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未明の、猫のめざまし。

きゅうぅーっ。

切ない声が響く。

すぐ近くではない。
ほんの少し離れた距離から聞こえるのは、
耳慣れた、愛しい声。

だけど、まだ眠い。

今日はもう既に、
ご飯の催促で二度も起きているのだ。

うちの子は、小分けで食べたい主義。
どうせあとからお腹が空くのだ、
これくらい食べておいてほしい、と思って差し出しても、
半分食べてくれればいい方。

寒いし眠たい。
もう少しだけ寝させてほしい。

きゅるっ。

だけど、猫は待ったなし。

きゅるっ。
きゅるるるるるーうっ。

切ない声に根負けして、
布団の中でもぞもぞ身じろぎながら猫を見れば、
寝室の敷居に前足をかけた状態でしゃがみ込み、
じっとこちらを見つめている。

暗い中、猫の目だけが丸く光る。
くりくりと浮き上がる二つの目が、愛おしい。

しょうがないなあ。
だって、猫には叶わない。

よし、と決意して、もぞりと起き上がる。

ちゃんちゃんこを羽織って、
猫のもとへ、ぽてぽて歩く。

眠い。
でも、可愛い。

猫の前に座り込み、
「いい子、いい子」と頭を撫でる。
艶やかな毛並みが気持ちいい。

なでなで。
なでなで。

猫はそこから動かない。

ご飯が欲しければ、「きゅるっ」と言いながら翻り、居間へと向かうはず。
遊んでほしければ、私の手からするりと抜けて
「追いかけて」とでもいうように、とことことこ、と足早に去っていく。

だけど、今日はどこにもいかない。
ただじっとしゃがんで、私の愛を受けてくれている。

どうしたの?
内心そう思うけれど、それどころではない。

築数十年の我が家は断熱とは無縁。
夏はめちゃ暑いし、冬は猛烈に寒いのだ。

あかーん!
風邪ひく!!

ぷるる、と震えが来て危険を察知し、
最後に優しく撫でたら布団へと出戻った。

ごめんね、猫。
トリプルコートで年中ダウンコートを羽織っている猫と違って、
人間は寒さに弱いのだ。

ぐっと布団をかぶって防寒体制を整え、
猫のいた場所を見る。
薄暗がりでもぼんやりと浮き上がっていたシルエットは、もう見えない。

どこいったんやろ。

そう思っていたら——

あぁーーんっ。

小さく細い、甘い声が耳に届く。
いつの間にか、猫は布団の隣の猫ベッドに移動していた。

慌てて布団から手を伸ばし、猫の背を撫でる。

猫が、ぐうぐうしたいと訴えてくれる声は、
いつ聞いても甘くて、たまらない気持ちになる。

あぁ、愛しいなぁ。

ぐぅぐぅ、ぶろろろろ。

しんと暗く冷たい部屋に、
猫の喉を鳴らす音が響く。

愛しい音。
大好きな音。

うと、うと。
思わず寝そうになりながら、なんとか目をこじ開ける。

ぐうぐう、ぶろろろろ。

なんていい音。
大好きな音。

ぐうぐう、ぶろろろろ。
ぶろろ、ぶろろろろ……。

次第に音は小さくなり、
やがて「すーーぅっ、すーーぅっ」という寝息に変わる。

腕はダルくて、
布団から出ていた部分は冷え切って、とっても寒い。

だけど、猫の寝入りを見届けたという、
幸せな感覚が心地良い。

この眠たさも、ぶるぶる震える冷たさも、
ぜんぶぜんぶ、猫がここにいてくれるから。
元気で、そばにいてくれるから味わうもの。

そう考えると、どんなことさえ、
「愛おしい」に繋がっていく。

大好きだよ、猫。
「おやすみ」
隣で眠る猫に、そっと囁いた。

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