「日本のレベル上げすぎちゃった?」 ―5周年のBE:FIRSTが『Rondo』で見せた、王者なのに挑戦者の姿
2026年5月4日に先行配信されたBE:FIRSTの新曲「Rondo」。プロデューサーChaki Zuluが手がけたゴシックなヒップホップナンバーで、6人がマイクリレーを展開する。その中に、こんな一行が刻まれている。
「JPのレベル上げすぎちゃった?」
一見、強気でストレートな歌詞に思える。しかし彼らが歩んできた4年半の道のりを振り返ると、このフレーズの感じ方が変わってきます。
今回は、BE:FIRSTというグループの軌跡をたどってみました。

1億円のオーディションから始まった、すべて
BE:FIRSTの始まりは、2021年。AAAのメンバーであり、ラッパー・SKY-HIとしてもソロ活動を続けてきた日高光啓が、私財1億円超を投じて開催したオーディション「THE FIRST」だった。

K-POPでは普通にできる育成・発信のシステムが日本にはない。アンダーグラウンドからメインストリームに踏み出した瞬間に手のひらを返される。
そんな業界構造への異議申し立てが、BMSG設立とTHE FIRST開催の出発点です。
そこから選ばれたSOTA、SHUNTO、MANATO、RYUHEI、JUNON、RYOKI、LEOの7人。当初予定の5人から7人に増えたのも、SKY-HIが「会ったことのない才能を全員入れたい」と判断した結果だったのでしょう。
デビュー以降、BE:FIRSTにはずっと一つの問いがついて回ってきました。「BE:FIRSTはアイドルなのか、アーティストなのか」。ジャニーズ系の伝統的なボーイズグループでもなく、K-POP的なダンス&ボーカルグループでもない、独立系の新しい存在。彼らは、その問いに言葉では答えず、楽曲のクオリティで応えてきました。
デビュー曲「Gifted.」で各種音楽チャート40冠を達成。「Bye-Good-Bye」はBillboard JAPAN Hot 100で総合首位、ストリーミング2億回突破のロングヒットに。4thシングル「Mainstream」では、デビュー曲を超える116冠を達成した。作詞・作曲・コレオグラフにまでメンバー自身が深く関わるスタイルで、2025年5月時点では週間デジタルシングル通算1位獲得数17作を達成。米津玄師と並ぶ歴代1位タイの記録を打ち立てている。
マスタープラン達成 ― ドーム宣言からの逆算
2023年1月。1stツアー「BE:1」の最終日のステージで、BE:FIRSTは観客に向けて宣言した。「近い未来、ドームライブができるアーティストになる」。
これが彼らが「マスタープラン」と呼ぶ宣言だった。そして約1年2か月後の2024年3月、彼らは東京ドームのステージに立った。さらに同年12月からは初のドームツアー「2:BE」を4都市9公演で開催。
日本のダンス&ボーカルグループとして、ドーム規模で全国を回るアーティストに成長していきました。
宣言通りの達成。これは偶然ではなく、SKY-HIがデビュー前から逆算でマイルストーンを刻んできた結果でもあります。
世界へ、そして最大の試練
2025年4月、BE:FIRSTは初のワールドツアー「Who is BE:FIRST?」を開幕。米国、欧州、アジアの全12都市を巡る大胆な海外進出です。
この事は以前の記事でも触れています。
同行したSKY-HIは後に、現地音楽業界関係者から評価されたのは「ハンドマイクで生歌を歌いながらのパフォーマンス」と「カルチャーに根ざしたリズムやグルーヴの表現」だったと振り返っています。
Made in Japanにこだわった独自のアプローチで現地に届いた瞬間でした。

