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本雑綱目 104 飯島建男監 ジャパネスク RPG幻想事典 日本編

今回は飯島建男監『ジャパネスク RPG幻想事典 日本編』です。
ISBN-13 ‏ : ‎ 978-4890520251
NDC分類では798。芸術. 美術>室内娯楽。
前提知識必要度(TRPG):★☆☆☆☆
ん? 室内娯楽? RPGだからゲーム用とかいう分類とかなんだろうか。
今回は企画でリクエスト頂いた本を読んでみました。リクエストされた方のリンクを張ろうと思ったのですが、コメントかアカウントを消されてしまったようで、トレースできませんでした。自分です!なご申告をいただければリンクを張ります~。


これは乱数メーカーを用いて手元にある約6000冊の本から1冊を選んで読んでみる、ついでに小説に使えるかとか考えてみようという雑な企画です。時々恣意的に選んでいることもあります。

★図書分類順索引

1.読前印象:飯島建男監 ジャパネスク RPG幻想事典 日本編

 日本を舞台にしたRPGというと桃太郎伝説とか天外魔境、あとは大神あたりかな。妖怪ウォッチとかも含むのかも。和風ものはわりとすきなんだけど、これは分類的にはRPG、つまりゲームに特化したと考えると、また奇妙な特殊世界の門だったりするのだろうか。表紙は多分素戔嗚スサノオ八岐大蛇ヤマタノオロチ感があるけど、あの場面は谷間で海のイメージじゃないから違うかもしれない。
 とりあえず開いてみよう~。

2.目次と前書きチェック

 はじめにを読む。
 最近日本を舞台としたファンタジーが増えている。ブームで終わらず日本の幻想世界の確立を求めたい。RPGは世界を楽しむ手段であり、知る事によって新たなイメージを生むきっかけを作りたい。
 なんか結構目的壮大な本だな。西欧におけるナーロッパのように日本におけるジャパネスクを作りたいんだなって感じ。アーサー王やギリシャ神話を離れて独立のナーロッパという共通世界観を作り上げたように、日本神話や妖怪を離れて独自の共通世界を作りうるものなのだろうか。現地なだけに別途には作りがたい気はする。
 目次を見る。
 『記紀に見る神の時代』、『幻想物語を動かすキャラクター』、『日本に伝わる術のすべて』、『武器・防具・道具・術具』、『日本に棲息する化け物たち』。
 なんとなくTRPGのリファレンスブックっぽいかも。ゲームとしての和ゲーを作る世界観の構成要件とそこに配置可能な魔法・武器・モンスター集みたいな感じ。たとえば術の全ての中身は『日本古来の術』、『中国系の術』、『インド系中国経由の術』、『南蛮渡来の術』、『江戸時代の術』、『その他の大魔術師たち』にわかれる。これはあまりみたことがない切り口だな。
 記紀に見る神の時代から『神々が残した神話』を除く部分(日本神話の本と重複するし知ってるから)、『幻想物語を動かすキャラクター』、日本に伝わる術のすべての中で『日本古来の術』を読んでみます。
 いつも通り前段はまとめ、後段は感想・雑感。

3.中身

記紀に見る神の時代から『神々が残した神話』を除く部分にについて

ーまとめ
 日本神話というモチーフに日本人がどのような死生観や世界観を込めたかを読み取るため、『古事記』『日本書紀』(以下、あわせて記紀)という成文史料の記述に頼りながら記載し、各地の民間伝承や異聞などは紙面の関係で触れないことにする。記紀は為政者が策定した歴史書であることに注意しよう。
 最初に陰陽思想的な天之御中主神あめのみなかぬしのかみが設定された時に一旦は人の形をとるが、天地創造に先立ちどこからともなく現れ以降登場しないまま、世界原理という形で概念的に残っている。その後、高御産巣日神たかみむすびのかみ神産巣日神かみむすびのかみの二神があらわれ、易的思想を展開し乾坤を司り、万物の生成、つまり世界を司った。それから生命・成長を神格化した男神である宇摩志阿斯訶比古遅神うましあしかびこのぢのかみと天の永遠性を表す天之常立神あめのとこたちのかみが現れ、これら五神を別天神ことあまつかみと呼び、彼らによって混沌の高天原たかまがはらが生まれた。
 五神が去って天神の時代が始まり、七柱の天神の最期に伊耶那岐命いざなぎのみこと伊耶那美命いざなみのみことが生まれ、人間の世界を創造した。日本神話は漢籍を多く取り入れているが、その中でこの国生みは最も古い日本独自の神話である。以降神生みの神についての紹介。
 須佐之男命すさのおのみことは高天原を追われ八俣大蛇やまたのおろちを退治する。須佐之男命の六代目の孫の大国主神おおくにぬしのかみ芦原中国あしはらなかつくにを平定した。高天原の天照大神あまてらすおおみかみは子、正勝吾勝勝速日天忍穂尊まさかつあかつかちはやひあめのおしはみみのみことに芦原中国を治めさせようとしたが、土着の荒神が猛威を振るっていた。そのため建御雷神たけみかづちのかみが武力で大国主に国譲りを強制し、大国主神は出雲に引きこもることになった。その結果、正勝吾勝勝速日天忍穂尊の子の邇邇芸命ににぎのみことが支配することになり、以降は神々は人の為政者としての側面が強くなる。

