真夏の駐車場で僕は車から出られなくなった──施工管理1年目の時の話
これは、今では完全に笑い話です。
施工管理として現場に出始めてから1年ほど経った頃のこと。
自分の未熟さと、会社の忙しさと、いろんなタイミングが重なって、人生で初めて「車から出られない」という不思議な体験をしました。
もちろん、ドアが壊れていたとか、事故に遭ったとかではありません。
完全に、メンタルブレイクをした話です。
◽️担当した現場と、会社の状況
当時、私はとある建設会社で施工管理をしていました。
その時担当していたのは、倉庫と事務所が一体になったような建物で、私自身が常駐で工事管理をする立場でした。
会社はゼネコンの一次請として動いていて、基本的に自社の職人さんを抱えていたので、いつも同じ職人さんが来てくれていました。現場を円滑に進めるうえではかなり助かっていました。
ただその頃は、会社が急激に成長していたこともあって、どの現場も人手不足。
施工管理者も職人さんも足りておらず、社内では常に「どの現場を優先するか」という取合いが起きていました。
◽️職人さんが来ない、現場が進まない
ある日から、外壁工事の職人さんが2人しか来なくなりました。
本来であれば10人いてもおかしくないタイミングでしたが、他の現場の方が炎上していたため、そちらに引き抜かれていたのです。
私の現場はまだ工程に遅れが出ていなかったため、「後回しにしても大丈夫」と判断されたのでしょう。
次第に現場の進捗は厳しくなっていきました。
元請けの所長からは毎日のように「今日も人少ないけど大丈夫?」と聞かれました。
私はそのたびに適当に誤魔化してその場をやり過ごしてました。
上司にはもちろん相談していましたが、会社全体が逼迫しており、状況は変わりません。
そして、所長からの対応も徐々に厳しくなり、ついに怒鳴り散らされるようになり、しまいには担当者を変えてくれと言われてしまうようになりました。
◽️夜、車から出られなくなった
会社では地方案件が多かったため、私はマンスリーアパートを借りて、そこから車で現場に通っていました。
ある日、仕事を終えてアパートの駐車場に着いたものの、車から降りられなくなりました。
正確に言うと、「動く気力がなかった、動くのが面倒くさかった」という方が近いです。
アパートの玄関までは、20メートルほどの距離です。
でも、完全メンタルブレイク中の私は、動く気力が全く出てきませんでした。
エンジンもつけたまま冷房を効かせ、シートを倒して、ラジオを流しているうちに、そのまま眠ってしまいました。
そして朝になり、そのまま現場に向かう。
これを何日か繰り返していました。
◽️ラジオの心地よさ、屋根の上で寝る日々
完全メンタルブレイクしてしまうと、本当に簡単なことすらできなくなるものです。
20メートル歩いて風呂に入る、それすら面倒になっていました。かと言って現場には呪われたかのように遅刻もせず向かっていました。
夜、車の中で流れていたラジオ番組のパーソナリティの声や、芸人のたわいもない話が、なぜかとても心地よく、現実逃避のような時間になっていました。
真夏だったので、風呂にも入らず、かなり臭かったと思います。
それでも夜は車の中、昼は現場。
昼休みに事務所に戻れなくなって、灼熱の板金屋根の上で山積みになったプラスターボードにもたれながら寝ていたこともありました。
◽️それでも最後は職人さんに助けられた
他の現場が落ち着いたタイミングで、うちの現場にもようやく人手が戻ってきました。
結果的には巻き返すことができましたが、私ひとりでは絶対に無理でした。
職人さんたちにはだいぶメンタルを支えてもらいました。
職人さんたちは状況を理解してくれていて、日々しんどい中でも、面白おかしい雑談を交えて励ましてくれたり、僕が朝礼で元請け所長に怒鳴られるとそれすらも笑い話にしてくれました。完全にメンタルブレイクしながらもなんとか現場に来れたのは間違いなく職人さんたちのおかげでした。
◽️最後に
私は、建物を建てるうえで「誰が一番偉いか」なんて言うつもりは全くありません。
発注者が偉いとか、設計者が偉いとか、現場で汗を流している人が偉いとか、そういったヒエラルキーの話はどうでもいいし、全員偉いようで、全員そんなに偉くありません。
ただ、必ず理解しておかなければいけないのは、トラブルが起きたとき、最終的に頼ることになるのは現場で手を動かしている人たちだということです。
工程が遅れた、手直しが必要になった、納まりが合わない──どんな状況でも、時間がなくて残業をしてもらってでも、最終的に動いてもらわなければならないのです。
だからこそ、本当に困ったときに助けてくれる関係性が築けているかどうかは、ものすごく重要だと当時痛感しました。(※もちろん職人さんに限らずですが)
その後、私は別の部署に異動しましたが、中途で入ってきた40代の施工管理者が、職人さんや業者の方に常に高圧的な態度を取り続けた結果、次第に誰からも相手にされなくなっていきました。
本人は「現場を仕切っているのは自分だ」という意識だったのかもしれませんが、ミスをしたときにお願いする相手は結局、職人さんや業者さんです。
関係性が壊れていては、いざというときに助けてもらえません。
◽️おわりに
今回は施工管理としてしんどい時期もあったなあと振り返ってみました。
あの時のメンタルブレイクはかなりしんどかったなあと思って振り返ってみましたが、今ではただの笑い話になってます。
あのとき、職人さんたちに助けられたように、現場には頼れる人がいます。
無理せず、できることをやりながら、少しずつ進んでいけばいいと思います。(※でも工程はまもろう。)
そして、職人さんに限らず、周りの人たちと良好な関係を築いておきましょう。
それだけで、現場の空気も、自分の気持ちもだいぶ変わります。
以上
