【短編小説(短編連作)】辻切区のどこか奇妙なXmas 17 クリスマスに近づきたくないってのに 1000字
[HL:幽霊が讃美歌を歌うだって?]
「環、助けて! クリスマスに呪われた!」
寝起きの智樹がクウェスに飛び込んできた時、既に10時半は過ぎていた。俺はいつもの席で仕事をしていたのに、気持ちいい朝はすっかりぶち壊されたわけだ。
「俺にクリスマスを持ち込むな」
ただでさえ無視しようと思ってるのに。
「クリスマス? でも助けてやるって言ったじゃないか!」
「……ああ、確かに言ったな。どうせお前は面倒事を俺のところに持って来る。極限に悪化してから持ってこられるよりは軽いうちに持ってこられた方がまだましだ」
悪化……既にしてる気がする。先日結界を張り直しに行った時にはまだ例年通りだった気はする。……ここはカフェだ。無言でQRを押し付ければ、やがて店員がコーヒーを持ってきた。
「それで何があった。結界は張ってあるはずなんだが」
「結界……? えっと、夜中に残ってたら讃美歌みたいな声が聞こえる気がするんだ」
讃美歌……。ただの音楽だ、あれは。俺にとっては洋楽と同じだ。正月に流れる春の海と同じ季節ソング。
「店の中だろ? いいじゃないか、讃美歌くらい。クリスマスなんだからBGMで。きっとみんなはしゃいでるんだよ」
「え、大丈夫な奴? お化け怖い」
ああ、もう頭が痛い。
智樹は幽霊が見えるくせに幽霊を過剰に怖がる。夜になるとお化けが出て怖いと毎晩酔っぱらってるくらいだ。だからお化けが出るところにはいたくない。だからあの店には悪意のあるものや智樹が招かないものが入らないように結界を貼り、善良なそのへんの精霊っぽいのを投げ込んでいた。
……増えた? 気になることを言ってたな。
「そもそも何か変わった事をしたのか?」
「変わった事? まだしてない」
胃がキリリと音を出すのを感じる。
「まだ、とは?」
「えっといつも通りツリーをリースして、その、今年はクリスマスプレゼントの交換をやろうと思ったんだけどさ、えっと、その」
顛末を聞くうちに、俺は頭を抱えていた。自由にプレゼントを入れていい、だと。こいつは馬鹿か。ストーカーだの勘女だの、今まで何度トラブルになったかすっかり忘れたんだろうか。
「えっと、あの」
「自分で招き寄せる馬鹿があるか。せっかくの守りがちっとも役に立たないじゃないか」
「え?」
最も腹立たしいのは智樹自身が有象無象を呼び寄せたのに、全く自覚がないことだ。
「見せろ」
「何を?」
「店だ! これからいくぞ! 糞! 俺はクリスマスに近づきたくないんだ!」
to be Continued
智樹は幽霊が見えますが、環は幽霊が見えません。環は精霊とか不可視な概念を見る技術を知っていますが、智樹は知りません。
★次の話

#いつきちゃんのアドベントカレンダー
#合唱団(讃美歌)
おじゃましますー。なるべく毎日、智ちゃんが主人公の話を書いてみようかな的な。途切れたらそれまで。
★似た系列の話
これもホラーコメディ。辻切というよりは新夜坂の方だった気が。
