雨宿りのコンビニ【シロクマ文芸部】
雨宿りがしたかった。
私はコンビニの軒先に駆け込む。
制服のスカートの裾が濡れている。
雨が降るなんて、朝の天気予報で言っていただろうか。
でも、大粒の雨が、涙の跡を消してくれたのは、助かった。
母には見せたくなかったから。
隣には、知らない男の子がいた。
私も相当高いけど、私よりも背が高い。
でも、顔つきがあどけない。
私と同じ中学生くらい?
小さなゲーム機のようなものを片手に持ちながら、ぼんやり雨を眺めている。
すごい雨だな。
俺は傘を持ち歩かない。
傘をさしたら負けだ。
でも、これはさすがにないな。
俺は、コンビニの屋根の下でスマホを取り出し、途中だったゲームの続きを始めた。
「すごい雨だね」
いつの間にか隣に立っていた女の子が突然声を掛けてきた。
「え、あ、うん。」
「ねえ、それ、何?」
「え?何が?」
「ゲーム機?すごく小さいね。」
俺は戸惑った。
俺が手にしているのは、ごく普通のスマホ。
どちらかと言うと、少し大きめで、俺の手にしっくりくる。
「え、あ、うん。」
女の子は、苦手だ。
不思議なゲーム機を持った男の子は、不自然に笑った。
何だろう。
その笑い方が、何故だか、懐かしい感じがした。
「帰りたくないな。」
無意識に、そう呟いていた。
「え、あ、そうなんだ。」
困った顔をしている。
「今、家が、暗いから。」
何故だろう。続けてしまう。
「あ〜、、、そう、なんだ。」
そう言うと、
男の子はまた、困ったように、笑った。
女の子は、勝手に話し続ける。
これは、あれだ。
こないだ、父さんが言っていたやつだ。
母さんが愚痴っている時には、アドバイスはしちゃいけない。
そうなんだって、相打ちを打つのが正解。
「あ、そうなんだ。」
俺は、ぎこちなく相槌を打つ。
だんだん、女の子が母さんに見えてきた。
どことなく、似ている。
「この、コンビニエンスストアっていうの、便利だよね。」
突然話題が変わる。
コンビニをコンビニエンスストアって言う人を、初めて見た。
「最近できたんだよね。」
何を言っているんだろう?
そういえば、スマホも知らなかった。
「あ、そうだね。」
とりあえず、相槌を打つ。
そういえば、どこの制服だろう?
この辺では、見たことがない。
男の子は、ただ、相槌を打ちながら聞いていた。
私の涙は、すっかり乾いていた。
いつの間にか、雨がやんでいた。
「あ、、、」
男の子が、空を見上げて呟く。
「やんだね。私、行くね。」
「あ、、、」
男の子は、何か言いたげに、ポケットの中を探っていた。
ポケットから出した手を私に差し出す。
反射的に、その何かを受け取った。
「あ、、、元気、出して。」
そして、男の子は走って行った。
手を開くと、どこかのお店の割引券だった。
「丸亀製麺?」
見たことのない名前だった。
使用期限は、2026年7月。
「すごいね。30年以上も使えるんだ。」
私は、ふっと笑うと、その見たこともないお店の割引券をポケットにしまい、歩き出した。
空は、すっかり明るくなっていた。
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