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「何かあったら何でも言ってください」と言われても、何を聞けばいいのか分からない

開発会社に相談する前に、「質問を整理してから」「もう少し調べてから」と準備を重ねているなら、いったん手を止めてください。何を聞けばいいか分からないのは、あなたの勉強不足ではありません。「何でも言ってください」としか言わない、開発会社側の問題です。相談は、聞くことが決まってからするものではありません。

こんにちは。システム開発会社でCOOをしているaki.mといいます。経歴は総務・労務と経理で、コードは書けません。
今日は、うちの業界の常套句を、業界の中の人間が「あれは機能していません」と言う話です。

なぜ「何でも言ってください」と言われると、何も聞けなくなるのか?

「何でも」は、実は一番難しい注文

商談の締めくくりや、問い合わせページの定番文句に「何かあったら、何でも言ってください」があります。うちも言ってきました。善意の言葉です。嘘でもありません。

ところが。発注者の側から見ると、この言葉はほとんど機能していません。
理由はシンプルで、相手(開発会社)に何ができるのかが分からないと、質問は作れないからです。「何でも聞いていい」と言われても、何を聞いたら的外れなのか、どこからが失礼なのか、そもそもこの会社はその領域をやっているのか。判断材料がゼロのまま「何でも」と言われるのは、白紙の地図を渡されて「どこへでも案内します」と言われるのと同じです。

実際、商談の現場では「そもそも何を相談すればいいのかが分からない」という声を何度も聞いてきました。専門商社のDX推進を任された方が、開発会社に相談する前にAIに何度も質問を重ねて、独学で調べ続けていた、という話もあります。相談したい気持ちはあるのに、踏み出せない。

商談で悪い印象にならない。だから、たちが悪い

ここで正直に、開発会社の中の人間としての実感を書きます。

「何でも言ってください」は、本質的な受け皿としてではなく、慣例的な・社交辞令的な言葉としてしか機能していません。でも発注側からしたら、本当に相談したいんですよね。相談どころか、このプロジェクトをきちんと完結させたい。

ここに温度差があると思っています。開発側は「何でも相談に乗りたい」から言っているのに、なぜか「相談したい側である発注者が、相談したくなったら相談してくる」という構図になっている。変な話に聞こえるかもしれませんが、発注者の方々からしたら、相談したいことがあっても、相談すること自体に敷居がある。これが本質だと思います。敷居は下がるどころか、不明瞭な壁ができ上がっているのではないかと。

そして厄介なのは、これが商談の場だと「なんか上手くまとまったみたい」になることです。実際、自分が商談に入っていて「何でも相談してください」と言ったとき、悪い印象にはならないんですよ。むしろ場は丸く収まる。悪い印象にならないからこそ、この言葉は誰にも疑われないまま使われ続けている――そこが一番の問題だと思っています。

質問できないまま、何が起きるか

以前の記事(値段じゃなかった。DX投資の稟議が"通らない"本当の理由)で書いた商談でも、根っこは同じでした。窓口の担当者の方は前向きだったのに、開発会社に何を聞けばいいのかが分からないまま社内説明に向かい、決裁に必要な材料が揃わなかった。質問できないことのコストは、質問した瞬間ではなく、その後の社内で発生するんです。

担当者の方が悪いわけではありません。「金額まわりの細かいところが、自分の中でぼんやりしている」と引け目を感じて、質問そのものを飲み込んでしまう方は本当に多い。ぼんやりしているのは当たり前です。初めての発注で、相手の守備範囲も分からないんですから。

開発会社側は、本当は何をすべきなのか?

「何でも」ではなく「うちは○○が得意です」と先に言う

答えを言います。先に具体を出すべきなのは、開発会社側です。

「何でも言ってください」ではなく、「○○ならうちは得意です」「△△のような相談を最近よく受けています」と、守備範囲と得意技を先に見せる。発注者はそれを見て初めて、「じゃあ、うちのこの業務も相談していいのかな」と質問が作れるようになります。質問は、相手の輪郭が見えて初めて生まれるんです。

これは「何でもできます」と広く見せる話とは逆です。むしろ「何でもできます」と言う会社ほど何が得意か分からなくなる、という話は以前の記事で書きました。あちらは会社の選び方の話。今日は、選ぶ前の「相談の始め方」の話です。

言った以上は、うちも言います

で、これを書いた以上、うちが言わないわけにはいきません。

うちであれば、そりゃあ開発会社ですから、一般的なWeb開発が得意です。ですが、モバイルのネイティブアプリ(いわゆるスマホアプリ)などはそこまで得意ではありません。IoTのような実機に組み込む開発も、経験が浅いです。一方で、倉庫系のシステムは結構やってきたので得意分野のひとつですし、基幹システムや在庫管理システムなども経験値は高いと思います。

技術的な詳細でいうと、バックエンド・フロントエンド(システムの裏側の仕組みと、画面側の作り込みのことです)が一番強いですが、最近では特に、AI駆動開発でのスピード開発や、AIを導入したプロダクト開発の知見が強いですね。AIプロダクトですと、AIエージェント的な開発(人の代わりに一連の作業をこなすAIの仕組みです)や、OCRなど文章をデータ化するシステムの構造などです。

細かく話すと「もっとこういうことが得意」「ここはうちの得意分野ではない」などいろいろあるのですが、この記事のメインではないので割愛します。

――と、こういうことです。得意なだけでなく、「そこまで得意ではない」まで言う。ここまで出して初めて、発注者の側は「じゃあ、うちのあの業務は相談していいやつだ」と判断できるようになります。こうした開発会社の得意分野を、まず聞くことが大事です。そして開発会社の側も、自社を強く打ち出したければ、発注者に自分たちの強みを言語化して伝えられることが大事です。「何でもできます」は、全然刺さりません。

発注者は、何をどう伝えればいいのか?

