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【SF小説体裁】 ⚡️Forbidden|フォービドゥン ―或る恒点観測員の報告書― Case 02. 「最も身近で、親愛なる存在(ソレ)。」

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​⚠️ 《論理制御知性体J.A.C.O》より通知――
告。観測上の注意。本報告書には、物語の演出上、ヒマジンの目撃した交通事故の描写が含まれマス。閲覧は、ご自身の体調に合わせて慎重にご判断くだサイ。

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彼は、古い民家の縁側に腰掛けて、
老婦人と談笑していた。
年の頃は大学生くらいだろうか。


祖母と孫ほどの歳の差に見える彼は、
しばらくして懐中時計に目をやると、
すっと立ち上がった。


「あら、『キワ』さん。もう行ってしまうのね?」


「ええ、また今度。日を改めて伺いますよ。」


老婦人の声がけに、「キワ」と呼ばれた彼は、
そっと笑顔で答えた。



民家の門扉を出て、
そのままどこへともなく歩き出す。


一見して、街の景色によく馴染む、
どこにでもいる青年に見えた。


『問。管理者ヒマジン。
彼の何がそんなに気になるのですカ?』


私の運用する人工知能、
《論理制御知性体J.A.C.O》/通称:ジャコが、
装着した「通信装置(メガネ)」を通じて
問いかけてきた。


「うーん、自然すぎるというのかな?
どこにでもいて、当たり前のように景色に
馴染んでいるのがかえって不自然というか……。」


私自身、自分が感じている「ノイズ(違和感)」を
言葉にするのが難しかった。
それほどまでに、彼からは「何も感じない」のだ。


『応。ワタシの集積システムでは検知できない
「ノイズ」デス。杞憂(きゆう)ではありませんカ?』


「まあ、杞憂も何も、私はただの観測員だからね。
地球人の営みに、必要以上の干渉はできないよ。」


『告。何やかんや理屈をこねながら、地球人の面倒事に首を突っ込むのはアナタの悪い癖デス。この間もSNS上で、余計なポストをしていましたネ。その前ハ……』


ジャコは小言が始まると、長い。
分が悪くなる前に、話題を変えるとしよう。


「ああ…っと。これまで彼を見かけた場所は……
どこで、何をしていたんだったかな?」


『応。

昨日は3丁目の交差点で
信号待ちしているところを記録。

今日は午前中、
公園のジャングルジムの上に腰掛けて、
空を見上げている場面を記録していマス。

その後は、小学生くらいの少年と地面に
しゃがみ込んで何やら話し込んでいたようですガ、
会話の内容に特筆すべき点はありまセン。

その他は…』


「ああ、わかった。
そんなところで大丈夫。
さあ、行こうか。」


ジャコを通して集積したデータは、
私自身もタイムリーに見聞きしている。


確かに、どの情報もとりとめのない、
他愛のない内容ばかりである。


狭い街だ。繰り返して見覚えのある顔と
すれ違うことはいくらでもある。


それでも違和感を感じる私に対して、
ジャコは中立だ。私の感じる違和感も含めて
集積した情報を広く解析し、「平均」をとることで
観測員」としての私の判断のバランスを
とってくれている。


――そろそろ潮時なのかもしれない。



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しばらく歩くと、
彼は車通りの多い交差点で立ち止まった。
昨日も足を運んでいた「あの交差点」だ。


私を含めた数名が、横断歩道の手前で、
信号が青に変わるのを待つ。



彼はいつものように、
そこにいるのが当たり前のような顔をしていて、
信号が青になっても構わず立ち止まったまま、
懐中時計に目をやっていた。


私が信号を渡り終えて振り返ると、


ふと彼と目が合った。
彼は老婦人に向けていたあの笑顔で
軽く会釈をした。


私は何をしているのだろう。
早く書き上げなければならない報告書が
山積みであるにも関わらず、
無駄に時間を過ごしていたようだ。 


こちらも会釈を返して帰路につこうとした、
その瞬間だった。



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――グシャッ


乗用車が、電柱にめり込むようにして
突っ込んだ。ひしゃげるボンネット、
砕けて飛び散るフロントガラス。


大きな音を生じたはずだが、
一瞬の出来事で、不気味なほどに静かに感じた。
その場にいた全員が呼吸するのを思い出すと
同時に、止まっていた時間が動き出す。


響き渡る叫び声。
私は無意識に、ポケットの中の地球のデバイス
「スマートフォン」に手が伸びていた。


『問。管理者ヒマジン、
いったい何をする気ですカ?』


「救急要請だよ、ジャコ。
現地の地球人なら自然な行為だ。
彼らに擬態(ぎたい)する上では
必要な行為だろう?」


『――ハァ。仕方ありませんネ……。』


ジャコは呆れたように応えると、
近隣施設にあるAEDの場所を一覧にして
「通信装置(メガネ)」に送信してくれた。


駆け寄ってくるのは医療従事者だろうか。
それとは対照的に、我関せずと言わんばかりに
早足で通り過ぎる人々。



また、一定の距離を保って
様子をうかがう人だかり。


土地勘のない私よりも早く
近隣住民がAEDを持って駆け寄ってきた。
こういう場面での地球人の連帯感は
やはり目を見張るものがある。


けっきょく私が対応したのは、
救急要請の電話のみだった。


……観測員としての立場からすれば、
私にできうる最大限の対処だったと
いえるのかもしれない。


人々が各々の時間の流れに身を投じる中、
彼の時間だけは、信号待ちのその時から
変わらず止まったままに見えた。



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🚨《論理制御知性体J.A.C.O》より通知⚡️

《論理制御知性体J.A.C.O》/通称:ジャコ



混乱する交差点。しかし、
その喧騒から切り離されたように、
彼はただ、そこで微笑んでいましタ。

​報告書の全貌は『TALES』にて公開中デス。
総員、ただちにアクセスせヨ!

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