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紅白歌合戦と「名前のない世代」

新年最初のポストで人生初めての万バズをした。

元のポストは「年寄りか若者しか紅白出てなくて、30代40代が全然いなくて、会社みたい」(削除済み)という内容で、それに対して「いや、事実30代40代の人たくさんおりますよ」と、具体的なアーティスト名を挙げて反論した。そしたら思いの外たくさん反応があった(ちなみに私はこういう反論をするときに引用リポストを使用しません、理由は以下のnoteに書きました)。

ただ、事実の正確さに欠けるとはいえ、元ポストの言いたいこともわかる。
本当に重みがこもっているのは「会社みたい」のところなのだ。
本人が会社にいる時に感じた気配が、紅白見てたらなんだかダブって見えた。ファクトがどうかに関わらず、会社と同じ雰囲気を感じ取った。そういうことだと想像する。

会社にいると、30~40代が空洞で、若者と50代以上しかいないという実感がある。
それを、紅白歌合戦の雰囲気から感じ取ったのだろう。私にもその実感はある。

さらにいうと、ここで言われている「30代40代」は、30代前半や40代後半ではなく、35~45歳あたりの年齢の人を指すように思える。
中堅世代の不在を、実際にはサカナクションやback numberやRADWIMPSなどの世代ど真ん中の人々が出ているにもかかわらず、紅白から嗅ぎ取るのには、別の理由がある。

世代に名前がついていないのだ。

最近ならZ世代やα世代、その前であればゆとり世代など、それぞれの世代には名前が付けられてきた。それ以前にはロスジェネ世代もあった。

しかし、40歳前後の世代には名前が付けられていない。ロスジェネ世代とゆとり世代の間の空白がある。

くくり方に多少の差異はあれど、ロスジェネ世代は1971年から1982年生まれあたりの就職氷河期を体験した世代をさす。ゆとり世代は2002年度施行の学習指導要領による教育(=ゆとり教育)を受けた世代、1987年生まれから2004年生まれを指す。

つまり、1983年から1986年あたり、2025年に42歳から39歳だった人々は社会から名前を付けられていない。
空白の、「名前のない世代」である。
彼らは名前を付けられなかったことで、人々の意識の中で存在感が希薄になる。
しかも、ある程度の規模の会社の中では、若手の勢いや向こう見ずもなく、かといってベテランほどの権力を持たない、中途半端な立場におかれる。
現在50代の団塊ジュニア世代の人口層が厚い分、昇格のチャンスが降りてこない、宙ぶらりんな場所にいる。

紅白歌合戦におけるRADWIMPS(現在のメンバー2人は1985年生まれ)やback number(3人のうち2人は1984年生まれ、1人は1985年生まれ)のパフォーマンスは、悪いものではなかった。むしろ良質な演奏と楽曲表現を見せていた。
しかし、人々の話題に多くあがるのは、矢沢永吉や布施明や玉置浩二などの60~70代の大御所歌手か、米津玄師やMrs.GREEN APPLEやちゃんみななどの下の世代のパフォーマンスである。大御所と若手が語られるのに対し、中堅は語られない。十分にファンがいて、下の世代からも尊敬されているにもかかわらず、存在感が希薄になる。
(紅白において上の世代の層が厚くなっていることは、以下の記事でデータから分析されている)

この状況は、パフォーマンスの優劣に還元できない。構造的な原因に因るものである。
なにせ社会全体が同じ傾向を持っている。高齢化社会のなかで、衰えを見せないベテランが増える。若手には新鮮さがある。その間の世代は、商品価値を高められないまま燻っていく。
価値を生み出すことが、非常に難しい立場に置かれている世代。世間で通じる名前がないということは、商品価値が低いことと同義だ。
そりゃPerfume(2人が1988年生まれ、1人が1989年生まれ)だってコールドスリープして画面から消えるわけですよ…。

私のポストは、大したことはいってない。一つの見解に対する簡単な反例を列挙してみただけだ。
それが1万人以上の人に反応を起こした遠因には、紅白歌合戦が注目度の高いイベントであることと同時に、「私たちを忘れないでほしい」という世代の声を代弁する機能を有したことにあるように思う。
期せずして、世代間の亀裂という、誰もが無関係ではいられない話題に抵触したのだと思う。



この文章を読んで「全部世代で語るなや。同じ世代でも人それぞれ全然違う体験しているやんけ。紅白とそれぞれの職場だって違うものだし、直結させるのやめろよ」と反発する人も沢山いるに違いない。俺もかつてはそう思ってた。
でも、一つの世代に共通の条件や体験があるのも、また確かなことだよなとも考えざるを得ない。年を重ねるうちに、だんだんと世代の重みを感じるようになってきた。

2025年M-1決勝でドンデコルテ・渡辺銀次(1985年生まれ)が放った「40歳独身、厚生労働省の定めた基準によると貧困層に属します。私はこんな自分と向き合うのが怖い」は、「名前のない世代」の重みをぶつけた渾身の一撃だったと思うわけです。



(このあとはよりどうでもいい話になるので、メンバーシップ以外の人は無視して下さい!奇特な人はようこそ!)


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