ー感想
 この本にも芦原中国は大国主が高天原に譲ったと書き、その後に武御雷が強引に奪ったような記載があるが、日本神話というか特に日本書紀はVerがたくさんあって、それらが結構相矛盾する。須佐之男命は朝鮮で生まれて草木を運んできたVerもあるけど、これは高天原がどこかという問題にもからんで考古学的なマターだったりもする。最初に陰陽的な神とあるように、日本神話が中国神話等の影響を受けて構成された部分も多い。その影響の切り分けを行ったのがいわゆる明治初期の国学で、そう考えるとこの本の構成というのはなかなか興味深い。明治期に定められたいわゆる国家神道の主神は最初の三神である造化三神に天照大神が加えられたが、これらを推した伊勢派とは別に出雲派は大国主神を加えて五神にすべきと主張していた。こういう流れを時系列に組み合わせれば興味深いなとは思う。
 ざっと目を通した『神々が残した神話』ではおそらく資料としてそれぞれの神のエピソードが収録されているが、これを和RPGの基礎とするには杓子定規すぎる気がするな。それはそれとして日本の神の数え方って柱じゃないのかなと素朴な疑問。

『幻想物語を動かすキャラクター』について

ーまとめ
 この章では代表的な職業を採り上げ、創作されてきたイメージを紹介しつつシナリオで個性を活かすところまで触れたい、と書かれていて、各属性(犬、陰陽師、海賊、禿、からくり師、侠客、公達、公家、虚無僧、罪人、侍、猿、山賊、商人、仙人、僧兵、僧侶、旅の僧、大名、旅芸人、渡来民、捕方、忍者、野武士、バテレン、姫、琵琶法師、山の民、山伏、漁師、牢名主、浪人、童)のテンプレが紹介されている。全部書くときりがないので、侍、仙人、忍者を紹介。
 侍は尤も主人公的キャラクタで敵役にも良い。もとは公卿の荘園を守る私兵だったが財力を蓄え影響力を強め、支配的身分となる。一般的な姿は頭髪の毛髪を剃り落とし鬚をはやす。服装は戦国以前は羽織袴に脚絆、江戸時代以後は羽織袴又は着流しで、旅に出るときは脚絆、足袋、草鞋が加わる。戦国以前は学があっても基本的に戦士だったが、江戸時代以降は行政官を兼ねるようになった。侍が旅に出るシチュエーションは武者修行(道場をめぐり師と友を求め、道すがら冒険にぶつかる)、仇討ち(仇を求めて諸国を回り、仇に死なれたり出家されたりして目的が変わる可能性がある)、逃亡(追っ手を撒く必要があり、信用できる道連れがなかなかできない)がある。侍の強さと武器は剣術をはじめ武芸に秀で、未熟でも修行で補う根性がある。弱点は正直さと人の好さであり、これがもとで不必要なもめごとに巻き込まれることがある。誇りが高く駆け引きが下手だ。敵として困るのが女性、勘違いして襲ってくる仲間、狂犬病の犬、忍者、鉄砲撃ち。矢は刀で避けられる。具体例は赤胴鈴之介が適切で、正直でお人よし、必殺技がある。必殺技は体術と剣術の延長であればなんでもいいが、正々堂々戦わなければならないというハンディがある。
 仙人は西洋のRPGの魔法使いに近く、何を考えているかわからない遊び人で飄々とした雰囲気を持ちながらもいざというとき役に立つ頼もしいキャラ。何千年も生き体力や腕力には期待できないが仙術で十分カバーできる。仙人は2タイプにわかれ、一つは道教の神仙に基づく不老長生の妙薬を授ける神、もう一つは仏教の仙人で主に我々が仙人と呼ぶのは仏教の仙人だ。仏教では仏道に入って修行して僧になり、仏道以外で修行した者が仙人となる。仙人は白い着物で杖を手にする男の老人がテンプレだが、日本霊異記には女性の仙人もいる。他に役小角は仙人、山伏、忍者の租とされるが、実際仙人が何の修行をしたのかは定かではない。
 忍者は西洋に当てはまるステレオタイプはなく、海外の作品では武闘家タイプの戦士と扱われる。近年外国映画の忍者は西洋人の解釈で作られていて、車を手で止めて銃で撃たれても死なない。武器も魔法(忍者)も使いこなし、盗賊以上に盗みが得意で医学雑学にたけている。忍者の特徴は陰でしか活躍できないスパイに近い存在だ。組織では命令を下す上忍・現場監督の中忍・実行役の下忍にわかれ、一般にはこの下忍を忍者と呼ぶ。敵地に忍び込み、忍道具や忍術を使って任務を遂行する。裏切らないように家族を人質にされることがある。忍者の掟は厳しく、目的達成のためには仲間を仲間と思わない非常集団で、一般社会から完全に独立して組織の情報が洩れることを極端に嫌う。主な掟は①忍術を私利私欲に使用しない、②忍者と知られるな、③死んでも任務を遂行する、④拷問に負けるなら死ね。掟を破り自由を目指す者も少なくなく、総力を挙げて死の制裁を加える。他、忍者の地域別の詳細について。

