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【短編小説(短編連作)】春崎夜道の『夜散歩』なXmas 3 近寄らない一定の距離 1000字

[HL:どうしようもないことって、あるんだ]

「じゃあ私、クリスマスの日に大岳のラボに遊びに行きます。真っ赤なサンタさんの服と帽子で。今年はサンタコスに決めました」
 ああ、自分で言ってて何て色気がないんだろって思う。
 こういうのも売り言葉に買い言葉っていうのかな。クリスマス当日はFM神津のイベントで、パーソナリティは交代でチャリティーに参加するんだ。バザーの手伝いとかプレゼントの配布とか。去年は綺麗めの服を着てとても寒かったのを思い出す。赤い服は色々あるけど、これ見よがしなあの帽子は、私がラボに存在していい理由になるはずだ。
「それにその日なら奏汰さんはいないでしょうし」
 奏汰さんは少し困った顔をした。それで小さく手を振った。
「じゃぁ、また。それとも寄ってく? 夜道ちゃんも」
 それで見上げて、大岳の研究室のある建物の前だと気づく。随分ゆっくり歩いてたんだ。慌ててスマホを見れば4時。

「奏汰さんごめん、寝る時間無くなっちゃうね。こんな時間だし帰るよ。つきあってくれてありがとう」
 そう一息で呟いて、街灯の光の列を追いかけるように逃げ出した。
 大岳のラボは奏汰さんが働いてる病院と住んでるマンションの間にあって、家に帰る時間も勿体ない時は気軽に仮眠に寄ってく。友達。その関係の変わらなさが羨ましい。
 次の門で曲がれば実家はすぐで。今は私しか住んでいない玄関の鍵を開けていれば私の口から呼吸と共に夜の冷気に白い煙が逃げていく。私の言葉はため息と何が違うんだろう。
 駄目駄目。気にしたって駄目なんだ。
 どうせ大岳は私を好きになったりしないわけだし。私はもう、それがすっかりわかっちゃってるし。かといって他の誰かを好きになるつもりもない。その程度には今の関係は快適で。何故なら大岳が他の誰かを好きにならないことも知っているから。
 ぬるま湯みたいなこの関係は、いつか終わりがくるんだろうか。冬の寒さが私を冷やしていくように、いずれ冷え切って分子は運動を停止するのかな。けどそれを少しばかり期待していても、夜が明けて温度が上がった昼間なら気兼ねなく遊びに行けている。いつも大岳が好きなお菓子を持って、たまにはお菓子を買って来いといわれるし。この振り子みたいな心地いい関係は、何ももたらさない虚無と同じだなってたまに思う。
 ああ、駄目だ。なんだかセンシティヴになってるな。
 とりあえずもう、今日は寝よう、寝てしまって、温まるのを待つしかない。全てが。

to be Continued….

★次の話

#いつきちゃんのアドベントカレンダー
#サンタクロースの帽子
おじゃましますー。なるべく毎日、神津を中心に夜道ちゃんが主人公の話を書いてみようかな的な。途切れたらそれまで。

★似た系列の話

あれ。大岳の話って全然持ってきてないのか。とりあえず神津区の話を上から順に載せてみよう。ライトコメディSFですー。神津には宇宙人も怪人もいる。

#小説 #短編小説 #ショートショート #私の作品紹介 #創作大賞2026 #恋愛小説部門


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