【短編小説(短編連作)】春崎夜道の『夜散歩』なXmas 6 新しい予定 1000字
[HL:今よりいい、それはきっと、よいことだ]
小さなアラートで体を起こせば、大岳は相変わらず研究室の中にいた。声をかけようと分厚いガラスに近づけば、追い払うようなジェスチャーをする。手を上げて返せばもうこちらを見もしない。忙しいのだろう。クリーニングされた一式に袖を通して自分用に珈琲を一杯作ってラボを出れば陽はすっかり昇り、往来は仕事に向かう人間で溢れていた。冬のあまり光度の高くない光でも眩しく感じて思わず目を細める。あまり睡眠は必要じゃない方だけど、ここのところ目を酷使している。
そう思いつつノルゲンの電話をスマホで調べ、ブッシュドノエルを注文した。メニューの中で一番クリスマスっぽい。ノルゲンは大岳の気に入りのケーキ屋で、俺もここの濃厚ザッハトルテだけは甘くなくて気に入ってる。
ケーキ、かぁ。やっぱクリスマスはケーキだよね。ヒロは甘いの好きだから、クリスマスにキナーティのアフタヌーンティの予約を随分前に入れた。この辺りで一番高級で美味いらしく、俺的にも珈琲が美味い。だからケーキは全て献上して、ヒロが美味そうに食うの見るのが楽しみだ。一緒にケーキを楽しめないのは少し残念だけど、ヒロが甘いのが好きで、俺は好きじゃない。俺たちが違う人間な以上その差異は仕方がなく、埋められない。でも俺たちは上手くいっている。
多分、大岳は夜道ちゃんを恋愛的に好きになることはないだろう。今は夜道ちゃんだけが苦しそうだ。でも丁度いい距離感が作れれば、それはそれで救いになる、んじゃないか、な。その差異が埋められないとしても。
それで怒涛の午前を過ごしてへとへとに疲れ果て、休憩室のソファに倒れ込む。次は3時からか。さすがに辟易するけれど、ヒロとクリスマスを過ごすためには仕方ない。それで思い出してスマホを取り出した。
「はろー、夜道ちゃん?」
「こんにちは、奏汰さん。ちゃんと寝れました?」
耳をすませばBGMと人の音が聞こえるから、外出中なんだろう。
「大丈夫だよ。俺、丈夫だから。それでさ、大岳、夜道ちゃんとクリスマスするって」
「はい?」
「昨日さ、昔大岳んちでやったクリスマスの話してたら懐かしいって言っててさ」
「ちょっと待ってください。それ奏汰さんが勝手に決めたんじゃないでしょうね」
「まぁまぁ。それでケーキ持ってく話になってるから」
間違ったことは言ってない。
「いや、なんで勝手に」
「まぁまぁいいじゃん。ノルゲンでブッシュドノエル頼んどいたから当日受け取って」
「え? 今ノルゲンなんですけど」
to be Continued….
★次の話
#いつきちゃんのアドベントカレンダー
#ブッシュドノエル
おじゃましますー。なるべく毎日、神津を中心に夜道ちゃんが主人公の話を書いてみようかな的な。途切れたらそれまで。
★似た系列の話
ノルゲンのある公園通り商店街にあるカフェのお話。
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