血糖値の考え方〈知っておきたい〉|食事 - 8
血糖値というと「上げてはいけないもの」というイメージを持っている人が多いですが、それは正確ではありません。
食後に眠くなる
甘いものがやめられない
集中力が続かない
このような状態は、血糖値が「上がっていること」が問題ではなく、「乱高下していること(血糖値スパイク)」が原因です。
血糖値は本来、食事によって上がり、時間とともに下がるものです。
この上下そのものは正常な反応です。
問題になるのは、急激に上がって急激に下がる状態です。
さらに血糖値が低いことで起こる「糖新生」という現象も見逃せません。
この記事では、血糖値の基本から乱高下が起きる理由、そして日常で安定させるための考え方までを整理します。
✅ この記事でわかること
血糖値とは何か・正常な上下の範囲
血糖値が乱高下するとどうなるか
耐糖能とインスリン抵抗性の仕組み
糖新生の仕組み
血糖値を安定させる習慣
👩🏫 血糖値の全体像
血糖値の話は細かい知識に入りがちですが、最初に見るべきなのは「全体の流れ」です。

この画像は、血糖値が上がる・下がる・回復するまでの一連の動きをまとめたものです。
身体の中では常に、以下の3つの流れが起きています。
食後:血糖値が上がる → インスリンで下げる
空腹時:血糖値が下がる → グルカゴンで上げる
エネルギー枯渇時:それでも足りない → 糖新生で補う
この3つが安定して働いているとき、血糖値はゆるやかに上下します。
問題が起きるのは、この流れが崩れたときです。
急上昇 → 急降下(血糖値スパイク)
慢性的な低下 → 糖新生に依存
この2つのパターンが、
・食後2~4時間後頃の急激な眠気(食べた直後1時間頃の眠気とは違います)
・甘いもの依存
・集中力低下
などといった不調につながります。
そして、頻度の高い血糖値スパイクは、血管を傷つけて動脈硬化を進めることで、脳梗塞や心筋梗塞、糖尿病の悪化リスクを高めます。

それぞれの仕組みは以下で詳しく解説します。
👩🏫 血糖値の仕組みと乱れる原因
血糖値とは血液中のブドウ糖(グルコース)の濃度のことです。
食事から摂った炭水化物は消化されてブドウ糖になり、血液に入ります。この血液中のブドウ糖が脳・赤血球・筋肉などのエネルギー源として使われます。
血糖値は常に一定ではなく、食事のたびに上昇し、時間とともに下降します。これは身体が正常に機能しているサインです。
空腹時の正常な血糖値は70〜110mg/dL程度、食後2時間で140mg/dL未満が目安とされています。
1. 血糖値が安定する仕組み(インスリン)
食事によって血糖値が上がると、膵臓からインスリンというホルモンが分泌されます。
インスリンは、血液中のブドウ糖を筋肉や肝臓などの細胞に取り込ませることで、血糖値を下げる働きを持っています。
この流れが正常に機能していると、
食後に血糖値が上がる
インスリンが分泌される
血糖値がゆるやかに下がる
という安定したサイクルになります。
2. 血糖値スパイク(乱高下)が起きる流れ
問題になるのは、このサイクルが崩れたときです。
急激に血糖値が上昇
インスリンが大量分泌
血糖値が急降下
血糖値が下がりすぎると、身体はそれを危険と判断し、血糖値を戻すための反応が起こります。
具体的には、グルカゴンというホルモンが分泌され、肝臓に蓄えられている糖(グリコーゲン)を分解したり、新たに糖を作り出す(糖新生)ことで血糖値を引き上げます。
この「急上昇→急降下→強制的な回復」の振れ幅が大きい状態が血糖値スパイクです。
この状態では、身体は常にエネルギー供給が安定せず、不調が出やすくなります。
3. 血糖値が乱れると起きること
血糖値スパイクが起きると、以下のような症状が出やすくなります。
食後の強い眠気、だるさ
強い空腹感、甘いものへの衝動
集中力、思考力の低下
慢性的な疲労感
さらに、余ったブドウ糖は、エネルギーとして使われなければ体内で脂肪として蓄えられます。
また、血糖値が高い状態が続くと糖化(AGE)が進み、老化・動脈硬化・肌トラブルの原因になります。
4. 耐糖能とインスリン抵抗性
ここで重要になるのが「耐糖能」です。
耐糖能とは、摂取した糖質をエネルギーとして処理する能力のことです。
耐糖能が高い状態では
→ 血糖値はゆるやかに上がり、ゆるやかに下がる耐糖能が低い状態では
→ 少量の糖質でも急上昇・急降下しやすくなる
この耐糖能が低下した状態が続くと、インスリンの効きが悪くなります。
これを「インスリン抵抗性」といいます。
インスリン抵抗性が高まると、血糖値が下がりにくくなり、膵臓はさらに多くのインスリンを出し続ける必要があります。
この状態が慢性化したものが、糖尿病予備軍です。
👩🏫 糖新生(低血糖時の回復反応)
