【短編小説(短編連作)】春崎夜道の『夜散歩』なXmas 18 たくさんの夢と希望 1000字
[HL:起きなくたっていいじゃない]
「聖なる夜」
そういいつつ、じっと私を見つめる瞳から奏汰さんが全くそう思っていないのも、なんとなくわかった。奏汰さんとは子どものころからの付き合いで、考えていることはたいていわかる。奏汰さんは自分に奇跡が起こるなんて全然思っていない。私と大岳の間にも。でも私と大岳が幸せになればいいって思っているのも本当。
「奏汰さんは相変わらず嘘つきですね」
「そうかな。未来のことって結局わからないからさ、上手くいくかもしれないじゃん?」
「……そうですね」
未来。私の前に広がる未来は、いくつくらいのルートがあるんだろう。
ツリーから出て、無責任に光り輝く並木を眺めた。誰かのたくさんの願いを乗せているように見えるこの光の渦は、誰かにとっての幸せに繋がっているといい。
ふと、スタジオを振り返る。
私は今日、番組の中でクリスマスで叶えたいことを募集して、たくさんの勇気を電波に乗せた。彼女にプロポーズするんです。子どもにプレゼントを買ったけど親だってばれないかな。クリスマスパーティで意中の人に告白するんだ。そして私はそのたびに、大丈夫だよって祝福した。今は私の次のパーソナリティが、そしてクリスマスは当日が訪れるまで、FM神津で同じ願いが語られ続けるだろう。
あの公開スタジオの窓に飾られた大きなリースの向こう側は幸福で満ちている。そうして窓際にはたくさんのクリスマスの飾り物が増えていて、端っこに置かれたスノードームがスタジオ内の光を反射して、透き通って見えた。
あれ? 何か変だな? なんだろ。
「ね、せっかくあげたんだからさ。大岳をスキーに誘ってみてよ」
スキーかぁ。全ての幸せは一歩を踏み出さなければ始まらない。たとえうまくいかないとしても、たくさんの幸せの試みに紛れ込ませられるなら。
「行かないと思うけどなぁ。大岳は運動神経からっきしだし。私と奏汰さんがスキーに行くのの引率に誘う方がまだ目がありそう」
「本当にね」
奏汰さんはそう言って、肩をすくめた。でもせっかくもらったんだから、誘うだけ誘ってみようか。まぁ、駄目もとで。上手くいっても何も変わらないかもしれないけど。いつの間にか、そんな勇気が少しだけ沸いていた。奏汰さんからせっかくもらったっていう言い訳があれば、断られたって私と大岳の間には何もマイナスは起こらない。
そんなことを気にする自分は、やっぱりあんまり好きじゃなかった。
to be Continued
改めて考えると大岳はスキーしなさそうだな。
★次の話

#いつきちゃんのアドベントカレンダー
#クリスマスリース
おじゃましますー。なるべく毎日、神津を中心に夜道ちゃんが主人公の話を書いてみようかな的な。途切れたらそれまで。話は続けるつもりなんだけど、ちょっと健康上の不安がでてきた。
★似た系列の話
これは明治時代の神津南の話、中編。
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