にいて、楽しそうで、なんか引力あるのかなと思って。どう思います?」
謙士「まあ見た目だけで判断できないですけど…」
名波「そうですよね。めちゃくちゃ話面白いとか、付加価値あるからこそですよね」
謙士「付加価値…」
名波「好きになる決め手って何なんですかね」
謙士「決め手?」
名波「話が合って、一緒にいて楽しくて、ここまでは友達にだって思うことありますよね。でも一歩踏み込んで好きになってもらうには、俺には決め手がない…。やっぱりそこに顔が好きとか声が好きとか、付加価値がついてくるのかな」
謙士「…わかります、その気持ち。応援してもらえるような、追いかけてもらえるような…そういう「好き」になるまでの…そこまでの魅力が、自分にあるのか…」
名波「…お兄さんも、辛い恋、してるんですね」
謙士「え?あ、いや恋とはちょっと違う…」
名波「飲みましょう!」
   笠田、料理を持ってきて、
笠田「あーあーもう。ほんとすみません」
謙士「いえいえ。彼だいぶ辛い恋をなさってるようで…」
笠田「(笑って)あらあら。不思議な三角形」
謙士「?」


◯天音の家(日替わり・朝)
   テーブルに突っ伏して寝ている天音。
   ハッと目を覚まし、パソコン画面を見る。
天音「よかった…保存してる…セーフ」
   床に寝転がり、スマホを見る。
天音「あれ、深夜に名波くんから写真送られてる…なんだろ」
   スマホ画面には、名波が送信した写真。
   酔って笑顔の名波と、困りながら笑顔の謙士との2ショット写真(酔って撮影した為ブレブレ)
天音「…!?どういう状況…?」


◯居酒屋・休憩室
   天音と笠田、座って話している。
笠田「名波くんがあんなに酔ってたの初めて見たよ。面白かった〜」
天音「隣のお客さん、困ってませんでした?」
笠田「それが案外気が合ったみたいでね、共感し合ってた感じだよ。名波くんに親身になってくれてたし、優しい方でよかったわあ」
天音「そうなんですね」


◯コンビニ前・路上(夜)
   仕事帰りの天音、歩いている。
   天音、少し期待しながら、コンビニの方を見る。
   しかし誰もおらず、店内にも客はいなかった。
   肩を落として帰ろうとする天音の後ろから、
謙士の声「天音!」
   天音、ドキッと胸が高鳴る。
   振り返ると、謙士(プラベモードの前髪かき上げ+眼鏡なし)が走って来ている。
謙士「間に合ったー。よかった」
天音「謙士くん?」
謙士「いつもの時間かなあと思って、帰り」
天音「わざわざ来てくれたの…?」
謙士「近くで打ち合わせしてて、さっき終わったから…」
天音「ありがとう…。走ってまで…なんでそこまでしてくれるの?」
謙士「…なんでやろ。天音と話せる時間やから?」
天音「…(ドキッとする)」
謙士「店員さんと客の時は、あんま話せへんやん」
   謙士、照れながら、
謙士「肩の力抜いて話せるこの時間、大事やなと思ったから」
天音「…うん。私も、この時間好きです」
   二人、笑い合う。

   × × ×
   二人並んで歩きながら、
天音「この前はすみませんでした。大泣きしてしまって…」
謙士「いいよいいよ。次の日目腫れたんちゃう?」
天音「はい」
   謙士、笑う。
天音「謙士くん、昨日、うちのお店でご飯食べてました?」
謙士「うん。隣の人と話盛り上がってさあ、楽しかったよ。店長さんがずっとごめんねーって言ってくれてて、常連さんなんかな?」
天音「あの…名波くんっていって、元々あそこで一緒にバイトしてた人なんです。ご迷惑おかけしてすみません…」
謙士「あ、そういう繋がりか!納得」
天音「ずっと名波くんの話親身になって聞いてくれてたって店長から聞きました」
謙士「いや共感できるところがいっぱいあって俺も助かったっていうか…。名波くん、いい奴そう」
天音「(笑って)いい人なんです。お酒は強くないみたいだけど」
謙士「あ…もしかして名波くんの…」
天音「?」
謙士「いやなんでもない。飲みの席の話は素面の時は御法度や」
天音「でも名波くんも、謙士くんに話聞いてもらえて、すっきりしたと思うなあ。私みたいに」
謙士「んー、ならいいんやけど…。的確なアドバイスなんかできひんだし、反省やわ…」
天音「世の中にはそうかあ、って背中さすってくれるだけで楽になる人がいっぱいいますよ」
謙士「でもそれでは弱いねんなー…。あ、ごめんこれはまた別の…」
天音「…私謙士くんのツッコミ、気持ち良くて好きですよ」
謙士「へ?」
天音「芸人さんばりのなんでやねん!っていう鋭いツッコミです。力強くて空を裂くような声でスパーン!って飛んでくツッコミ!最初聞いた時びっくりと同時に気持ちよかったんですよね。そんな全力のツッコミ普段聞かないから」
謙士「怖ない?」
天音「私は日常生活で聞くのが新鮮だったし、小気味いいなって」
謙士「…目から鱗やわ」
天音「え?なんで?」
謙士「小気味いいって…初めて言われたわ。大体俺の声、通り過ぎてうるさいとか、関西弁怖いとか、そんなことしか言われへんから」
天音「私は好きです」
謙士「…(ぐっとくる)ありがとう。なんか、ちょっと道がひらけた」
   天音、嬉しそうに笑う。


