2018年、高力ボルトが市場を混乱させたときの(私の)話
noteを始めてから、昔のことを振り返る機会が増えてきました。本当にいい機会です。
今回はその中で、今でも印象に残っている「高力ボルトが全然手に入らなかった時期」の話を書こうと思います。
鉄骨造ばかり建てていたあの頃
私は昔、鉄骨造の建物ばかりを扱っていました。
というか、そういう会社だったので、自然と鉄骨造ばかりやってました。
新人時代に3年弱の施工管理、その後は4年ほど生産管理を担当し、その後建設系のスタートアップに転職しました。
生産管理の仕事は守備範囲が広く、プロジェクトの原価算出や施工図の作図やチェック、材料の発注や業者の手配、請求処理、そして製作の進行・品質管理など、プロジェクト全体の利益に直結する難しい役割でした。
あの「高力ボルト危機」
そんな生産管理をしていたとき、最も苦しんだのが「高力ボルトが異常に不足した時期」です。
当時、いつもなら余裕を持って2ヶ月前に発注していた高力ボルトの納期が、気づけば納期が「半年」「8ヶ月」とどんどん延びていきました。
原因は調べれば色々出てきますが、諸説あるようで何が本当だったのかは正直よくわかりません。複合的だったのかもしれません。
商社経由で発注していましたが、担当者もお手上げ状態。
あるとき言われた「今、高力ボルトを集められるのは神だけです」という言葉が今でも忘れられません。
設計を巻き込んだサバイバル
営業担当者もてんやわんや、新しい引合いも「高力ボルトが・・・」とボルトに工程を握られてお客さんとの調整が大変だったと思います。
しかし、既に進行中のプロジェクトを止めるわけにはいきません。
構造設計者と相談しながら、できる限り対応策を練りました。
たとえば、ボルトの首下が長いものは希少性が上がるので納まりを見直したり、径が大きいほど確保が難しくなるので、調達しやすい径にして本数を調整したり。
プロジェクトに関わる全ての人が、ボルトにぶんぶん振り回されていました。
買い占めによる需給ひっ迫の悪化
当然、このレベルになると“買い占め”も起きたようです。
直接確認したわけではないので真偽は定かではありませんが、色んな人の話を聞いてた限りまあ間違いなく起きてたでしょう。
それによって、需給のひっ迫はさらに深刻化しました。
最近でいえばお米、少し前だとコロナ初期のマスクやトイレットペーパー、3.11の時のガソリン、買い占めの影響は凄まじく、市場の混乱に拍車がかかり、私たちも自社の他の現場への影響を最小限に留めるために、予備数を必要最低限に見直して発注するなど、あんなに高力ボルトの数を数えた日々はなかったと思います。
当然予備数が少なくなるとリスクも増えます。万が一現場で数本無くしたら、締め付けに失敗したら、予備は限られているので施工管理者や鉄骨鳶さんも慎重になったでしょう。当然高力ボルトの孔には基本的にそのサイズの高力ボルトしか入りませんから。代わりはありません。
複数抱えるプロジェクトごとにボルトの調達状況を確認し、調達できていない現場は業者と連携しながらあらゆるルートでの確保を試みました。
記憶は曖昧ですが、確かニュースでも取り上げられていたような気がします。
当然かもしれませんが、現場が必死に動いている時期と報道されるタイミングには大きなズレがあるんだなとその時実感しました。
「今さらニュースになるのかよ、もう何ヶ月も前から地獄だったんだけどな・・・」って思ったのを覚えています。
確かこの騒動は1年半くらい続いた気がします。
気づけばほとぼりも冷め、いつの間にか通常納期に戻っていました。
今だから思うこと
ここ数年、「資材の高騰」という言葉を毎年のように耳にします。
あれだけ多くの資材を使って建物を建てているので、だいたい常に何かが足りなかったり、何かが高騰していたりするものですが、
本当に困っちゃいますよね。
建物を建てるというのは、本当に大変なことだなと当時を振り返って改めて思います。
大きな建物であればあるほど、あらゆる資材を使用しておりその量も多い。
何かの資材が足りなくなった時の調達難易度は当然上がるでしょう。
小さな建物なら、そうしたひとつの影響が全体にクリティカルに響き、調整する間もなく致命的になってしまう。
それでも、そんな状況をどうにか乗り越えてしまう建設業界の人たちは、やっぱりすごいと思います。
(もちろん、なんとかなっていないものもあるのかもしれませんが。)
当時は「ダメだ、詰んだかもしれない」と思った瞬間もありましたが、社内の人たちと協力しながら試行錯誤し、どうにか乗り切っていきました。
「なんやかんやで、ちゃんと解決策は用意されていたんだな」と今振り返って思います。
今は建てる側ではなくなったけれど
いま私は、そうした新しい建物を建てる仕事からは離れてしまいました。
でもあの時の経験は、今でも自分の中に残っています。
労働集約型のこの業界で、たくさんの人が胃をキリキリさせながら、どうにかこうにか建物を建てていく。
” 建物を建てる ”というのは本当に大変だ!
最前線で頑張っている人たち!
最近だと万博関係者の方たち!(※万博行きました、超楽しかったです。)
本当にありがとうごさいます!
以上
▼関連リンク