血糖値スパイクが起こった後など、血糖値が下がりすぎると、身体はそれを危険な状態と判断します。
このときに働くのが「糖新生」です。
糖新生とは、肝臓を中心にアミノ酸や乳酸などから新たにブドウ糖を作り出し、血糖値を引き上げる仕組みです。あわせてグルカゴンが分泌され、血糖値を回復させる方向に働きます。
たとえば、糖質制限をしていると、一時的に調子がいい、集中できると感じることがあります。
これは糖質をうまく使えている状態ではなく、糖新生によって血糖値を維持し、交感神経が優位になっている状態です。
安定したエネルギー供給ではなく、非常時のブーストに近い状態です。
この状態が長期間続くと、耐糖能がさらに低下してエネルギー供給がより不安定になり、疲労感・回復力の低下・代謝の悪化へとつながっていきます。
1. 糖新生が起きる流れ
糖新生はエネルギー不足を補うための回復反応です。
血糖値が低下
身体が危険と判断
グルカゴン分泌
肝臓で糖新生が起きる
血糖値を引き上げる
2. 交感神経との関係
糖新生が起きるとき、身体は交感神経が優位な状態になります。
糖質不足は身体にとって深刻であるため、緊急時に対応するモードに入ります。
そのため以下のような反応が出やすくなります。
一時的に集中力が上がる
頭が冴える感覚がある
眠りが浅くなる、寝つきが悪くなる
イライラや不安感が出やすくなる
3. 糖新生に頼る状態の問題
糖新生は本来必要なときに働く仕組みですが、これに頼る状態が続くと身体への負担が大きくなります。
エネルギー供給が不安定になる
疲労が蓄積しやすくなる
回復力が低下する
食事からエネルギーを使う力(耐糖能)が下がる
4. 血糖値スパイクとの関係
血糖値の乱れには大きく2つのパターンがあります。
血糖値スパイク
食後の急上昇と急降下糖新生
低下しすぎた血糖値を無理やり引き上げる回復反応
どちらも共通しているのは、エネルギー供給が安定していない状態であることです。
安定した状態とは、血糖値がゆるやかに上がり、ゆるやかに下がる状態です。
どちらのパターンも、3食定期的に食べて質のいい糖質を補給し続けることで防ぎやすくなります。
✅ 糖質の「質」の違い

ここで糖質の質について整理しておくと理解が一気に進みます。
● 質のいい糖質
米、芋、穀物など(多糖類)
→ 吸収がゆるやかでエネルギーが持続する
● 精製糖質
砂糖、ジュースなど(単糖・二糖)
→ 吸収が速く血糖値が急変しやすい
もちろん、精製糖質が絶対悪ではありませんが、「使う場面」が重要です。
運動中や風邪の時など、
・すぐエネルギーが必要なとき
・消化力が弱まってるとき
・腸内環境が悪化して栄養を吸収しにくいとき
にはかなり有効です。
たとえば、高強度の運動時は糖質が30〜60g/h必要と言われています。
そんな時に、(いくら消化がいい方の食べ物とはいえ)おにぎりやバナナなどは食べてられませんね。
そういう時にスポーツドリンクやゼリードリンクで補給は適しています。
また、風邪引いた時はポカリを飲む家庭も多いはずです。水分は適度な糖質がある方が吸収されやすく、ポカリで失われた水分やミネラルを手軽に補給できます。
なお、体力が戻ってきたら、やはりおかゆや野菜スープなどの水分の多い炭水化物が適しています。
🚨 血糖値が乱れる食習慣
血糖値の問題は、単に糖質の量ではなく「食べ方」で起きています。
現代人に多いのは以下のパターンです。
主食を減らす(質のいい糖質不足)
空腹をお菓子やジュースで補う(精製糖質(砂糖)過剰)
農林水産省のデータを見ても、日本人の炭水化物摂取量はここ数十年で下がり続けており、代わりに脂質の摂取量が上がっています。

メインの食事(主食・野菜・主菜)を減らすものの、エネルギー不足による空腹をお菓子・ジュース・スナック菓子などの精製糖質と脂質の塊で補おうとするパターンが多いです。
この食生活によって、2つの問題が同時に起きます。
1. 質のいい糖質不足による耐糖能の低下
主食や野菜からの糖質が不足すると、血糖値を安定させながら糖をエネルギーとして使う機会が減ります。
一方で、お菓子やジュースなどの精製糖質は急激に吸収されるため、血糖値の乱高下を引き起こしやすくなります。
このような状態が続くと、インスリンの効きが不安定になり、糖質を「安定して処理する能力(耐糖能)」が低下していきます。
その結果、少量の糖質でも血糖値が急上昇しやすい状態になります。
2. 精製糖質(砂糖)による血糖値スパイク
お菓子やジュースなどの精製糖質は、消化がほぼ不要で一気に吸収されます。
エネルギー不足時(低血糖時)や耐糖能が低い状態でこれを摂ると、体内で以下のループが起こります。
血糖値急上昇
インスリン過剰分泌
急降下
また甘いもの(精製糖質)を欲する