とはいえ、開発会社が全社「先に具体を出す」ようになるのを待つわけにもいきません。発注者側でできることを、手順にします。

手順1:質問を用意しない。困りごとを"現状のまま"話す

質問リストは要りません。用意するのは質問ではなく、現状です。

  • いま、何に困っているか(例:毎月の集計に2人がかりで数日かかっている)

  • いま、それをどうやっているか(例:紙とExcelで、最後は手で転記している)

  • 何が起きたら嬉しいか(例:転記がなくなって、数字がすぐ見られる状態)

この3つを、専門用語ゼロの日常の言葉で話せば十分です。それを「システムで解ける形」に整理し直すのは開発会社の仕事で、課題の整理から一緒にやるのは相談のうちです。「まだ何も固まっていないんですが」という枕詞は、実は開発会社側にとって一番相談しやすい入り方だったりします。

手順2:「御社は何が得意ですか」と、こちらから聞いてしまう

相手が先に出してこないなら、こちらから出させましょう。聞き方はそのまま、「御社は何が得意ですか」「うちのような相談は多いですか」でいいです。

ここで具体的に答えられる会社は、自分の守備範囲を分かっている会社です。逆に「何でもできますよ」で返ってくるなら、少し注意して聞いてください。この質問は、相談の入口であると同時に、会社を見極めるリトマス試験紙にもなります。

手順3:目的を先に渡す ―「稟議を通すために、こうしたい」

もうひとつ、先に渡すと効くのが社内の事情です。「上に説明する必要がある」「稟議を通すには数字が要る」――ここまで言ってしまっていい。

発注が決まるかどうかは、担当者の熱意だけでは決まりません。担当者が社内を説得するための材料を、開発会社側が用意できるかどうかで決まる場面が多い。だとすれば、目的を先に渡された開発会社は、あなたの社内説得を手伝う側に回れます。「こんな社内事情まで話していいのかな」の答えは、話していい、です。むしろそこから先の資料づくりや説明の組み立ては、開発会社を巻き込んだほうが早い。相談の敷居を取っ払うことは、開発会社を"稟議の協力者"に変えることでもあるんです。

まとめ:相談は「決まってから」ではなく「決まっていないから」する

  • 何を聞けばいいか分からないのは、あなたのせいではない。開発会社が具体を先に出していないから

  • 質問リストの代わりに、現状(困りごと・今のやり方・嬉しい状態)をそのまま持っていく

  • 「御社は何が得意ですか」はこちらから聞いていい。答え方で会社も見極められる

  • 「稟議を通したい」という社内事情こそ先に渡す。開発会社は協力者になれる

なお、相談の入口にはもうひとつ大きな不透明があります。「で、これ、どこから有料なの?」という料金の話。これは明日の記事で書きます。

よくある質問

Q. 契約するか分からない段階でも、NDA(秘密保持契約)は結んでもらえますか?
A. 結べます。契約前でもNDAを締結してから話す、というのはごく普通の進め方です。業務の中身や社内事情を話すのに不安がある場合は、最初のメールで「NDAを結んだうえで相談したい」と書いてしまって問題ありません。それを渋る会社とは、その先の話も進めにくいはずです。

Q. すでに専用ツールを入れているのですが、それでも相談する意味はありますか?
A. あります。というより、その状態こそ相談に向いています。すでにあるツールで足りている部分を作り直す必要はなく、ツールの外に残った手作業や、ツール同士のすき間こそシステムで解く価値が大きい部分です。「今こういうツールを使っていて、ここが残っている」という現状の共有から始めてください。

Q. 作ってもらったシステムの著作権は、誰のものになりますか?
A. 契約によります。だからこそ、これは遠慮せず最初に聞いていい質問です。成果物の権利がどちらに帰属するか、他社への流用があり得るかは契約書で定める事項なので、「著作権はどうなりますか」とそのまま聞いてください。きちんとした会社なら、聞かれて嫌がる質問ではありません。


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「そもそも何を相談すればいいのかが分からない」――この記事は、その言葉から生まれています。私たちテックビーンズは、その段階の相談こそ歓迎です。課題の整理から一緒にやりますし、契約前に実際に動くプロトタイプを無料で作って、"形になるもの"を見てから判断していただくサービス(ゼロスタート)をやっています。質問が決まっていなくても大丈夫です。
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株式会社テックビーンズ COO。総務・労務・経理出身の非エンジニア。システム開発を「発注する側と同じ目線」で書いています。


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