【創作】題名のない物語 第11話 新路(木元編最終話)
休日の朝、疲れて何もする気がしないままスマホで音楽を聴いていた木元だったが、軽い着信音とともに音楽が止まった。故郷に戻り三ケ月が過ぎたがLINEに登録した友人は今も一人しかいない。
一瞬、スルーしてしまおうかと考えながらも画面を確認した。
「この家で間違いないですか」
一行だけ表示され、写真が一枚添付されていた。間違えるはずもない木元の自宅だった。
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‼
木元は跳ね起きると階段を飛び降りるようにして玄関に向かいドアを開けた。
言葉にならず空を見上げる。
セレーノ!
透き通るような青空、本当の空がそこにあった。そして夢に見た、夢でしか逢えないはずの西野がいる。
嬉しくて、言葉にできない。
嬉しくて、言葉にできない。
手の中のスマホからはSEKAINO OWARI「RPG」が流れていた。
西野は軽く頭を下げると
「四月から郡山市の児童相談所への採用が決まり、郡山市に越してきましたので、ご挨拶に参りました。突然ですいません。
児童福祉の分野で働きたくて転職先を探していたら、偶然、木元さんの故郷で採用された。偶然、退職するのが同じ年度になったというのも運命的な感じですけど、そうなるように頑張った子がいた。というのもいじらしいと思いませんか」
言い終えて微笑む。木元の口から自然に言葉が出てきた。
「生涯、あなたを大事にします」
西野を抱きしめる。懐かしい香りが心に満ちる。
木元の胸元から声が聞こえた。
「そうですね。大事なことは、これからどうしていくかですかね」
(聞いていいのか、聞くべきじゃないのか、わからないけど、我慢できない。聞いておかなきゃ)
「西野さんが好きだったという人は」
震える声で西野が応える。
「好きな男性は、ずっと木元さんだけです。こんないい女を東京に置いていく悪い人ですけど」
(とんでもない馬鹿野郎がいたものだ)
木元はもう一度天を見上げた。温かいものが頬を伝う。
(西野さんとの物語はまだプロローグだったのか。ここで、ここから一緒に創ろう「幸せな家族の物語」。僕らはもう、一人じゃない)
空は青く澄み渡り、天は二人に微笑むような柔らかな光を降り注いでいた。
(木元編 おわり)
第1話
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