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「小説 組織風土改革推進委員会」第4話:青山の疑惑

第4話:青山の疑惑

 青山のパワハラ嫌疑の話をしたが、それは、この組織,、組織風土改革推進委員会が出来た矢先のこと、三年前のことだ。 当時、俺だけが本務の社員で、経営企画の組織の長であった伊勢さんと、当時、青山の部門にいた松井の3人での組織はスタートした。

 なにからはじめていこうかと、毎日、打ち合わせをしていた頃、ちょうど1ヶ月過ぎた5月の連休明けに松井から話を聞いた。
「今日、帰りにどうですか?」
とめずらしく松井に誘われて、東中野の会社を出て、その日は渋谷のはずれにある博多料理が美味しい店へと向かった。ここは、松井が昔からよく一人で行っている店と聞く。そうか、松井も俺と同じ福岡出身だったなと気づく。会社では博多弁も喋らない二人だが、店の中では馴染みの言葉で話すこととなった。お店は、客は我々二人と女将で三人だけだった。お店の女将も福岡の人であるので余計に地元の話題でで話が弾んだ。
「先輩、これって、パワハラですよね」
「女将さん、聞いちゃってん、こっちが挨拶しようとにくさ、パソコン眺めながら見向きもせんっちゃけん、あいつくさ」
「会議はじまったら、ずっとダンマリで、こっちがなんか気ぃ使って話そうもんなら、怪訝そうな顔して、チェッ!っていうようなふりをするけん、頭にくるとですよ」
まあ、松井の愚痴は止まらなかったが、案外、酒の勢いの話でもなく、実態として組織のみんなが困っているという様子が伺えた。
「松井、わかった。ヒアリングと称して、その青山何某のところに俺が行ってくるよ」
「みんなが困っていることを話してくるよ」
と、松井に言った。
松井は
「それ、俺がチクったって、簡単にバレるっちゃないですかね。もっと丁寧に、何かうまーくやってくださいよ。おれ、恨みをかいますから」
と、この件で自分に降りかかる恐れのあることを嫌がっていたが、でも、俺にはぜひやってほしい、行動してほしいというメッセージは伝わってきた。 こういう役目について俺としても嫌いではなかった。昔からそうだったのだろうか?30代の営業の頃はそうではなかったように思う。そういうことは、当人同士でうまくやればいいのにと考えるたちであった。そう、いつからなのだろう。

 その夜から三日後、青山にアポをとった。いきなり「ヒアリングしたい」とか、「少しパワハラまがいの嫌疑がある」とかも話が出来ないので、
唐突ではあったのだが「組織風土改革に興味や、関心がある部下などいないかを確認したい」
という趣旨で持ちかけた。

 その日は会議室が空いておらず、食堂で待ち合わせをすることとなった。食堂は昼休みを除いては、オンラインミーティングしたり、1on1ミーティングをやったりしている人が結構いたのたが、奥のソファー席は、まだ午前中はあまり使われていないことがわかっていたので、その辺りで待ち合わせをし、ソファーに腰を下ろした。青山は銀のフレームの眼鏡を外したとたんに、突然、
「うちからは松井がそちらの部門に行っているけど、まだ、人が欲しいんですか?」
と矢のような勢いでストレートな質問がきた。その態度は少し横柄にも感じたが、なにかあって機嫌が悪いんだろうと捉えた。俺は、
「いや、関心がある人、何か自分で組織を変えたいという人が他にもいないかを聞いてまわっているところです。青山さんで3人目なのですが、本部長や副本部長の方に直接会って確認しているんです」
青山は、周りを見渡してフッと一息つく感じで、少し考えながら
「そうですか。僕の知っている限り、一人いますよ」   
「青山さんのお眼鏡に叶う方なら伺っておきたいのですが?」
「うん。私。そう、村田さん、私は適任かもですよ。どうも昭和世代のパワハラ野郎だと言われているようなので、いっそのこと私がどうかと。もう、会社の数字よりも、基盤となる組織風土について取り組んでいきたいと思っています」
青山は眼鏡をかけ直すとじっと俺を凝視したかのような感じだった。何か圧力のようなものに俺のほうが押されていた。青山はまさに官僚のような無表情の顔つきで俺を見ていた。まさかの展開だった。これを松井が聞いたらなんというやらと考えていた。
「青山さんは管理職なので、毎年一回の自己申告で人事に提出してもらわないと、こちらも勝手には動けないですね」
と、その場では、ちょっと適当に話してしまった。 実際、どう答えていいのかはわからなかった。こういう流れになるとか、想定外でしかなかった。
「自己申告ですね、わかりました」
青山は、素直にそう言って、部下からの電話なのかスマホをとって、「ちょっとすみません」という合図をして去っていった。食堂のとなりにあるカフェの売店で、コーヒーを買って少し頭の中を整理して、席に戻ることとした。松井にあった時に話す内容を少し考えていた。俺にとっては、 ちょっとストーリー通りではない方向の展開だった。

 翌日、このことを松井に話すと
「青山さんが異動でここにくるのであれば、僕は兼務でもなく完全に異動させてくださいね」
とまくしたててきた。
「伊勢さんには少しこの経緯は話しておくから」
「絶対ですよ!」
という流れとなった。人事にもこの話は行ったが、勝手にそんなことというふうに、その時はあしらわれた。
しかし、翌年度、青山はこの組織に来て、松井はもとの職場へ戻ることとなった。人事本部長の加藤さんが「青山さんがそこまで言うのなら」という話であった。

 人員は3人で、その時、トップは、伊勢さんから、舟木さんとなっていた。伊勢さんが何かをやったわけでもないが、彼は主に広報関係などを司る執行役員となった。そのあとの舟木さんも、事業本部の執行役員となった。


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