あと十六分
今、二千字でかけ書けと言われたら、どこからの発想で書き始めるか。ただいま二十時四十三分。と書いている間に四十四分。
この状態でどこから書き始めるかの思考実験をしよう。
今あったことをフィクション可するのが一番早い。ちょうど定年のお祝いの飲み会に参加してきたところだ。この話をなんとか作品にするのが最初に思ったことだ。
しかし、私はエッセイストでもなければ、思想家でもない。更に顔を箱で被せて正体も伏せているのだからそんなプライベートなことが書けるわけがない。更に特定なんかされてしまった日には大変なことになる。
じゃあ、先ほど起きたことをフィクション化しよう。温かい素敵な飲み会だった。ただそれだけでそれ以上なにもない。無理やりどんでん返しを入れたとしても、所詮小手先のお話になってしまう。
じゃあ、今までのメモからお話を広げてみよう。メモを見る。
マーダーハラスメント
おにぎり失恋
いや、これでは何も書けない。既に五分経過した。あと十分でなにかができるはずがない。
そもそもスマホで書くのは圧倒的にスピードが落ちる。誤字だって多い。
わかった。
こうなったら最後の手。
今までの続編をなんとなく書いてみる。
いや、駄目だ。自分の好きな作品を乱暴にけがしてしまうことになる。
そもそも二千字な上に時間制限をしたら何も書けるわけがない。
なんでこんなことをしなくてはいけないのだ。
背後に立っている男が笑っている。
いや、男なのかもわからない。
「あなたがやるって言ったんでしょ。できなかったら全てを終わらせるからね」
そんなことを言われても無理だ。まだ千文字にすら達していない。
「ふーん、作家志望のくせに二千文字くらいさらさら書けないの。じゃあ死ねば」
意味が分からない。
「じゃあしななくても良いから、なにか大事なものを失えば」
なんでそんなものを差し出さなくてはいけないのだ。
言葉を続けようとした瞬間、背後にいた「何か」が一歩こちらへ近づいた。空気が揺れる。
鼓動が早まる。視界が少しずつ狭まっていくような感覚に襲われながら、私は、かすれた声で問い返した。
「……あなたは、誰?」
返事はなかった。代わりに、紙が一枚、すっと足元に滑り込んできた。
拾い上げると、それは見覚えのあるメモだった。いや、正確には、書きかけの原稿の断片だった。
数日前、深夜に思いついた言葉を走り書きして、どこかにしまい込んだはずのもの。そこにはこう記されていた。
「失ったものの代償に、得られる物語がある。だから君は書く。書き続ける。」
あの夜、自分に向けた言葉だったはずなのに、今は誰かからのメッセージに思える。身震いした。
けれど、同時に何かが始まりそうな予感もした。
「時間がない」と言われた。だからこそ書かねばならない。
スマホのキーボードに指を置いた。さっきの飲み会、あの笑顔、交わされた言葉。
フィクションにするには味気ない気もする。でも、そこに少しの嘘と、大きな真実を混ぜれば、物語になる気がする。
この物語の主人公は、定年退職を迎えた男ではない。その場にいた、空気のような存在の「私」だ。誰にも覚えられないような顔で参加して、誰にも気づかれず帰路についた。
その「私」が背後に感じている何か——声なき声、あるいは、自身の内側から湧き上がる「もう一人の自分」——それを書いてみよう。
決して完璧ではない。でも、未完成であることに意味がある。
文字が踊る。画面が熱を持つ。
「失ったものがあるなら、それを物語に変えればいい」
さっきの言葉が頭をよぎる。ならば、今この瞬間の焦りや混乱、手の震えさえも、書き留めよう。逃げずに、向き合って。
そう思った時、背後の「何か」はふっと消えた。まるで、「よし、それでいい」と言ってくれたかのように。
そして私は、ようやく一文字目を書き始めた——自分自身の物語を。
「問題」
途中からAIに続きを書いてもらいました。
さて、どこからでしょう?
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