TikTokから学ぶ「行動経済学」
column vol.1032
昨日は【「オマカセ」か「オコノミ」か】と題して話を進めさせていただきましたが
若干、「オコノミ」に光が当たり過ぎたかな?と感じましたので…
今日は「オマカセ」をフューチャーしたいと思います😊
「オマカセ」、つまり「レコメンド(オススメ)」という視点で、今ユーザーの心を鷲掴みしている代表的な事例の1つが「TikTok」でしょう。
ここには行動心理学の理論である「選択アーキテクチャー」が活用されております。
ということで、そんなTikTokの戦略に触れていきたいと思うのですが、まずは簡単に行動心理学と選択アーキテクチャーについて説明させていただきます。
現代は「選択オーバーロード」社会
行動経済学とは、経済学と心理学が融合した学問で、「非合理である人間という生き物が、なぜ非合理な行動をしてしまうのか」を解明する学問です。
例えばダイエット中の人に、ヘルシーフードとジャンクフードを勧めた場合、合理的に考えるとジャンクフードは全く売れないはずです。
しかし、「分っちゃいるけど やめられねぇ〜♪」とスーダラ節の如く、ジャンクフードに手を出してしまうのが人間の性。
(しかも…、ダイエット中のジャンクフードは一層美味しい…)
このようにダイエットをしているはずなのに、ジャンクフードに手を出してしまうといったような非合理性にスポットを当てているのが行動経済学です。
そして、次に選択アーキテクチャーについての説明ですが、その前に「選択オーバーロード」について触れさせていただきます。
普通は買い物をする上で選択肢が多い方が良いですよね?
しかし、人間は選択肢が多過ぎると、逆に選択できない心理状態になってしまいます。
有名なのは「ジャムの法則」です。
ジャムの試食販売の実験をした際、以下の2グループに分けました。
グループA:
6種類のジャムを試食販売
グループB:
24種類のジャムを試食販売
普通に考えるとグループBの方が良さそうですよね?
しかし、結果はこのようになりました。
グループA(6種類)
●試食をした人の割合:40%
●試食後に購入した割合:30%
●全数の購買率:12%
グループB(24種類)
●試食をした人の割合:60%
●試食後に購入した割合:3%
●全数の購買率:1.8%
試食した人の数はBの方が多いのに、実際に買った人はAの方が多い。
つまり、Bの人は「何を買って良いのか」判断がつかなくなり、購入を見送ってしまったのです。
TikTokが仕掛ける「選択アーキテクチャー」
ちなみに、アメリカのAmazonで「トイレットペーパー」と検索すると4000件以上ヒットするそうです。
〈現代ビジネス / 2023年6月5日〉
伝統的な経済学では、「人間は4000のトイレットペーパーを比較検討し、価格、品質、レビューもすべて見て一番いいものを選択する」ということを前提に考えます。
実に合理的ですね。
…ただ…、実際はどうでしょう…?
私は4000の中から選びたくはありません…(汗)
まさに思考停止になります…
選択オーバーロードが消費欲求を減退させてしまうというのは、よく分かりますね。
そこで、有効なのが「選択アーキテクチャー」という考え方です。
これは、選択肢をどのように「設計」したら良いか、最適な方法を探る概念です。
ここでTikTokを思い浮かべたいと思います。
「最初から選択されている」という方法を採用していますよね?
アプリを開いた瞬間に、何も選ばなくてもすぐに動画が流れてくる。
最初からそのユーザーが興味のありそうな動画を自動で流してしまうのです。
そうすることで、ユーザーは選ぶ必要がなくなります。
そうして気がつくと、30分、1時間と時間が経っている。
「時間が溶ける」という言葉が生まれたように、選択を設計することによる効果は絶大なのです。
日常に溢れる「選択肢の設計」
もちろん、選択アーキテクチャーを仕掛けているのはTikTokだけではありません。
先ほどのAmazonでいえば、アルゴリズムによるレコメンドは代表的なところ。
さらには、「価格順、新しい順、人気順」などのフィルターを採用し、消費者が選びやすくしているのも選択アーキテクチャーです。
あと、Netflixでも必ずおすすめのドラマのワンシーンが自動で流れてきますが、それも同じこと。
「次のエピソード」の表示も、「観るしかないでしょ!」と言われているようなものです(笑)
他にもSpotifyも、「Spotify Radio」、「Discover Weekly」、「Release Radar」、「On Repeat」、「Repeat Rewind」、「Daily Mix」などがアルゴリズムプレイリストに該当します。
もちろん、これはデジタルの世界だけではなく、リアルの世界でもよく見られること。
例えば、スーパーマーケットに行くと「売れています!」「広告掲載商品」「店長おすすめ!」などのPOPを目にすることが多いと思いますが、こちらも選択アーキテクチャー。
顧客の自由な選択意思を残しながら、「背中を押す、肘で軽くつつく(ナッジ)」することから、ナッジ理論とも言われています。
一企業だけではなく業界全体で決めていることもあります。
例えば、トレンドカラーがそうですね。
こちらはインターカラー(国際流行色委員会:INTERNATIONAL COMMISSION FOR COLOR)と呼ばれる国際機関が決めています。
日本のトレンドカラーを選定するのは、 一般社団法人日本流行色協会(JAFCA)。
協会が決めることで、その色が売れやすくなるので、アパレル業界としては色を絞り込んで売ることができ、ロスを減らすことができているというわけなのです。
これらは一例ですが、世の中には選択アーキテクチャーで溢れています。
もちろん、種類の豊富さは売りになる。
そこを惹きにしながらも、併せて「選択しやすい設計」をどのように仕掛けるかが「売れる商品」の肝になります。
もしも、「種類豊富で、良い商品なのに売れないな…」と思う時は、そこに光明があるかもしれませんね😊
