問題解決力とは、人を責める力ではない|トヨタ式改善に学ぶ、構造を変える才能【才能インストールシリーズ/問題解決力編】
前回は、習慣化力について話しました。
習慣化力とは、
毎回がんばる力ではありません。
自分の性格、特性、弱点を知り、
そのうえで、判断しなくても続く構造を作る力です。
どれだけ良い判断をしても、
その行動が一回で終われば、成果は安定しません。
だから、判断した一手を
毎回気合いで実行するのではなく、
自然に始まり、続いていく形に変える必要があります。
行動が続く。
確認が続く。
改善が続く。
振り返りが続く。
再発防止の仕組みが続く。
ここまで来て、ようやく問題は
一時的な対応ではなく、構造として変わりはじめます。
そして今回、才能インストールシリーズの最終回として扱うのが、
問題解決力です。
ここまで扱ってきた能力は、
すべて問題解決力につながっています。
目標達成術で、目的を決める。
継続力で、途中で折れない流れを作る。
集中力で、見るべき対象に深く入る。
観察力で、現象や相手の価値観を見る。
想像力で、見えていない因果を読む。
創造力で、新しい打ち手を作る。
優先順位力で、レバレッジポイントを見抜く。
判断力で、今もっとも通る一手を選ぶ。
習慣化力で、その行動を続く構造にする。
そして最後に、
それらをすべて統合して、
目の前の問題を構造で解く。
それが、今回のテーマである
問題解決力です。
問題解決力とは、
答えを知っている力ではありません。
現象を観察し、
因果を想像し、
打ち手を創造し、
優先順位を決め、
判断し、
習慣化して、
再発しない構造に変える力です。
今回のビッグアイデアは、これです。
問題解決力とは、答えを探す力ではなく、現象を分解し、詰まりの因果を見つけ、再発しない構造へ変える力である。
問題解決力のモデルは、トヨタ式改善
問題解決力を考えるうえで、わかりやすいモデルがあります。
それが、トヨタ式改善です。
トヨタ式改善、トヨタ生産方式と聞くと、工場や製造業の話に聞こえるかもしれません。
でも、その本質は製造業だけのものではありません。
問題が起きたときに、
「誰が悪いか」で止めない。
なぜそれが起きたのか。
どの工程でズレたのか。
どの情報が足りなかったのか。
どの仕組みが問題を生んだのか。
どうすれば、同じ問題が起きにくくなるのか。
そこを見る。
これが、トヨタ式改善の強さです。
その中心人物として知られているのが、大野耐一です。
大野耐一は、トヨタ生産方式の確立に大きく関わった人物として知られています。
有名なのは、
現地現物
なぜなぜ分析
カイゼン
標準化
ジャスト・イン・タイム
こうした考え方です。
ただ、今回大事なのは用語を覚えることではありません。
大事なのは、問題の見方です。
問題が起きたときに、すぐに人を責めない。
「注意不足だ」
「意識が低い」
「やる気がない」
「ちゃんとしていない」
そう決めつける前に、問題が起きた流れを見る。
人ではなく、構造を見る。
ここに、問題解決力の本質があります。
問題解決力とは、PDCAを回す力である
問題解決力と聞くと、頭のいい人だけが持っている特別な能力のように感じるかもしれません。
瞬時に原因を見抜く。
正解を一発で当てる。
誰も思いつかない解決策を出す。
たしかに、そういう力もあります。
でも、普通の人が身につけるべき問題解決力は、そこではありません。
大事なのは、正解を一発で当てることではなく、
仮説を立てて、試して、結果を見て、また直すことです。
つまり、PDCAです。
Plan。仮説を立てる。
Do。試す。
Check。結果を見る。
Action。改善する。
この流れを回す。
ただし、闇雲に回しても意味がありません。
手当たり次第に試すだけでは、ただ疲れるだけです。
問題解決力のある人は、試す前に考えます。
本当の問題はどこにあるのか。
なぜ、この現象が起きているのか。
どのレイヤーに原因があるのか。
どこを変えれば、同じ問題が起きにくくなるのか。
つまり、表面の現象だけを見ません。
その奥にある因果を見ます。
問題解決力を構成する4つのパーツ
問題解決力を分解すると、主に4つのパーツがあります。
1. 現象を見る力
まず必要なのは、現象を見る力です。
今、何が起きているのか。
ここを正確に見る必要があります。
多くの人は、問題が起きるとすぐに感情で判断します。
「あの人が悪い」
「やる気がない」
「意識が低い」
「危機感がない」
「何度言ってもわからない」
そう感じることもあると思います。
でも、最初から人の性格や意識の問題にしてしまうと、現象が見えなくなります。
まず見るべきなのは、
何が、どこで、どのように起きたのか。
事実です。
問題解決の入口は、感情ではありません。