◯スタジオ(日替わり)
   謙士、ブースの中で喋っている。
   眼鏡をかけて、前髪をかき上げている。
   ブースの外で見守る見上。
スタッフ「見上さん、今日彼雰囲気違うね」
見上「ええ、殻を一枚破ろうとしているのかもしれません」
   謙士、笑顔で楽しそうに喋っている。


◯居酒屋(日替わり)
   個室に賑やかな乾杯の声が響く。
全員「おつかれー!」
大久保「謙士くん、ラジオ好評みたいじゃん」
紫谷「なんか緩急あるラジオになっててよかったよ〜」
見上「そうなんですよお、謙士、勇気出しました!」
田辺「当たり障りのないこと言ってるだけだったもんな、一回目」
紫谷「ちょっとエッジの聞いた回答はいつもの謙士くんっぽいし、優しく寄り添うところは残ってて、女子はきゅんだと思うよ〜」
見上「でしょう?いい塩梅を見つけたみたいで本人もやりやすそうで」
   謙士(仕事モードの前髪重め+眼鏡)、顔が赤くなっている。
謙士「その本人がいるところで総評すんのやめれる?」
紫谷「いいじゃん感想言わせてよ」
田辺「褒めてるじゃんよ」
謙士「田辺さんはさっき第一回をボロクソ言っただけです」
大久保「まあまあ、順調みたいで何よりだよ」
   ノックの音。
天音の声「失礼いたします」
   戸が開いて、天音が料理を持ってくる。
紫谷「天音ちゃーん」
田辺「あ、天音ちゃんだ」
謙士「なんで田辺さんまで天音ちゃん呼びなんすか」
田辺「なんだ謙士、やきもちか」
紫谷「自分は呼び捨てしといてねえ〜」
田辺・大久保・見上「呼び捨て…!?」
謙士「うるさいなーもー!」
   天音、笑って、
天音「皆さんいらっしゃいませ。いつもありがとうございます」
田辺「こちらこそでーす」
   謙士、立ち上がり、皿を運ぶのを手伝う。
   天音だけに聞こえる声で、
謙士「いつもながらうるさくてごめん」
天音「知らない間に皆さんに認知されてて嬉しいです」
謙士「認定て」
天音「では、ごゆっくりです」
   天音、退室しようと戸を開ける。
   ちょうど戸の前を通る優と目が合う。
   座敷に膝をついている天音、立ち上がれず固まる。
謙士「?」
   謙士、天音の様子がおかしいと気付き、視線の先に目をやる。
   優と目が合う。
優「あっ、謙士さん?お疲れさまです〜!」
謙士「…刈谷さん、お疲れさまです」
優「偶然ですねー!お食事ですか?」
謙士「はい」
   優、中を覗いて会釈して、
優「いいですね〜楽しそう!」
   謙士、固まる天音の背中に手を触れ、
謙士「天音?」
優「天音ちゃん?やだ、久しぶり〜」
謙士「…知り合い?」
   天音、精一杯の笑顔で、
天音「…久しぶりだね」
優「天音ちゃん、元気にしてるかなってみんな気にしてたよ〜。また顔見せてよ、今度集まるの。あの時の劇団メンバーで」
   天音、体が強張る。
天音「わかった、大丈夫。またね」
優「うん。じゃあね。謙士さんも、また〜」
   優、自分のいた個室に戻っていく。
   天音、立ち上がり、
天音「ご、ごめんなさい、足が痺れてしまって!失礼しました!」
謙士「天音…」
   バタバタと出ていく天音。
志保「…今の誰?」
謙士「刈谷優さんっていう、舞台役者さん。前に一度収録で一緒になったんだけど…」
志保「ふうん…」

   × × ×
   天音、休憩室に入り、ドアを閉める。
   ドアに背中をつけ、息を整える。
   手が震える。


◯回想(大学・学食)
   パソコンを見つめる優。
   その向かいに座る天音。
優「うん、やっぱり天音ちゃんの書くお話は面白いよ!」
天音「(安堵して)ありがとう…」
優「これ、舞台でやらせてもらってもいい?」
天音「よろしくお願いします」
優「ありがとう!さっそくなんだけど、ここさ、もうちょっと展開増やせないかな」
天音「あ、うん、わかった」
優「今度劇団のメンバーにも会ってね。稽古も見に来てよ」
天音「うん!」


