【短編小説(道の詩)】真っ白な道 1000字
[HL:ここじゃないどこかとここであるどこか]
霞がかかった道無き道を歩いていた。
とは言っても、目の前に道があるわけじゃない。どこか目的地があるわけでもない。真っ白な上も下もわからない空間の中でただ前へ、歩を進めていた。
ふと、この先には何があるのだろう、そう思ったんだ。
だから歩き始めたんだろう。
ただ、何も見えない白い世界が続く。雪で覆われた大地のようにも見えた。
何かが心に訪れ、少しだけ足を止めた。風はない。気温も快適だ。けれど、どこかうっすらと寒く感じる。
少しだけ怖くなって振り返ると、俺がこれまで歩いてきた足跡だけが地面の上にぽつりぽつりと茶色く残っていた。そのことに少しだけ、ほっとした。
俺は道を歩いている。
この世界には音がない。足音もしない。そして足を止めれば寒く、次第に凍ってしまいそうな気がする。蹲ってしまう前に気を取り直してもう一度足をあげれば、ぺりりと音がした。
何もないここでは足を止めれば凍り付いてしまう。
けれど何もないからこそ、自分の好きな方向に足を向けられる。なんて心地いいことだろう。だから足取りは軽かった。
少し変化が訪れたのは緩やかに勾配のついた坂を登り始めた時で、その時初めて俺の足は重力というものに捕らわれた。ここを進むと何かあるんだろう。何かが重力を生み出している。その先はなんとなく、温かそうだった。
嫌じゃない。その暖かさは嫌じゃない。
嫌じゃないが、その重力は俺の足を上がりにくくする。少し自由が失われた気がして、少しだけ悲しくなった。そうして左右を見渡すと、ただ、白い景色が広がっている。
なにもなく、ただ白い。
再び正面を向く。そうか。ここは既に誰かが歩いた道だ。
だからきっと、重力がある。
足元をみれば、僅かに埃が積もったように暗く、先に行くほどうっすらと黒く見えた。昔誰かが通った足跡。
この先に進めば誰かに会えるだろう。
ぼんやりと先を見つめる。きっとこの先は暖かい。けれど。
気が付けばまた、真っ白な道を歩き始めていた。
なだらかな斜面から離れるごとに、ふわふわと歩きやすくなった。
少しだけ未練がましく坂のある方角を見る。そして少しだけ、思い出していた。
俺は昔、歩くことに決めた。あんな風に重力のある場所から。
それが何故だったかはもう思い出せそうにない。時折こんな坂を見つけて、もう少し歩ける程度の温度を少しだけ感じて、また歩き出す。
霞がかかった道無き道を歩いている。
歩き続ける。
この先に何かがあっても、なくても、きっと。
この詩は別途で書いた長編ホラーの一部を抜きがいて追加したやつ。あれは藤友君っていう不幸の申し子みたいな高校生と、いつもの幽霊が見える中途半端に人がいい智ちゃんのバディもの。
ヘッダは昔書いた絵だけどこの絵を描いた時の気分とこれ書いた時の気分が似てた気がしたので。
★似た話
たまに詩っぽいのはあるんだけど、これは朝のだらだらした感じの詩。詩の定義がいまいちよくわかってないんだけどさ。