現象の観察です。
2. 因果を見る力
次に必要なのは、因果を見る力です。
なぜ、それが起きたのか。
ここを見ます。
ただし、原因は一つとは限りません。
人の問題。
仕組みの問題。
情報の問題。
教育の問題。
環境の問題。
確認方法の問題。
伝え方の問題。
受け取り方の問題。
いくつものレイヤーが重なって、問題は起きます。
だから、問題解決力がある人は、
すぐに一つの原因に決めつけません。
現象を分解しながら、
どのレイヤーに原因があるのかを見ます。
3. 仮説を立てる力
原因が見えてきたら、次は仮説を立てます。
もしかすると、ここが問題ではないか。
この聞き方では、本当の原因が見えていないのではないか。
本人はわかっているつもりでも、自覚できていないのではないか。
正論で伝えても、本人が受け取れていないのではないか。
このように、仮説を置きます。
仮説は、正解でなくても構いません。
大事なのは、仮説を立てたら試すことです。
そして、結果を見ることです。
仮説が外れたら、失敗ではありません。
問題の正体に一歩近づいたということです。
4. 構造を変える力
最後に必要なのが、構造を変える力です。
問題を一時的に止めるだけでは、解決とは言えません。
同じ問題がまた起きるなら、
それはまだ構造が変わっていないということです。
毎回注意しているのに、同じミスが起きる。
毎回説明しているのに、伝わらない。
毎回誰かがフォローしている。
この場合、人だけを責めても変わりません。
確認方法が悪いのか。
教え方が悪いのか。
情報の流れが悪いのか。
本人が受け取れる形になっていないのか。
そもそもミスが起きやすい仕組みになっているのか。
そこを見る必要があります。
問題解決力とは、その場をなんとかする力ではありません。
同じ問題が起きにくい構造に変える力です。
事故件数が高い会社で見えた、問題解決の流れ
ここで、実際の仕事の例で考えてみます。
ある会社で、事故件数が高いという問題がありました。
最初に見えたのは、
事故を起こした当事者の当事者意識が低いこと。
そして、他責思考が強いことでした。
事故を起こしても、
「相手がこうだった」
「状況がこうだった」
「自分はこうするしかなかった」
という話になりやすい。
さらに、報告書を作ろうとしても、
ドライバーの発言には、自分を守るための嘘や、話を盛る傾向がありました。
これでは、本当の事故原因が見えません。
原因が見えなければ、対策もズレます。
そこで最初に変えたのは、質問の仕方です。
「その時どう思ったか?」
「なぜそうしたのか?」
という感情や言い訳が入りやすい質問ではなく、
まずは、どういう流れで事故に至ったのかだけを教えてください。
こう聞くようにしました。
つまり、最初の仮説はこうです。
事故原因が見えない理由は、報告が感情や自己防衛で濁っているからではないか。
だから、事実ベースに絞った。
これは、問題解決の第一段階です。
感情を否定したわけではありません。
ただ、原因分析の段階では、まず事実と感情を分ける必要があったのです。
事実ベースにしても、事故は減らなかった
ところが、事実ベースにしても、事故は思ったほど減りませんでした。
ここで、次の仮説が必要になります。
「報告の問題だけではない」
「本人たちが、自分の判断ミスを自覚できていないのではないか」
そこで次に行ったのが、Googleマップを使った事故場面の再現です。
事故が起きた場所を地図で確認する。
場面ごとに流れを再現する。
その時、どこを見ていたのかを聞く。
どのタイミングで確認が抜けたのかを見る。
どの判断が事故のきっかけになったのかを一緒に確認する。
これは、トヨタ式で言えば、現地現物に近い考え方です。
報告書だけで判断しない。
実際の場所、実際の流れ、実際の判断を確認する。
もちろん、毎回現地に行けるわけではありません。
だから、Googleマップを使って現場を再現した。
地図上で事故の流れを見る。
どこで見落としたのかを見る。
どこで判断がズレたのかを見る。
事故を「ぶつけた」という一点で見るのではなく、
事故に至るまでの流れとして見るようにしたのです。
事故は、最後の瞬間だけで起きるわけではありません。
その前に、視線があります。
確認があります。
判断があります。
思い込みがあります。
焦りがあります。
見落としがあります。
そのどこかでズレが生まれ、最後に事故として表に出る。
だから、事故を減らすには、
事故の瞬間だけを責めても意味がありません。
その手前にある判断のズレを見つける必要があります。
それでも効果が薄かった理由
しかし、それでも効果は薄かった。
ここが問題解決力の面白いところです。
一つ改善しても、すぐに正解にたどり着くとは限りません。
