【短編小説(短編連作)】春崎夜道の『夜散歩』なXmas 7 クリスマスのご予定は? 1000字
[HL:奏汰さんの強引さは、いつも少しだけうっとおしい。でも]
「え、そうなの? まぁとりあえずそういうことで」
「あ、ちょっと」
何か言い返す前に、奏汰さんからの電話は切れた。もう、あの人はいつもこう。子どものころからちっとも変ってないや、全く。
「春崎さん、どうかしたかい?」
「ああすみません。取材の途中だったのに。私の友達が今日こちらでブッシュドノエルを予約したって」
「へぇ」
北欧ハーフの背の高いカッコいいお姉さん、パティシエの北野さんはにやりと口角を上げ、ついでに私も肩をすくめた。そう、ここはまさしくノルゲンで、ノルゲンのある神津北公園通り商店街のクリスマス特集の取材に来ていた。タウン情報神津の記者として地元のイベントを。北野さんはパラパラと帳面をめくる。
「あぁ、これだね。朝一の受付だ。これあんたの名前かい? 古屋敷夜道」
なんで私の本名で予約するかな。私が取りに行く予定だからか。本当におせっかい。
「はぁ、そうです。春先はペンネームというかラジオネームというか。古屋敷だと華やかさが足りないから」
「いい名前だと思うけどねぇ。そういや蝋燭がいるか聞きそびれてるようだね。どうする?」
蝋燭……? ブッシュドノエルって蝋燭挿すんだっけ。
「うちなら小枝っぽい感じのをつけるよ」
見せてもらったサンプルには、木の枝そっくりのキャンドルをブッシュドノエルの周りに横たえて、その洞に火を灯していた。その明かりにブッシュドノエルがぼんやりと照らされて、少し幻想的かもしれない。
「へぇ、お洒落ですね」
「じゃあ3つばかり入れておくよ」
「えっ? ……ありがとうございます」
けど、どうせ祝うっていったってあの飾りっけの何もないラボだもんなぁ。あのちょっと近未来的な部屋にはきっとまるで合わないよ。どっちかっていうとぼろ臭い所長の探偵事務所の方がまだ、雰囲気がでるかもしれない。私は色々な仕事を気楽に掛け持ちしてて、ラジオのパーソナリティと、タウン情報のコラムと、あと西野木所長の探偵事務所のお留守番と資料の片づけ。
そうだなぁ。一応手土産を持っていくか。
「じゃ、来週クリスマスキャンペーン始まった時に改めて、また来ますね。それでレアチーズと、モンブラン、それからザッハトルテ……じゃなくてサバランください」
奏汰さんがここのザッハトルテ好きなのを思い出して、違うのにしてみるくらいにはやりすぎだと思った。けれど並ぶケーキはやっぱりどれも綺麗で。
to be Continued….
★次の話
#いつきちゃんのアドベントカレンダー
#ろうそく
おじゃましますー。なるべく毎日、神津を中心に夜道ちゃんが主人公の話を書いてみようかな的な。途切れたらそれまで。
★似た系列の話
ノルゲンのある公園通り商店街にあるカフェのお話2。そういえば夜道ちゃんがノルゲンにハロウィンの取材に来る話もあるけど、もってきてないな。
#小説 #短編小説 #ショートショート #私の作品紹介 #創作大賞2026 #恋愛小説部門
