RRS対応はコーヒーを飲みながら!?
こんにちは、東京ベイ・浦安市川医療センター(TBMC) 集中治療部門のフェローです。
今回は、RRS(Rapid Response System)について、当院での運用とフェローの関わり方をご紹介したいと思います。
RRSってご存知ですか?
病院の中で「なんかこの患者さんヤバそう」みたいなときに、現場のスタッフがすぐに助けを呼べる仕組みのことです。つまり、病棟や救急で異変が起きた時に、迅速に専門チームが対応に向かう体制ですね。重要なのは急変前に呼び「急変を未然に防ぐシステム」であること、ココ大事ですね。

TBMCでは、この院内RRS対応を集中治療部門が担当しています。
特に当直中は、よくコールが鳴ります。ほんまによく鳴ります。
実際の起動件数は
では実際、どれくらいの件数があるのか?
こちらが過去4年間の実績です。
• 2020年度:447件(うち院内357件、外来90件)
• 2021年度:389件(うち院内269件、外来120件)
• 2022年度:560件(うち院内462件、外来98件)
• 2023年度:585件(うち院内476件、外来109件)
2023年度は、過去最多の585件。1日あたり約1.6件。
もちろんこれは平均値なので、当直中に3件、4件と連続して対応する夜もあります。
RRSはコーヒーを飲みながら!?
RRSコールが来ると、まず現場へダッシュ!
……なんて言いたいところですが、実はそうとも限りません。
フェロー卒業生の先輩には、
「RRSっていうのは急変や心停止の前に呼ばれてるんだから、コーヒーでも飲みながらゆっくり行きゃええんや」
なんて言われたこともあります。
いや、そんなん無理ですって。
コール鳴った瞬間、脳内ではもうサイレンが鳴ってます。
コーヒー飲む余裕なんて、どこにもない。
……とは言え、走って行くかどうかはまた別の話。
私のようなおじさんフェローはですね、
ちゃんとエレベーターを使います。
若い頃は階段ダッシュしてたような気もしますが、今では安全第一、体力温存。
“持続可能な医療”って大事ですからね。
そんな感じで現場に着いたら、ABC(気道・呼吸・循環)の評価をして、
必要に応じて血液検査、心エコー、薬剤投与……
そしてHCUやICUへの転棟判断もその場で行います。
RRSは、HCUやICUに入るか入らないかの“グレーゾーン”の患者さんと向き合うことが多く、診断力・判断力・チームワークの全部が問われます。
そして、ちょっとしたユーモアや、現場の空気を読む力も大事やなぁと思います。
ちなみに、外来のRRSも年間100件前後ありまして、
こちらはERチームが対応しております。
ICUフェローとして、RRSの対応は避けて通れない道。
でもこれがあるからこそ、日々の成長もめっちゃ感じます。
そもそもRRSって、どこから来たの?
RRSの起源はオーストラリア。
1990年代後半、シドニーのLiverpool Hospitalで「心停止する前に動けるチームを」として始まりました。
その後アメリカでは、IHI(Institute for Healthcare Improvement)が2004年12月に立ち上げた
「100,000 Lives Campaign」で一気に全国に広まりました。
これは「18か月で10万人の命を救おう!」という壮大なキャンペーンで、
RRSの導入がその中核施策のひとつとされました。
最終的に全米3000以上の病院が参加し、IHIは「12万人以上の命を救った」と発表しています。
数字の根拠には議論もありますが、RRSが全米に定着するきっかけとなったことは間違いありません。
RRSって効果あるの?
これ、よく聞かれるんですが、正直なところ「あるとも言える」というのが実情です。
たとえば、有名なMERIT試験(2005)という大規模なランダム化比較試験では、METシステム(Medical Emergency Team system)を導入しても、「院内死亡」「心停止」「ICU転棟」に明確な差は出なかったという結果でした。
でもその後、イギリスの研究(Ball et al., 2004)では、RRSの一形態であるCritical Care Outreach Teamを導入することで院内死亡率が半分(OR 0.52)に減ったという報告もあります。
さらに、システマティックレビューでは、
病棟での心停止の減少
ICU転棟の早期化
病院死亡率の改善
といったポジティブな結果も多数報告されています。
ただし、これらの多くは観察研究であり、
介入の中身やチーム構成が病院ごとに違うため、「RRSの効果はありそう、だが一定ではない」というのが現時点での評価だと思います。
……とはいえ、RRSがあることで「何かおかしい」を声にしやすくなったり、看護師さんが「呼んでよかった」と言ってくれたり。
数字には出にくいけれど、そういう“安心感”を支える仕組みとして、RRSって本当に大事だと思います。
日本でもRRSは“当たり前”になりつつある?
ここ数年、日本でもRRSが急速に普及しつつあります。
2008年:「医療安全全国共同行動」で「急変対応」が目標に
2022年度診療報酬改定:「急性期充実体制加算」の要件にRRSの整備が追加
2025年:日本集中治療医学会「RRS運用指針」
この指針では、
起動後15分以内に現場へ到着
客観基準+「スタッフが不安を感じる」などの主観的な起動理由もOK
全症例のフィードバックと継続教育
RRSは全職種の協力が不可欠なチーム活動である
といった内容が明記されており、
RRSは「熱意ある一部の人の取り組み」ではなく、「病院全体の文化として整備すべき仕組み」へと進化しています。
ICUフェローは夜の“セーフティーネット”
ちなみに、当院では外科系診療科はオンコール体制となっているため、夜間はそうした科の患者さんについてもRRSで呼ばれることがよくあります。
「この人、術後だけど…」「ちょっとバイタルが気になる」──そんなとき、現場に駆けつけるのが私たちICUチームの役割です。
つまり、ER、総合内科(Hospitalist)と並んで、ICUも夜間の病院の安全を支える重要な柱のひとつ。
病院が眠ることのない場所で、RRSは静かにセーフティーネットとして機能しています。
終わりに
というわけで、今回はRRSについてのお話でした。
またいずれ、フェローとしての当直のリアル(深夜のサバイバル)についても書けたらと思ってます。
最後まで読んでいただき、ありがとうございました!
また次回、ICUの片隅でお会いしましょう。
