あけぬ夜はなし 第19話 終 可惜夜(明治ファ全19話50000字)完結
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19.終 可惜夜
その朝からおよそ五年がたった。
「青山様、本日は御日柄もよく、ええと」
「夕陽殿、そこは本日であれば、たとえば足元が悪い中お越し頂き、などと続きます」
「青山様、何故天気が悪いのに御日柄が良いのですか?」
夕陽は利発そうな瞳を瞬かせ、青山の答えを待った。
「ふむ。御日柄というのは縁起の話でね。例えば大安なら嵐でも日柄は良い」
「なるほど?」
「夕陽殿、お菓子を差し上げましょう、あちらで遊んでおいでなさい」
「ありがとうございます、晴夜様」
夕陽は頭を下げ、勉強は終わりだとばかりに店の外の光の中に駆けていく。
昼見世が終わったばかりの新地はひっそりと静まり、幽凪屋の広間にいるのは青山と幽凪だけだった。
「夕陽殿は本日も健やかで何よりです」
「青山様、しっかりとはしておりますが、まだ五つです。もう少しゆっくりとされては如何ですか?」
「私には夕陽殿の後見となった責任があります。白河屋は今は番頭に見させておりますが、なるべく早めに店に戻し、慣れさせたいと思います」
「まあ、ここにいるよりはその方が宜しいのでしょうな」
晴代は煙管から煙を吐きながらうっそりと外を眺め、そう呟いた。
「店ではしばらくはお飾りでしょうが、だからこそ舐められぬよう、しっかり教育しなくては。時に夕霧殿は如何ですか?」
「日中は変わらず休んでおりますね。いつもご挨拶できず申し訳ないと申しております」
幽凪があの翌昼に二階の部屋を訪れた時、陽二郎は既に欠片もなかった。幽凪が雨戸を閉めれば夕霧は次第に人の体に戻り、ただ陽二郎の洋装を抱きしめて幸福そうな顔で述べた。
「お父様。わたくしと陽二郎様は一緒におります。ずっと」
「そうか。よかったね。ともあれしばらく休むといい」
幽凪は夕霧の姿から、陽二郎も本意を遂げたのだろうと理解した。
その後何日かして夕霧は大量の卵を産み、その中の一つだけに人の姿が宿った。産まれた赤子に夕陽と名づけ、夕霧はその他の卵を全て食べた。
それから夕霧は身を売らず幽凪屋の遣り手として過ごし、夕陽は幽凪屋全体で育てている。
「夕陽殿は大物になるでしょう」
「そのようなものでしょうか。外の世界のことは私にはよくわかりません。夕陽殿が居なくなれば寂くなりますね」
「あの子はきっとちょくちょく顔をみせますよ。どこにだって歩いていけますから」
青山は陽二郎から予め、子が産まれた場合の身元引き受けを託されていた。宇吉のところの女の子も同じ年であることを思い出す。随分勝ち気な子だ。神津はこの五年の間にも変化は著しく、全てが大きく揺れ動いていた。
青山は陽二郎が明けぬ夜に過ごすより夜が明けることを望んだことについて、それも一つの選択だろうと思っていた。青山自身は随分前に明けぬ夜に暮らすことを決めていた。どちらが良いというものではない。この先にも夕陽と夕霧には様々に選択を迫られることはあるだろうが、よく考え、それぞれの差異に基づく最適な選択を行うだけのことだろう。
もうすぐ新しい年が明ける。
Fin
お礼と次の連載枠のお知らせ。
お読みいただきましてありがとうございました。そういえばこれはこの間、エブリスタで何かの佳作をもらいました。
でもやっぱり5万時は長いですね。週2更新で2か月ちょいかかったのかな。
次は『都市伝説と不確かな歌、そしてマシュマロの海』という現代ファンタジーです。イケメン2人がメインのバディもので、女子高生が一人助手的にでてきます。25000字くらいで、話はまだ割ってないけど8~10話くらいだと思う。
その次は一応BL(R15)を持ってこようと思ってるんだけど、10万字こえるから前後編にして(丁度よく前半後半で主人公がかわるので)、間に違うのを持ってこようと思っていますが、リクエストがあれば受け付けます。ハイファとかまあ色々ある。
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