ー感想
 これ、キャラシート作成用の参考書籍。侍や忍者の一般知を集めるとこうなるのか、っていうところでなかなか興味深かった。とりあえずこの設定を一般知識とすれば追加の説明がいらず、ここに乗っていない設定をとりつける際の指針になる、みたいな。けれどあくまで一般知で、事実と異なるところも多い(いや、仙人の実在性とかはともかくとして)ので歴史マター的には色々ともやもやするが、これは和RPGでファンタジーだからオッケ。西洋の歴史と違うとナーロッパに文句をつけても仕方がないのと同じ理屈と思う。何故かジャガイモは除かれがちだけれど。
 チョイスとして罪人はどうなのかと思わなくもないんだけど、これ多分、キャラクター選択画面で出て来うるもののチョイスと考えると興味深い。Wizardryとかでパーティ組むならタンク(僧兵)、アタッカー(海賊、侍)、回復(僧侶)、魔法使い(陰陽師)、盗賊(からくり師、高級職で忍者?)とかかなぁ。RPGだとパーティ前提だし、思ったよりゲーム構文にのせようとしてる感じ。そうするとシステム構築自体は西洋RPGに乗せている気はする。最初のテレビゲームとしてのRPGは確かローグ(単独プレイの不思議のダンジョン)、ウルティマ(RPG)、Wizardryときてドラクエだった気がする。

『日本に伝わる術のすべて』について

ーまとめ
 魔術というと万能の力のイメージが強いが、東の果ての日本では常に大陸の文化・技術が流入し、つまり新しい知識自体が最大の力で、術としての知識と武器としての言葉が西洋の魔術に代わる力の象徴だった。それとは別に固有の魔術もあり、海外魔法と合わさって江戸時代で集大成を迎える。日本古来の術は「言霊」で、書かれた文字には宿らない。文字の場合は筆又は字の魔術となる。
 言霊を引き出すには「歌」と「名」の2つの方法がある。歌の力を最初に使ったのは須佐之男命で、出雲の繁栄を韻律をもった言葉によって引き出そうとした。以降、英雄は事あるごとに歌を詠み、万葉集の古い歌や東歌にはその名残がある。恐山のイタコのように現在まで残るものもあるが、言霊の力が弱まってくれば文字によって物事が歴史として残されることになった。名は名の主に力を与える。倭建命やまとたけるのみこと熊襲くまそ征伐では自らの名の建(勇者)を譲り渡す。また須佐之男命は訪ねた大国主神に芦原色許男あしはらのしこおという卑しい名も与え、不運や凶事が悪い名がひきつけて本人に影響しないようにした。
 縄文時代の土器・土偶は類感魔術に属し、姿形の似せたものがオリジナルの力を吸ったり影響を及ぼしたりする。巨石・大樹は接触することで目的を達成しようとする呪物であり、その不動の性質を永遠の繁栄の力とした。弥生時代の銅鐸は大和朝廷にも中国の古記録もなく、東南アジアの銅鼓との類似から魚を集めたり多数の銅鐸を共鳴させてトランス状態を招く共鳴器ではないかという説がある。また、発見された銅鐸はほぼ破壊されていることから、甲骨のように破壊して割れ方で吉凶を占ったのではという説がある。
 山中に魔力があると信じられ、これを求めて山岳魔術が生まれた。仙人・鬼・巨人・夷等は術として完成されていない修験道の姿を伝える。飛鳥から奈良時代に仏教・道教の中国魔法の体系の影響を受けて山岳魔術は成熟する。修験道の術体系の確立は役小角えんのおづぬから始まり、医術を生業とし、飛行術や鬼神を操る術を修める。平安時代になると修験道は全国に広がり、鞍馬の烏天狗は武家勢力と縁を結び牛若丸(義経)を弟子とし八艘飛はっそうとび等を教えた。修験道は鍛冶職人集団の信仰を集め、鍛冶・鉱山開発・商業等の知識が修験道の魔術に加わる。修験道は南北朝を境に分裂し、江戸時代には幕藩体制に編入され、民間医療や呪術信仰の専門家として各地の村落に密着する山伏となる。
 この術体系を取り入れたのが忍術である。諜報要員としては聖徳太子の時代の細人(多分大伴細人おおとものほそひとのことかな)として記録があるが、忍術は戦国時代に発展する。幻想世界に忍術は歴史に記録されたものに限らず、講談忍術(詐欺)もあるが、講談忍術では徳の高いキャラは騙せない。代表的な忍術には火遁、水遁、土遁、木遁、人遁(分身、木の葉隠れ)がある。

