【短編小説(恋愛)】 Trick or sTriked 1400字
[HL:一方的にカツアゲされるなんて変な話だよ]
「Trick or sTriked? なんです? それ」
「だからさ、お菓子をもらうかいたずらされるかの二択なんて不条理じゃん。いたずらされるなら、されかえされても文句は言えないと思うんだよ。だからStriked、いたずらするか、襲われるか」
そう呟いて、奏汰さんはノルゲンのザッハトルテを頬張って目を細めた。そうして狭いスタジオ内に目を向ける。奏汰さんは私の幼馴染で、今日は私がパーソナリティを勤めるFM神津の公開スタジオに差し入れをしてくれたのだ。今は前のコーナーを放送中で、バックヤードで少しの待機時間。
「そういうの、流行らないかなあ。夜道ちゃん、流行らせない?」
「ふむふむ、ハロウィンネタですね」
日本語にするとびっくりな語気の強さだけれど、変に韻を踏んでる。だからまあ、ひょっとしたら流行るのかもしれないけれどさ。
つられてスタジオ内を見回した。外から見えるオープンなこのスタジオは、今月頭からかぼちゃや蝙蝠でわかりやすく飾り立てられている。それで確かに今週のお便り募集も『神津のハロウィン的ホラースポット』という身も蓋もないテーマ。来週のハロウィン本番で楽しく過ごすためのネタ集めだ。
「そうはいっても子ども相手にやり返すのは、やりすぎでは?」
そんな大人げないことを推奨したくはない。
「夜道ちゃんの番組は深夜でホラーだからワンチャンと思って」
そう、私の担当するのは24時20分スタートのホラーラジオ、春崎夜道の『夜散歩』、だ。だからそもそも子どもは聞いていないはずだけど。
「それにさ、いたずらかお菓子か、がまかり通るような価値観を公共放送で子どもに植え付けるのはどうかと思う」
「うーん、そこはご家庭の教育にお任せする方向で?」
「やるなら反撃上等くらいの気概を持たないと平等じゃないじゃん。昔外国で撃たれた人いたし、子どもの危機感の啓蒙的にもさ」
奏汰さんはとても弁が立つ。だからとても口で勝てるとは思えない。だから適当にお茶を濁すのだ。どうせ奏汰さんの最終目標はいつも1つだし。
「で、奏汰さんはそうやってヒロさんといちゃつきたいんですね」
奏汰さんは実にチャーミングな笑顔でほほ笑んだ。もういつもいつもヒロさんのことばかりだな。
「そ。ヒロはお菓子好きだからさ、絶対お菓子選ぶじゃん。あげて終わったらいたずらできないし。俺はお菓子好きじゃないし、いたずらしたいんだ」
言ってる内容が想像できないようなイイ笑顔だな。
けど確かに奏汰さんが気に入る甘味といえば、近所のノルゲンのこのビターすぎるザッハトルテくらいなのは知っている。そうしてノルゲンの箱の奥には私が選んだラズベリームース以外にも4つの季節のケーキが収まっていた。きっと全部ヒロさんの胃袋に収まるんだろう。
「賄賂ももらったし仕方がないですねぇ。でも放送だとちょっと無理だから、それっぽい録音をとりましょうか。それで来週家で流せばいいでしょう? ハロウィン当日だし」
「いいね! さすが夜道ちゃん。今日のラジオも頑張って」
そう呟いて、奏汰さんは誰でも恋に落ちそうな、今日イチいい笑顔で頷いた。だからきっとここまでが奏汰さんの計画なのだ。
「夜道さん、そろそろスタンバイお願いします」
だから丁度時間切れで、スタッフさんに呼ばれた。
そんなわけで、結局私はプライベートだからって奏汰さんの妄想まじりの結構きわどいエアエピソード集録に協力しまったけれど、それでどうなったかはまた別の話。
Fin
ヘッダの絵は趣味活の時の奏汰さんです。そういやこれも2年ほど前のハロウィン用に書いてた絵だな。ついでにケーキあげたのにいたずらしてるのも貼っておこう。手が変だから直そうと思ったのを忘れていた。この人たちは極端なバカップル(死語)です。
エクセデスノルゲンは公園前通りにあるドイツ菓子のパティスリーで、ザッハトルテは人によっては甘みを感じないほどビターだけれど、他は基本的に過剰に甘いことが多いです。

参加しますー。
Trick or ??
ご紹介頂きました~。ありがとうございますー☆
この話に関係ないので性別は明記してませんが(イラストでまるわかりだが)2人はBLの人です。昨日別の企画で関係まとめを創ったので気になった方はお越しくださいー。
★似た話
この話に出てくる夜道ちゃんの夜散歩のラジオコーナー。夜道ちゃんの本名は古屋敷夜道だけど、ペンネームとMCネームは春崎夜道です。あとはタウン情報神津でホラーコーナーを持っている。夢はホラー作家。
★短編小説のマガジン
#小説 #短編小説 #ショートショート #私の作品紹介 #創作記録
