【短編小説(短編連作)】春崎夜道の『夜散歩』なXmas 17 踏み出せるはずがない一歩 1000字
[HL:聖なる夜に奇跡は起きる?]
「夜道ちゃんも大岳も、俺の家族みたいなもんだし」
「そんなことはわかってます!」
ああ、家族。そんなのわかってる。だから私はつまらなくなる。
『俺はただ、夜道と奏汰が楽しそうなのが好きだったんだ』
大岳の言葉が浮かぶ。大岳にとって私は家族でしかない。何も変わらない大岳。私たちは家族じゃない。でも家族みたいに暮らしてきた。だから家族みたいになった。けれど私が大岳を家族みたいに思えなくなったのは高校の時で、あの時から一緒にいると、だんだん苦しくなっていった。だから私は大学に入ったら桜川の家から出て実家で暮らすようになって。でも。
「家族じゃ嫌なんです」
自然とその言葉がこぼれた。家族じゃ嫌。嫌なんだ。言葉にしてしまえばもう、どうしていいかわからない。ずっともやもやとして形にならないまま心の奥底にしまいこんでいたのに。
そうして私はへたり込む。真っ暗なもみの木の内側に。遠くに光が瞬くだけで、その内側には全く光が存在しないツリーの下で。ああ、直視なんてしたくない。大岳と恋人になることなんてないんだ。そんなことはわかっていたのに。だから世界は真っ暗だ。
God sent not his Son into the world to condemn the world,
but that the world through him might be saved.
ふいにそんな音が聞こえて顔を上げれば、その奥の並木の瞬きが目に入る。
「突然なんですか」
「俺さ、クリスマスのライブでみんなで讃美歌歌うんだよ」
「……そうですか」
「クリスチャンじゃないのにね。でもこの歌詞はいい事言ってる」
「……」
「俺もヒロのカレシじゃない。俺は超好きなんだけど。でも俺は別にそれでもいいかなって思ってる。ヒロが俺を好きなのは知ってるし」
このツリーの下から見える奏汰さんはすっかり影になっていて、その表情はさっぱりわからない。
「……知ってます。でもそれで割り切れてる奏汰さんがわかりません」
「大岳が夜道ちゃんのことを好きなのは知ってるだろ?」
「……家族として」
「夜道ちゃんは欲張りだね」
「……私は大岳と付き合いたいの。それが無理だって知ってるのに」
踏み出してしまえば、全部終わってしまうかもしれないのに。ふいに、手が差し出されてることに気が付いた。
「帰ろう、夜道ちゃん。幸いもうすぐ聖なる夜だ。奇跡が起きるかもしれない。俺にも、夜道ちゃんにも」
to be Continued
ここには書いてないというか本筋のストーリーでは高校の時に夜道ちゃんを大岳が助けてから夜道ちゃんは大岳を好きになりました、がカットしたのでスルーしてくださいねー。
★次の話

#いつきちゃんのアドベントカレンダー
#合唱団(讃美歌)
おじゃましますー。なるべく毎日、神津を中心に夜道ちゃんが主人公の話を書いてみようかな的な。途切れたらそれまで。
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これは神津でもガレリアのほうだからちょっと遠い。
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