これのループから脱するためには、精製糖質の代わりに、質のいい糖質(おにぎりや果物)に置き換えること最短の近道になります。
🛑 糖尿病予備軍の位置づけ
ここまでの状態が積み重なると、糖尿病予備軍になります。
初期段階では自覚症状がほぼなく、健診で初めて指摘されることが多いです。
目安は以下です。
空腹時血糖値:110〜125mg/dL
HbA1c:6.0〜6.4%
さらに進行すると糖尿病と診断されます。
重要なのは、糖尿病予備軍の段階では食習慣の改善によって回復できる可能性が高いという点です。
主食をきちんと食べて耐糖能を維持しながら、精製糖質の摂りすぎを避けることが、糖尿病への移行を防ぐ最も基本的な対策です。
ちなみに、糖尿病患者の糖質制限でもバランスよく糖質を摂ります。むしろ病院食で主食(ご飯・パン)が出てこないのはあまり想像できませんよね。血糖値を気にして糖質断ちしたところで、病気になったら栄養バランスよく食べることになります。
🔥 【実践】血糖値を安定させる習慣
以下の3点を意識することで、糖質はスムーズに処理できるようになり、健康的な身体になります。
特に、パフォーマンス向上を感じたり太りやすさから解放されていきます。
1. 3食定期的に食べる
食間が6時間以上空くと体内のエネルギーが枯渇した状態で食事を摂ることになり、血糖値が急上昇しやすくなります。
3食を定期的に食べることで血糖値の乱高下を防ぎ、耐糖能を維持しやすくなります。
以下が目安です。
朝食は起床後30分〜1時間以内
昼食は朝食から3〜5時間後
夕食は就寝3〜4時間前
🔽食事のタイミングについてはこちら
2. 食物繊維と一緒に糖質を摂る
食物繊維には糖質の吸収スピードを遅らせる働きがあり、食後の血糖値の急上昇を防ぎます。
定食スタイルの食事が血糖値の安定に有効なのはこのためです。
白米単体よりも白米+野菜小鉢、パン単体よりもパン+サラダのような組み合わせを意識してください。
🔽食物繊維の具体的な取り方についてはこちら
3. 軽い運動を取り入れる
筋肉は血液中のブドウ糖を取り込む大きな器官です。
運動によって筋肉量が増えると、血液中の糖質を処理できる量が増え、耐糖能が高まります。
激しい運動でなくてよく、食後の軽いウォーキングでも効果があります。
🔽日常の運動の基準はこちらから
✍️ Before / After
Before:血糖値を上げないようにしている状態
糖質を極力避けている
食事を抜いてエネルギー不足になっている
食後に強い眠気・甘いものへの衝動が起きやすい
耐糖能が低下して少量の糖質でも血糖値が乱高下する
→エネルギー不足によるパフォーマンス低下や、脂肪が蓄積しやすい状態になっている
After:血糖値を一定範囲で安定させている状態
3食定期的に食べて食間を空けすぎない
食物繊維と一緒に糖質を摂って吸収をゆるやかにしている
血糖値が緩やかに上下して食後の眠気・衝動が起きにくい
耐糖能が維持されて糖質を効率よくエネルギーに変えられる
→集中力・パフォーマンスが安定しており、エネルギーを適切に使うことができる
⚠️ よくある誤解
1. 血糖値は上げてはいけない
血糖値は食事をすれば必ず上がります。
上がること自体は正常な反応であり、問題は血糖値スパイク(乱高下)です。
血糖値を上げないことを目的に糖質を避けると、エネルギー不足・耐糖能の低下・代謝の悪化という悪循環に入りやすくなります。
2. 糖質を抜けば血糖値が安定する
糖質を抜くと一時的に食後血糖値の上昇は抑えられますが、慢性的な糖質不足は耐糖能を低下させます。
耐糖能が低下すると、少量の糖質を摂っただけで血糖値が急上昇・急降下するようになります。糖質を適切に摂り続けることで耐糖能を維持することが、長期的な血糖値の安定につながります。
3. 血糖値は糖尿病の人だけが気にするもの
血糖値の乱高下は糖尿病の診断がなくても日常的に起きています。
食後の強い眠気・甘いものへの衝動・集中力の低下・慢性的な疲労感などは血糖値スパイクのサインである可能性があります。
健康や美容、パフォーマンス向上を目的とする人こそ、血糖値の安定を意識することが重要です。
📝 まとめ
血糖値は「上げてはいけないもの」ではありません。
食事をすれば上がり、時間とともに下がる。この流れは正常です。
問題は、急激に上がって急激に下がる「乱高下」です。
この状態が続くと、眠気・空腹の暴走・集中力低下といった不調が起きやすくなり、結果として食事のコントロールも難しくなります。
血糖値を安定させるために必要なのは、特別な制限ではありません。
3食を定期的に食べる
糖質を極端に避けない
食物繊維と一緒に摂る
軽く体を動かす
この基本を整えるだけで、血糖値は自然と安定していきます。
今後は血糖値対策として、糖質をうまく使える状態を作っていきましょう!
