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【短編小説(短編連作)】春崎夜道の『夜散歩』なXmas 11 パーティに必要なもの 1000字

[HL:やぶさかではなく必要性を感じないパーティ]

 部屋に小さな振動が響く。
 俺は集中すると時々変化に気が付かない。だからラボに誰かが入って来れば、高周波を0.5秒程度流す。いわゆるモスキート音というものだ。その短く不快な音は、強制的に注意を引くには適している。研究室の入り口のモニタには、夜道が入って来るのが映っていた。
「夜道。クリスマスパーティ」
 マスクの内側で滞留した小さな呟きは、その必要性について些かの疑問があった。しかしそれは俺にとっての必要性で、夜道がやりたいというのならやぶさかではない。本当に夜道が望むなら。
「大岳、ケーキ買ってきましたよ~」
「片づいたらいくから」
 マイク越しに短く答えてシャーレを保温器に戻し、変化をタブレットに書きつける。あとはいくつか条件を変えて、新しい人工皮膚の強度を試さなければならない。応接に出ればミルクティの香りが漂い、夜道が丁度カップを運んできた。すでにカトラリーも準備され、座って食べるだけだ。

「いつもありがとう」
「レアチーズとモンブラン、どっちがいい?」
「モンブランで」
「やっぱりね。こっちのほうがカロリー高そう」
「いくら?」
「えーと、税込みで572円」
 スマホでその金額を送金する。
「着金確認しました~」
 夜道はここに閉じこもっている俺に、よくケーキを買ってきてくれる。実費だけだと手間賃分で夜道が損だから、たまに大量購入を頼んで、その時夜道にケーキを奢ることにしている。今日はなんだかいつもより大人しく、しばらく食べすすんで意を決したように口を開いた。
「……あの、大岳。昨日奏汰さん何か言った?」
「奏汰か。夜道とクリスマスパーティの話をしたって言ってたよ」
 奏汰はとても単純な人間だ。なのに表情と内心が結構食い違う。いや、違うな。正確に言えば思っていることと違う表情を浮かべるのが得意で苦にならないんだ。あいつにとって俺は逆で、表情が全然表に出ないらしい。意図してそうしているわけでは全くないのだけど。
「やっぱりかぁ」
「夜道はしたいの? パーティ」
「パーティ、うーん」
「気が乗らないなら……」
「いや、そういうわけじゃなくて!」
 夜道は酷く複雑な表情で俺を見つめた。その意味はいつもわからない。
「パーティするなら、ピザとローストチキンでも注文しようと思ったんだ」
 奏汰に言われて昔やったパーティを思い浮かべた。ピザとチキンとケーキ、それからクリスマスツリー。そう思って目を合わせれば、夜道は鳩が豆鉄砲を食らったような顔をしていた。

to be Continued….

★次の話

#いつきちゃんのアドベントカレンダー
#ローストチキン
おじゃましますー。なるべく毎日、神津を中心に夜道ちゃんが主人公の話を書いてみようかな的な。途切れたらそれまで。

★似た系列の話

これ、一覧には神津の話って書いてるけど注文内容みると辻切のNumber13かクウェスな気がする。

#小説 #短編小説 #ショートショート #私の作品紹介 #創作大賞2026 #恋愛小説部門


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