むしろ、改善してみたからこそ、次の問題が見えてきます。
この場合、次に見えたのは、
本人たちの気持ちを除外しすぎたことで、素直に受け入れられないという問題でした。
原因分析では、感情を除外する必要がありました。
でも、人を育てる段階では、感情を無視しすぎると動きません。
正しいことを言っている。
原因も見えている。
再現もできている。
それでも本人が責められていると感じれば、防衛に入ります。
「自分が悪いと言われている」
「責められている」
「否定されている」
「また怒られる」
こう感じると、人は受け取れなくなります。
つまり、問題は事故原因の分析だけではありませんでした。
伝え方の構造にも問題があったのです。
「出来ないのがダメ」ではなく「ここだけ惜しかった」
そこで、伝え方を変えました。
出来ていないところだけを見るのではなく、
出来ているところを褒める。
「ここまでは出来ていた」
「この確認は良かった」
「この判断は間違っていなかった」
「だから全部がダメだったわけではない」
そのうえで、
ここだけ出来ていなかったから惜しかった。
と伝える。
これは、ただ優しくするという話ではありません。
問題解決のための、認知の再設計です。
「お前はダメだ」と言われると、人は防衛します。
でも、
「ここまでは出来ていた。あと一つで防げた」
と言われると、受け取り方が変わります。
自分はダメなドライバーではない。
でも、ここを直せばもっと良くなる。
そう思える。
すると、本人の中に自己肯定感が育ちます。
そして、自己肯定感が育つと、
「怒られないために気をつける」から、
「自分は優良ドライバーでありたい」に変わります。
この変化は大きいです。
外から管理されるのではなく、
本人の中に、優良ドライバーとしての自己認識が育つからです。
これが、問題解決の第三段階です。
原因を見つけるだけではなく、相手が受け取れる形に変えた。
問題解決は、PDCAを一回で終わらせない
この流れをPDCAで見ると、かなりわかりやすくなります。

最初のPDCAはこうです。
Plan。
事故が減らない原因は、報告が感情や自己防衛で濁っているからではないか。
Do。
質問を事実ベースに変える。
Check。
それでも事故は減らない。
Action。
次は本人の自覚を促す方法に変える。
次のPDCAはこうです。
Plan。
本人が、自分の判断ミスを自覚できていないのではないか。
Do。
Googleマップで事故場面を再現し、視線や判断を確認する。
Check。
それでも効果が薄い。
Action。
今度は、本人が受け取りやすい伝え方に変える。
さらに次のPDCAです。
Plan。
正論だけでは、本人が責められたと感じて防衛するのではないか。
Do。
出来ているところを褒め、惜しかった一点だけを伝える。
Check。
本人が受け入れやすくなり、自己肯定感が育つ。
Action。
自ら優良ドライバーとして行動する流れを作る。
このように、問題解決力とは、
一回の対策で終わるものではありません。
仮説を立てる。
試す。
結果を見る。
違ったら、次の仮説に進む。
そのたびに、問題のレイヤーが深くなっていきます。
最初は「報告の問題」だった。
次は「自覚の問題」だった。
最後は「受け取り方と自己肯定感の問題」だった。
これが問題解決です。
表面の現象だけを見ていたら、ここまでは見えません。
トヨタ式改善に、認知の再設計を加える
トヨタ式改善の強さは、問題を人のせいで終わらせず、工程や仕組みで見ることです。
なぜ起きたのか。
どこでズレたのか。
どの仕組みを変えれば防げるのか。
ここを見ます。
ただ、人を扱う現場では、もう一つ必要なものがあります。
それが、認知の再設計です。
いくら原因が正しくても、相手が受け取れなければ行動は変わりません。
いくら正論でも、相手が責められたと感じれば防衛します。
だから、人が関わる問題解決では、
原因を見るだけでは足りません。
相手がどう受け取るのか。
自分ごととして見られるのか。
改善したいと思えるのか。
自分は変われると思えるのか。
ここまで見る必要があります。
事故を減らすために必要だったのは、
ただ注意することではありませんでした。
事故に至る流れを見える化すること。
本人が自覚できる形にすること。
そして、本人が受け取れる伝え方に変えること。
ここまで含めて、問題解決です。
構造再設計メソッドで見る問題解決力
構造再設計メソッドの方程式で見ると、今回の話はかなり整理しやすくなります。
{(現象 ÷ レイヤー)→ 因果 → 仮説} ÷ 構造 = 新しい構造
まず、現象があります。
会社の事故件数が高い。
それをレイヤーに分ける。
事故そのもの。
報告の仕方。
本人の認知。
