プロが教える。「ミュージシャンのインタビュー」の読み方
先日、米津玄師さんにインタビューを行いました。
媒体はGQ JAPAN。海外のGQでも展開されている、Web限定シリーズ「GQ HYPE」の一環です。
米津玄師さんにインタビューするのはこれが2回目となりますが、いい機会なので、この記事では仕事論やライターの技術論としてではなく「ミュージシャンのインタビュー」はどうやって作られているのかという話を書きたいと思います。
この記事を読めば、普段読んでいるインタビュー記事がどのように作られているのかだけでなく、インタビュー記事のより深く楽しい読み方がわかるようになる。そんな内容にしたいと思います。
(当たり前ですが、実際の記事に書かれていないカットされた発言などは含まれませんので、その点はご了承ください)
筆者プロフィール:照沼健太
編集者・ライター・YouTuber。テレビ東京やNetflixのメディア運営、レディオヘッドら数々のアーティストのCD封入解説文、HIKAKIN、米津玄師、押井守、藤本タツキなどのクリエイターや多くのビジネスパーソンの取材を担当。2023年末からはYouTubeチャンネル「てけしゅん音楽情報」を運営(2025年9月末時点でチャンネル登録者数約6万人)。
1.そのインタビューは何のためなのか?

僕は今回の記事にインタビュアー/ライターとして関わりましたが、編集者としての顔も持っていますので、より広範囲な視点からお話ししたいと思います。
基本的にインタビュー記事は目的を持って作られます。
インタビュアー側もそうですが、インタビュイー(取材される人)も無限に時間を持っているわけではありません。お互いにメリットがなければ、インタビューは成立しません。
例えば僕が最初に米津玄師さんにインタビューさせてもらったこちらの記事。これは「地球儀」リリース時の記事で、それも配信ではなくCD盤発売タイミングでの取材となりました。今回の記事も映画『チェンソーマン レゼ篇』公開と「IRIS OUT / JANE DOE」リリースタイミングです。
ミュージシャンの取材はほとんどが作品のリリース時、あるいは主題歌を提供した作品の公開タイミングに行われます。
K-POPの世界では、グループが活動休止していたわけでもないのに「カムバック」という言葉がよく使われますが、これはまさに「リリースタイミングでの一連の稼働」を表す言葉です。
つまり、前提として、ポップ音楽におけるインタビューとは、基本的に宣伝活動です。しかし、「楽曲制作→宣伝→リリース→購買/視聴」のサイクルでまた次の新しい音楽が世に生み出されていくことを考えれば、 広い視点からはインタビューもまた重要な制作・創作プロセスと捉えることもできます。
例えば、映画が売れなければ、次の映画を撮ることはできません。だから映画監督やキャストの方々はインタビューや全国を回る舞台挨拶に頑張るわけです。
2.インタビューは商業活動であり、それ以上でもある

2025年において、インタビューが宣伝活動の 一環であることにガッカリする人はもういないと思います。
というのも、2000年代くらいまでは「音楽雑誌に掲載されているインタビュー記事は、レコード会社やアーティスト側が雑誌広告を出稿する代わりに作られている。芸術を冒涜する商業行為だ」みたいな意見が結構あったんです。作品を販売すること自体が商業行為なので前提からして間違ってるわけですが、CDがとんでもなく売れていた時代なので、リスナー含めみんな感覚がおかしかったんです。僕もそうでした。
しかし、だからと言ってインタビューする側も、される側も「はい、宣伝宣伝」と思ってやっているわけではありません。
せっかくインタビュー記事や映像を作るならば、そこから何かを生み出したいし、そこで話される言葉に触れた読者や視聴者の方々にも楽しんでほしいし、何かを感じてほしい。そう真剣に考えて向き合っています。
以前に投稿した、同業者向けの「インタビューの作り方」記事でも、僕はまず「誰が読者で、彼ら/彼女たちが何を求めているのか。彼らに何を提供できるのか」を考えるべきだということを書きました。
みんながみんな有限な時間を使って読んだり観たりしてくれるわけですから、インタビュイーだけでなく、読者/視聴者へのリスペクトを持って仕事に臨むのは当然です。
3.「取材日」という枠組みと複数メディア

さて、そうして作られるインタビュー記事ですが、こう感じたことはないでしょうか?
「こっちの記事でも、以前に読んだインタビューと同じことを話しているな」。
これはインタビューあるあるです。そもそも人間は同じことを何度も言う生き物なのですが、それだけでなくこれには「取材日」という概念が影響しています。そして、実はこれこそがインタビューをより楽しむためのポイントでもあります。なぜかというと……
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