【短編小説(短編連作)】春崎夜道の『夜散歩』なXmas 14 寒いときは飲むにかぎる 1000字
[HL:寒いのになんでわざわざ寒いところにいくんだよ]
「あら、西野木さんいらっしゃい」
「よぅ、雁園《かりえん》ちゃん。今日はなんか寂しいな」
ラメル・ルージュは6区に店を構えるまさにスナックといえる風情の店は、さほど広くはないが妙な薄暗さと温かみがある。けれど今日はママの雁園ちゃんと女の子が一人いるだけで、少々しんみりしていた。
「さっき雪が降ってたでしょう? あれで女の子が1人お休みなのよ」
雁園ちゃんが肩をすくめる。
ああ、そうか。ここの店員は東南アジア系の子が多いから、雪が降れば毎年大騒ぎだ。それで店もいつも明るいから、なんとなくしんみり見えるのかなと思っておしぼりを受け取る。
「西野木サン、いらっしゃいマセー」
「ありがとな。マリアちゃんは雪で遊んだりしないの?」
「もうッ。馬鹿にしないでくださいヨ~。私、3年目だから慣れちゃいました」
「そりゃ悪かったな。お、そうだ、お詫びをやろう」
丁度いい口実ができたと思って鞄をまさぐり、封筒を取り出す。
「わッ。クリスマスプレゼントですか~?」
「ある意味そうだが……じゃーん、高天リゾートの一日スキーペア券だ」
こっから電車で2時間程度でいける最寄りのスキーリゾート。けれどマリアちゃんのオーバーにニコニコした顔の眉が急に寄る。
「あれぇお金じゃないの」
「お金は雁園ちゃんからもらってくれよ。マリアちゃん旦那いるだろ、一緒に行けばいいじゃん」
「えぇ~。スキーしたことないし」
「ソリとかもあるぜ。乗って滑るだけだ」
雁園ちゃんがハァとため息を吐いた。
「西野木さん、この子たち寒いとこ駄目なのよ。スキー場なんて近寄ろうともしないわ。たまに好きな子もいるんだけどね」
雁園ちゃんがあきれ顔で目の前に置いたハイボールが暖色なライトを反射する。そういえばマリアちゃんはフィリピンで、常夏なんだっけか。平均気温30度とかいっちゃう? それは寒いところ苦手そうだな。仮に気温差が30度あるとして、それは行きたくないかもしれないなぁ。俺も50度の所とか行きたくない。
そう思って見るとマリアちゃんはとても無理というようにプルプルと手を振る。
「じゃぁ他の子も駄目かぁ。雁園ちゃん一緒にどう?」
「くれるならもらうけど、いくならもっといい男といくわ」
「ひで」
「西野木さんこそ、誰か一緒にいく人いないの?」
「俺ぁ寒いのが苦手なんだよ。雁園ちゃんのためなら我慢するんだけどねぇ」
「馬鹿言ってないの」
伸ばした手がぴしゃりと跳ねのけられたのはいつものことだ。
to be Continued….
★次の話

ラメル・ルージュはクローバーとか西野木の短編とかわりに違うシリーズのミステリの中継点になってるんだけど、Noteにはどれも持ってきてないな。
#いつきちゃんのアドベントカレンダー
#ソリ
おじゃましますー。なるべく毎日、神津を中心に夜道ちゃんが主人公の話を書いてみようかな的な。途切れたらそれまで。
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高天リゾートまわりは雪が降るので(?)安易にホラーとかサスペンスが多いです。
#小説 #短編小説 #ショートショート #私の作品紹介 #創作大賞2026 #恋愛小説部門
