【短編小説(短編連作)】春崎夜道の『夜散歩』なXmas 22 空模様はくもり気味 1000字
[HL:ツツジにオーナメントって季節感が酷いな]
「夜番の夜道です。追加のオーナメント持ってきました。よろしくお願いします~」
「あ! やっと休憩に入れるぅ。お昼もまだだったの、ありがとう!」
そう言って綺麗なお姉さんはスラっと立ち去った。えっと? 振り返ればどんどん小さくなっていく。あの、引継ぎとかは。
「サンタのお姉ちゃん、キラキラちょうだい」
その声でポカンとしつつも前に向き直れば、にこにこした子どもが並んでいた。え? あ、オーナメントを配るんだっけ。
「あ、はいはい、ちょっと待ってね。どうぞ~」
「ありがとう~」
そんなふうにブースにある箱に入ったオーナメントを片っ端から手渡していると気が付けば分量が減っていて、そうだと思って持ってきた箱を慌てて開ければ茶色かりでぽかんとする。え、オーナメントって種類別?
なんとその箱に入っていたのは松ぼっくりばかりだったのだ。周囲を見渡してもう1つ箱があったから開けてみたらそれもやっぱり松ぼっくり。なんで松ぼっくりばっかり? そう思って気が焦る。
「……お姉ちゃん、キラキラしたの、もうないの?」
悲しそうな声に目を上げれば、列にはまだ結構な子供連れが並んでいた。え、ピンチ。列の左右のつつじ並木には確かにキラキラが飾られている。それでさっき荷物を受け取ったスタッフさんが隣を通ったから慌てて捕まえる。
「あの、オーナメントって他にないんですか?」
「うん? えーと、ここで配る用はさっき持っていってもらった箱で全部、だったんじゃないかな」
まじか……。2つの箱を見渡せば、松ぼっくりと、松ぼっくり。この配分はおかしいでしょ。どうせやるなら最初に松ぼっくりじゃない? でも朝早くから来た子もキラキラ欲しいだろうし、それはそれで不公平。うーん、どうしたらいいんだ! プロボノとはいえうちのイベントはいつも細部が詰んでない。
「キラキラ……」
無垢な感じの瞳が痛い。子どもを悲しませちゃだめじゃん。ああもう、どうしたら。ほとほと困って思い出したのは北野さんの言葉。
「えっとね。松ぼっくりっていうのは豊穣とか、えっとみんなが幸せになりますようにっていうお守りなんだよ。マリア様が逃げていたとき、モミの木が助けたんだ。だからこれを飾ればきっとみんなを助けてくれるんだ」
「ほんと……?」
「うんっ」
完全に受け売りなことに少し罪悪感はあるけれど、それで女の子が笑顔になったから良しとしよう。ゴロリという音で見上げれば、いつのまにか重い灰色の雲が空全体に広がっていた。
to be Continued
オーナメント地獄は強引にクリアだ!
モミの木の由来はキリスト誕生とユールが混ざってるんだけど、北欧では意図的に信仰を混ぜたからこのオーナメントは中世以降にできた話だったりするんだろうか。
★次の話

#いつきちゃんのアドベントカレンダー
#松ぼっくり(オーナメント)
おじゃましますー。なるべく毎日、神津を中心に夜道ちゃんが主人公の話を書いてみようかな的な。途切れたらそれまで。
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僕は地味なSFがすきなんです。
#小説 #短編小説 #ショートショート #私の作品紹介 #創作大賞2026 #恋愛小説部門