しかし、このワールドツアーの最中に最大の試練が訪れる。2025年7月5日のシンガポール公演をもってメンバーの一人・RYOKIが活動休止を発表。同年11月8日、グループからの正式な脱退が発表された。これからという時期に、グループは6人体制での再出発を余儀なくされました。
ここでもう一つ思い出しておきたいのは、BE:FIRSTがこれまで音楽以外の話題にもたびたび晒されてきたグループだということ。良くも悪くも、この4年半、彼らは音楽以外の領域でも常に注目を浴びてきました。しかし彼らは、そのたびに音楽で応えてきた。これは、BE:FIRSTというグループのDNAに刻まれた性質と言ってもいいのかもしれない。
それでも、音楽は止まらなかった ― 「夢中」の大ヒット
RYOKI脱退発表前、グループ最大の困難の最中にリリースされたのが、フジテレビ木曜劇場「波うららかに、めおと日和」主題歌の「夢中」です。
この楽曲は、オリコン週間デジタルシングルでも初登場1位を獲得。MUSIC AWARDS JAPAN 2026のダンス&ボーカル楽曲賞にもノミネートされています。
なぜこのタイミングで「夢中」がここまで刺さったのか。
これはあくまで私の仮説ですが、BE:FIRSTが直面していた困難と、楽曲が描く「日常を愛しんで生きる尊さ」というテーマが、聴く人の心に重なった部分があるのかもしれない。
"特別ではない幸せ"を歌った曲が、大きな揺らぎの渦中にあるグループの口から発されたとき、そのメッセージはより深い意味を持ってBESTYや多くの人に届いた可能性があったのではないでしょうか。

そして何より、彼らの記録にはBESTYと呼ばれるファンの存在を抜きには語れません。
困難のたびにグループを支え、推し続けてきたBESTYの存在が、「夢中」のヒットを後押しした側面は確実にあります。
そして「Rondo」 ― 5周年プロジェクトの中で放たれた、宣言
2026年3月16日、6人体制となったBE:FIRSTは「BE:FIRST ALL DAY」を先行配信。これが「BE:FIRST 5th Anniversary Project」第1弾シングルの幕開けでした。
楽曲はBillboard JAPAN Hot 100で自身通算12作目となる週間1位を獲得。MVは800万回再生を突破。6人体制への移行が音楽のクオリティを落とすどころか、新しい強さを獲得していることを、数字が証明した瞬間です。

そしてその同シングルのカップリング曲として、5月4日に先行配信されたのが「Rondo」です。SKY-HIとメンバー6人が作詞・作曲に参加し、Chaki Zuluがプロデュース。パイプオルガンや讃美歌を想起させるフレーズの上で、6人がマイクリレーを展開するゴシックなヒップホップナンバーです。
その中で放たれた「JPのレベル上げすぎちゃった?」という一行。
THE FIRSTの段階で「絶対うまくいくわけがない」と言われ、デビュー後も「アイドルかアーティストか」と問われ続け、最大の試練を超えて6人で再出発した者たちの言葉だと思って読むと、このフレーズはまったく違う響きで聞こえてきます。
傲慢な勝利宣言ではなく、ここまで歩んできた誇りと、これからもレベルを上げ続けるという挑戦状。それが同じ一行に同居しているように思えます。
王者なのに、挑戦者
BE:FIRSTは、デビューから5年目を迎えるいま、日本のダンス&ボーカルシーンの紛れもない王者の一角にいます。ドームツアー、ワールドツアー、Spotify月間リスナー数、どの指標で見ても、彼らは確実にトップクラスに位置しています。
しかし同時に、彼らはまだ挑戦者でもある。
5周年プロジェクトはまだ序章で、第2弾シングル「Missing」が2026年7月1日にリリース予定。5月16・17日には自身初のスタジアムライブ「We are the BE:ST」を味の素スタジアムで開催。さらにフィリピンを代表するボーイズグループSB19のマニラ公演にスペシャルゲスト出演も決定し、アジア展開も加速している。
&TEAMのように海外から評価されるグループ、M!LKのようにバズ起点で新しいリスナーに見つかったグループ、Snow Manのような大型アイドルグループ。日本の音楽シーンは目まぐるしく動き続けています。
その中で、BE:FIRSTは常に新しい場所を目指し続けている。
王者の余裕でいるのではなく、王者なのに挑戦者であり続ける。これがBE:FIRSTの本質であり、BESTYが彼らを推し続ける理由でもあるのではないでしょうか。
BE:FIRSTがこの4年半で日本のダンス&ボーカルシーンに残した足跡は、確実に大きい。「JPのレベル上げすぎちゃった?」という一行が、強気でありながらどこか説得力を持って響くのは、その足跡の重みがあるからです。
5周年のBE:FIRSTは、王者であり、挑戦者である。
次の5年で彼らがどこまで行くのか、これからも楽しみに見守りたいと思います。
最後まで読んでいただきありがとうございました。
趣味でボイグル(2010年以降にメジャーデビューした日本拠点のボーイズグループ)34組を対象に音楽業界分析を行っています。X: @rinenjp3
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