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AIで30万文字書いた、その記録をここに残します


4月28日から、『抜け殻あるいはレキシコン』の投稿を始めました。火曜と金曜の更新で、すでに3話まで公開しています。

このnoteの実践記録は、昨年末から止まっていました。言い訳をさせてください。

2025年12月から2026年3月まで、104日間『勝者の法』をほぼ毎日投稿し続けていました。朝は早めに出社して50分、昼休みに50分、帰宅してから4時間。その時間をすべて小説に使っていたので、noteに記事を書く余裕がなかったのです。時間の問題だけではなく、正直に言うと、記事を書くことへの腰の重さもあったと思います。

3月に『勝者の法』が完結してからは、2作目の執筆に集中しました。前作の反省から、今度は書き溜めてから投稿を始めようと決めていたからです。4月の1ヶ月間は『抜け殻あるいはレキシコン』の執筆に充て、ある程度書き溜めてから4月27日に完結報告、翌28日に新作の投稿を開始しました。

新作の連載が動き出したこのタイミングで、実践記録の発信も再開します。『勝者の法』を書いた4ヶ月間で積み上げてきたツールやワークフローを、順番に話していきます。


勝者の法で、何をやっていたのか

使っていたツールは主に3つです。

メインの執筆環境はCursorでした。AIと会話しながら原稿を書き、設定ファイルや過去のやり取りのログも同じプロジェクト内で管理していました。Google AI Studioは主に校正担当として使っていました。Cursorがトークン切れを起こしたときの代打でもありました。Antigravityは途中から試験的に導入した執筆環境です。

ツールと同じくらい重要だったのが、フォルダ構成です。チャットが続いている間はAIも文脈を覚えていますが、セッションが変わると記憶はリセットされます。さらに複数のAIツールを使い分けていたので、設定や進捗の引継ぎが大きな課題でした。CursorやClaude Desktopのようにファイルシステムと連携できるツールならファイルを直接読み込ませられますが、Google AI Studioのようなツールでは進捗状況をその都度テキストで貼り付けて読み込んでもらう必要があります。だから「外部記憶」として、キャラクターの状態・時系列・解決済みの謎・未解決の伏線を専用フォルダで管理しました。これがなければ、100話の整合性は保てなかったと思います。

AIの「手癖」との戦いも、大きなテーマでした。「エルフ」と書けば勝手に杖を持たせてくる。設定ファイルに釘を刺す記述を重ねながら、少しずつ自分の書きたい方向に引き戻していく作業の連続でした。この話は過去の記事『「エルフ」と書けば勝手に「杖」が出る。AIの「手癖」を防ぐために、私が設定を書き換え続ける理由。』に詳しく書いています。

毎日投稿を続けられたのは、書き溜めがあったからです。最初は余裕を持って先を書いていました。それがやがて底をつき、自転車操業になりました。プロットを考え、草稿を書き、推敲して、1話分を完成させる。その繰り返しを、朝・昼・夜の隙間時間でこなしていました。


やってみてわかったこと

正直に言うと、最初の動機は不純でした。

「AIに書かせれば、楽ができるんじゃないか」

実際にやってみたら、まったく逆でした。一人で書くより体力がいる。でも気づいたら、毎晩4時間以上キーボードを叩いていました。

AIとのやり取りが楽しかったのです。

やり方はこうです。まず私がチャットに書く。「次の街はこんな場所で、こんな人物を登場させたい」「このシーンの続きはこう展開させたい」。するとAIが「では、こんなトラブルが起きるというのはどうでしょう」と提案してくる。その案に対して私が「それよりこっちの方がいい」と返す。またAIが応える。その掛け合いを繰り返しながら、ストーリーを一緒に作っていきました。

主導権は常に自分にありました。AIは私が決めた方向に対して、選択肢を出してくる存在です。その選択肢を取るか捨てるか、または別の選択肢を考えるかを判断するのは自分。気がついたら、その積み重ねで100話になっていました。

でも、書きながらずっと引っかかっていることがありました。

AIに助けてもらって書いた文章は、本当に自分が書いたと言えるのか。

一文字一文字、自分だけで書いている作家の方々とは、やっていることが違う。そのことは、今でも頭のどこかにあります。卑下していると言ってもいいかもしれません。

ただ、こうも思っています。私が勤めている会社でも、AIはすでにあたりまえに使われています。メールのたたき台、上長への説明スライドの構成、Excelのマクロ、コーディング。誰も「それは自分でやった仕事じゃない」とは言いません。ライターや小説の執筆に使っても、おかしいことではないはずです。

それでも後ろめたさが完全に消えないのは、小説というものへの敬意があるからだと思っています。だからこそ、面白いものを書きたい。AIと書いたもので、ちゃんと人の心を動かせるのか。その問いへの答えを、自分で確かめたかったのです。

書き終えてから気づきました。私はずっと、言葉と意味の話を書いていました。悪徳弁護士が言葉だけで異世界をはねのける話。テーマを決めてから書き始めたわけではありません。後ろめたさを抱えながら書き続けていたら、気がついたらそこにいたのです。


これから何を発信するか

これまで積み上げてきたものを、順番に公開していきます。

次回以降はこういう順番で書いていく予定です。

  • 第1回:なぜ書き始めたのか——AIが来る前から書きたかった話

  • 第2回:ツール選びと環境構築——なぜCursorを選び、どう使い分けたか

  • 第3回:フォルダ構成と外部記憶——長編の整合性を保つ仕組み

  • 第4回:設定ファイルの育て方——確率の重力に抗うための「釘の刺し方」

  • 第5回:壁打ちと推敲のワークフロー——実際のやり取りを見せながら

  • 第6回:連載を続けるための仕組み——自転車操業になってからどう乗り切ったか

すべて無料で公開します。ただし、実際に使えるファイル類は別途Boothで配布する予定です。最初に公開予定のものは、小説プロジェクトのフォルダ構成を一瞬で自動生成するスクリプトです。プロジェクト名を指定してコマンドを一行実行するだけで、執筆に必要なフォルダとファイルがすべて揃った状態になります。CursorのターミナルからもPowerShellからも使えます。詳しくは第3回の記事で紹介します。


そして、次の挑戦へ

『勝者の法』が「言葉で世界を切り開く話」だったとすれば、今度は「言葉の意味を失っていく話」を書いています。

『抜け殻あるいはレキシコン』。舞台は現代です。主人公の男は、ある日から言葉の意味がわからなくなっていきます。文字は読める、声も聞こえる。でも、言葉が意味を持って自分の中に届かなくなっていく。そういう話です。使うツールはClaudeに絞りました。

前作ではエルフに杖を持たせないようにすることが戦いでした。でも今作で戦っているのは、意味が少しずつ壊れていく人間の感覚を、AIが陳腐にしないように書くことです。まったく別の難しさがあります。

AIはこのテーマを書けるのか。その問いに、評論ではなく自分の作品で答えるために書いています。

その記録も、このマガジンに残していきます。

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