◯天音の家(夜)
   疲れた顔をした天音、パソコンに向かっている。
   眠い目を擦る。


◯稽古場
   男女10名ほどが自由に過ごしている。
   天音、台本を抱えながら、端の立っている。
   優、入り口から入って来るが、天音の方を見ない。
男「なあ、この台本、ほんとにやんのか?」
   天音、固まる。
男「やる気が起きねえんだよなー」
優「じゃあもっと面白い本見つけてきてよ。私にばっかりやらせないで」
男「優が持ってきた本だろ、うまく書き直させろよ」
優「あーあ、小説はもっと面白かったんだけどなー。ねえ天音ちゃん」
   天音、びくっと肩を震わす。
優「天音ちゃんの本気ってこれ?」
天音「…か、書き直すから、どこがいけないか教えて」
男「(舌打ちして)分かれよ」
優「天音ちゃん、私たち本気でやってるの。遊び半分でやられたら困るわ」
   クスクス笑う声。
天音「…じゃあ、どういう話がやりたいかとか、希望を聞かせてもらえないですか…」
男「はあ?」
天音「劇団のテーマとか、皆さんの得意なジャンルとか…」
男「何こいつ」
優「ごめんって。ちゃんと書いてもらうから怒んないで」
   天音、台本をぎゅっと握る。


◯大学
   天音、ふらふらしながら歩いている。
   名波、走ってきて、
名波「天音!大丈夫?」
天音「うん、大丈夫…」
名波「刈谷の手伝い、もうやめたら?なんか劇団のメンバー、みんな問題があって演劇サークル、クビになった人たちらしいよ?」
天音「ああ…そうなんだ」
名波「やめときなよ。脚本だけじゃなくて雑務もやらされてるんだろ?」
天音「大丈夫、大丈夫」
名波「天音…!」


◯稽古場
   天音、愕然としている。
   舞台稽古をしているメンバー。
   優、天音と目が合い、稽古を中断する。
優「天音ちゃん、もうここには来なくて大丈夫だよ」
天音「…え?」
優「もう天音ちゃんの役目終わったから」
   言い放って踵を返す優。
天音「…待って。今やってたの、私の小説のシーンだよね」
   優、立ち止まる。
天音「…小説は、賞に応募するために書いたの。同じものが世に出たら、評価されない。私書き直したよね、台本、何回も」
優「これがよかったの」
天音「…え」
優「私、天音ちゃんじゃなくて、これが欲しかったの」
   優、舞台の方に歩いていく。
天音「ちょっと待って…刈谷さん…!」
   劇団のメンバー数名が天音の行く手を阻む。
女「もういいでしょ、出てってよ」
男「俺ら台本が出来上がるのずっと待ってたんだぞ。出来上がりが遅いから練習期間全然ないまま本番だよ」
男「自分がうまく書けなかったこと、刈谷に当たるなよ」
天音「…っ待ってください。私ずっと皆さんに途中経過も報告してましたよね。台本も皆さんの分、毎回印刷して…」
   天音、泣けてくる。
女「ここで泣くの…?」
男「泣けばいいと思ってんのかよ」
天音「…っちが」
女「もういいって。泣いてる奴の相手なんか時間の無駄」
天音「…返してください。私の作品…返して…」
   泣いて訴える天音。
   声は届かず、一人崩れる。
   (回想終わり)


◯天音の家(夜)
   天音、帰ってきたままの姿で、ベッドに横たわっている。
   つけっぱなしのテレビから、アニメ『真夜中ロマンティック』が流れ出す。
   テレビから、謙士の声(レン役)が聞こえる。
   頬を涙が伝う。
   むくりと起き上がり、家を飛び出す。


◯コンビニ前(夜)
   天音、全速力で走って来て、コンビニ前で止まる。
   コンビニの前に、謙士(プラベモードの前髪かき上げ+眼鏡なし)が立っている。
   目が合い、歩み寄る二人。
   天音、涙が頬を伝う。
   謙士、天音の腕を引っ張り、抱き締める。
天音「…っごめんなさ…」
謙士「…何謝り?それ」
天音「…待っててくれたんですか」
謙士「うん。なんか、来てくれる気がしたから」
天音「うう…」
謙士「…何泣き?これ」
天音「怖い夢を見た…泣き、です」
謙士「(優しく笑って)ほんならしょうがないわ」
天音「すみません…」
謙士「ほんま不思議な関係やなあ俺ら…」
天音「…はい」
謙士「俺はもう結構好きなんやけど、天音のこと」
天音「…!」
謙士「それ今言ったら余計混乱させそうやから、やめとくな」
天音「…今、ほとんど言いましたよ…?」
謙士「全然、言い足りんよ」
   天音、真っ赤な頬と涙でぐちゃぐちゃ。
謙士「今顔見ていい?」
天音「絶対無理…!」
   二人、笑い合う。
   謙士、また強く抱き締める。
   天音、ぎゅっと強く抱き締め返す。




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