【短編小説(短編連作)】辻切区のどこか奇妙なXmas 6 不本意なクリスマスケーキ 1000字
[HL:宗教、という言葉が最近陳腐化している気がする]
一方その頃、俺は途方に暮れていた。目の前の騒がしい生き物にどう対処すべきか。しかし考えた所で結局はどうしようもない。他人の強固な意思など思うようにできるはずがない。
「環さん! ブッシュドノエルなんてどうですかね⁉ あぁ絶対的クリスマス感!」
「お前、魔女になるんじゃなかったのかよ」
目の前の感無量気味に両掌を組んだ病み落ちしかけた女子高生、時透奈美子がクリスマスプランをかしましく述べ立てる。その中には奈美子だけでなく俺の予定も組み込まれているわけだ。俺の意思に反して。
「それはそれ、これはこれです。神棚のある部屋でクリスマス祝って寺で除夜の鐘ならしたその足で神社に初詣に行く国で何言ってるんですか!」
「まぁ、そう考えればブッシュドノエルは合ってるな」
キリスト教の降誕祭、ケルトのユールと起源は様々に言われるが、それらがまじりあってフランスの卓に供されたのが今では日本で定着している。
「いずれにしてもお前の手作りは絶許だ。そんな怪しげなものを食べるくらいなら自分で用意する」
奈美子に作らせれば何を入れられるかわかったもんじゃない。そう思っていれば、目にハートが浮かぶという言葉がばっちりな奈美子の表情に悪寒が増した。
「えっ環さんが作ってくれるんですか?」
「そんなわけあるか。適当に予約しとくよ」
そうしてふと、なしくずしに何故かクリスマスを奈美子と祝うことになっていることに気が付いて舌打ちが漏れた。しかし自分が吐いた言霊に反することはできない。ドツボだ。
「えっ? デパートとかの予約期間はもう過ぎてますよ?」
「当日買いに行けばいいだろ。並ぶだろうが……しかたがない」
本当に面倒くさいの連鎖だ。様々な思念にまみれた列に並ぶなど、自ら穢れを浴びに行くに等しい。ドミノ倒しに思えてきた。けれどますます言霊は積み重なり、全てを無しにするにはもはや手遅れだった。
「ブッシュドノエルなんてすぐに売り切れるに決まってるじゃないですか! ああぁただのホールのショートケーキしか残ってませんよう~」
「お前、本当に人を呪うのが得意だな」
「えへ、でもブッシュドノエル、食べたいです」
仕方なく奈美子にスマホを借りて、腐れ縁のケーキ屋に嫌な気分でコールし、電話口に出たのが知己であることにまた舌打ちした。
「円城だ。クリスマスにブッシュドノエルを頼みたい」
to be Continued

なおたまちゃんのビジュアルはこんな感じ。環ちゃんの話はいつも三人称で書いてるから違和感がでかい。奇しくも女子高生が2人出て来ますが、2人ともロリコンではありません。

こっちの錦織さんのケーキ屋は西街道のベクセンハウザーですが、夜道ちゃんの方は公園前通りのノルゲンです。親戚です。

★次の話
#いつきちゃんのアドベントカレンダー
#ブッシュドノエル
おじゃましますー。なるべく毎日、智ちゃんが主人公の話を書いてみようかな的な。途切れたらそれまで。
★似た系列の話
中編で環と智樹と奈美ちゃんが出る話。構成がいまいちなのでそのうち修正する予定。