ー感想
 名前忘れたけど中国の民間の歌にも同様の声の太さや高低で表す呪術的な歌があったはずなんだが、名前を忘れた。なんだttけな。フレーザーの類感魔術・接触魔術分類使ってるあたり知識としてはちょっとざっくりしすぎてるところがあるけど、この本は専門書じゃなくてガイドラインを作るための一般知集積の本だからきっと何も問題ない。
 それにしても日本は確かに大陸からきた呪術なんかをごちゃまぜにしてオリジナル体系を作るという魔改造を昔からやっていたわけだが、その視点が日本のエア呪術界(たぶんそんなものはないような気はするものの)においてどのような影響を与えてきたかという構成はなかなか興味深い。中国の道教、インドの(?)仏教や密教、バテレンの南蛮妖術が次々と訪れるたびに日本はごちゃまぜにして、最終的に天道思想にひとまとめにしたけれど、一度はそこに統合したキリスト教は蹴りだしながら、蘭学という形で科学な魔法をフィードバックさせる傍若無人ぶりは確かに世界に類を見ないムーブで、逆に言えば日本では多重的な魔法理論を展開できるわけなのでこの辺を突き詰めれば面白そう。
 なおこの項は純粋に日本ベースで発展した呪術の紹介で、中国の影響が多い陰陽道や風水に基づく呪術は別項目に記載されている。この章は全部読んでみたんだけど、陰陽道なんてごちゃまぜの極み過ぎて中身がよくわからんとこあるものの、それは修験道も同様なので、修験道は固有、陰陽道は外来という分類はなんとなくピンとこない。中国は春秋戦国に陰陽家は発生したけれど、おそらくそこから陰陽術としてはたいして発展していない記憶なんだ。中国本国の道教(仙術といってもいいかもしれん)も同一性がないほど変遷してはいるのでもともとといえばもともとか。

まとめ

 全体的に、この本は情報の正確性にあまり重きをほとんどおいていないという点で稀有というか珍しい本である。一番しっくりくるのが和風TRPG設定集。つまり本でも資料でもなくゲームツールな感じ。本当っぽいところと完全フィクションなところがRPGという新たな世界観の中で混然一体に紹介されているところが僕にとってはとても奇妙で面白く本で、且つ新たな分類方法を提示したとても興味深い不思議な本。そんなわけで、和風ファンタジーでの安心を求める資料にするならよいのだけれど、これをもとに歴史や民俗を描こうとするにはちょっと待てと言いたい本。丁度良く浅く広い辺りは悪くないし、一般的な認識を把握する物差しになりそうな、やっぱ変な本。芦屋道満を存在する者として書いているあたりが信憑性の試金石になる。
 小説に使えるかというと、この考え方はとても使える。キャラの役割を明確に意識する必要を把握した。今よそで書いてるデスゲを他に転載するときは大幅にキャラ立ちを意識しようと思っていたのでちょっと参考になった。
 でもこれは応用的な使い方だと思うので、この本の内容自体は和風ファンタジーを書くのには役に立つかもしれないけれど、基本的にここの想定しているキャラクタは主人公に自己投影するタイプのドラクエライクなモブ主人公用でしかなく、えーとでも神とかモンスターの一般知としては使いやすいかもしれない(まとまらない。

4.結び

 とても奇妙な本を体験させていただき、リクエストいただいた方に感謝です。世の中いろんな目的があるものだな。そう考えるとタイトルは若干ピンポイントではないかもしれない。
 次回は『国立歴史民俗博物館研究報告 132』です。
 ではまた明日! 多分!

リクエスト企画

 蔵書が6000冊に達したので、読む本を5冊までリクエスト受け付けます。残り4冊分。↓にDBの短縮URLをおいているので、リクエストがあればこちらからご連絡ください。

★似たテーマの本
ピンポイントに似たテーマの本はないので、とりあえず陰陽道のチャラ系の本。

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