事故場面の判断。
教育の伝え方。
自己肯定感。
優良ドライバーとしての自己認識。
次に、因果を見る。
なぜ事故が減らないのか。
なぜ報告が濁るのか。
なぜ自覚できないのか。
なぜ正論を受け入れられないのか。
なぜ言い訳が出るのか。
そして、仮説を立てる。
事実ベースにした方がいいのではないか。
場面を再現した方がいいのではないか。
出来ているところを認めた方がいいのではないか。
惜しかった一点に絞れば、受け取りやすいのではないか。
最後に、構造を変える。
質問の仕方を変える。
事故の振り返り方を変える。
伝え方を変える。
本人の自己認識を変える。
その結果、新しい構造が生まれる。
「怒られないために気をつける」ではなく、
「自分は優良ドライバーでありたいから気をつける」
この構造に変わる。
ここまで来て、初めて問題解決と言えます。
問題解決力がある人は、失敗をデータとして見る
問題解決力がある人は、失敗を終わりにしません。
失敗をデータとして見ます。
やってみた。
うまくいかなかった。
では、なぜうまくいかなかったのか。
ここを見る。
質問を変えた。
でも事故は減らなかった。
では、報告の問題だけではなかったのかもしれない。
場面を再現した。
でも効果は薄かった。
では、本人の受け取り方に問題があるのかもしれない。
褒め方を変えた。
本人が受け入れやすくなった。
では、自己肯定感が行動変容の鍵だったのかもしれない。
こうやって、失敗を情報に変える。
だから、問題解決力がある人は、
最初から完璧な答えを出そうとしません。
一つずつ試しながら、原因に近づいていきます。
完璧な正解を探して止まるのではなく、
仮説を持って動く。
動いた結果から学ぶ。
そして、また直す。
これが問題解決力です。
まとめ
問題解決力とは、
正解を一発で当てる力ではありません。
仮説を立て、試し、結果を見て、改善する力です。
そして、最終的には、
問題が起きる構造そのものを変える力です。
事故が多いなら、
「気をつけろ」で終わらせない。
なぜ事故が起きたのか。
なぜ原因が見えないのか。
なぜ本人が自覚できないのか。
なぜ正論を受け入れられないのか。
どう伝えれば、本人が動けるのか。
そこまで分解する。
そして、問題を起こした人を責めるのではなく、
問題が起きた構造を見直す。
報告の仕方を変える。
振り返り方を変える。
伝え方を変える。
本人の自己認識を変える。
その結果、
「怒られないために気をつける」から、
「自分は優良ドライバーでありたい」に変わる。
ここまでいけば、問題はただ処理されたのではありません。
構造が変わっています。
問題解決力とは、
問題を消す力ではありません。
問題が起きる構造を、より良い構造へ作り変える力です。
それが、今回インストールする才能です。
シリーズのまとめ
ここまで、才能インストールシリーズでは、
10個の能力を順番に扱ってきました。
目標達成術。
継続力。
集中力。
観察力。
想像力。
創造力。
優先順位力。
判断力。
習慣化力。
そして、問題解決力。
この10話は、
単なる能力紹介ではありません。
才能を「すごい人だけが持っている特別なもの」として眺めるのではなく、
普通の人が仕事や生活の中で使える形へ変換するためのシリーズです。
目的を決める。
続ける。
集中する。
見る。
見えない因果を読む。
新しい打ち手を作る。
何からやるかを決める。
今もっとも通る一手を選ぶ。
判断しなくても続く構造にする。
そして、問題を構造で解く。
この流れがつながったとき、
才能はただの憧れではなくなります。
自分の行動を変えるための道具になります。
問題解決力とは、
この10個の能力を統合する力です。
答えを知っていることではありません。
目の前の現象を分解し、
因果を見つけ、
仮説を立て、
打ち手を作り、
優先順位を決め、
判断し、
習慣化して、
再発しない構造へ変えていく力です。
つまり、才能インストールシリーズの最終地点は、
「すごい人になること」ではありません。
自分の目的に向かって、必要な能力を使える形に変換することです。
能力は、持っているかどうかではありません。
どう見つけるか。
どう分解するか。
どう自分に合う形へ変えるか。
どう目的達成に使うか。
そこまで設計できたとき、
才能はようやく、自分のものになります。
才能インストールシリーズは、ここで一度完結です。
次からは、この10個の能力を土台にしながら、
さらに仕事、人生、発信、職場、人間関係の中でどう使うのかを、
別の角度から分解していきます。
才能は、選ばれた人だけのものではありません。
構造として分解すれば、誰でも自分の行動にインストールできる。
これが、才能インストールシリーズ全体を通して伝えたかったことです。
