連載 第17回 行ったつもりでWORLD息子よ、世界には「神様が住む場所」が本当にある。
アメリカ西部、アリゾナ州とユタ州の境に広がる赤い大地。
そこに、映画で何度も見たことがある景色がある。
モニュメントバレー。

西部劇が好きなら、一度は見たことがあるはずだ。
ジョン・ウェインが馬を走らせるあの景色。
「アメリカ」と聞いて、多くの人が思い浮かべる風景そのものだ。
だがな、息子よ。
あそこは単なる絶景ではない。
ナバホ族にとっての聖地なんだ。
巨大な岩山は、何億年もの歳月をかけて風と雨が削り出した自然の彫刻。
「ミトンビュート」や「メリックビュート」と呼ばれる岩山は、まるで神々が大地に置いた記念碑のようにそびえ立っている。
だから、あの場所には不思議な静けさがある。
風の音しか聞こえない。
人間が小さく感じる。
俺は思うんだ。
人間は便利さばかり求めるようになった。
高層ビルを建て、道路を造り、夜でも昼のように明るくした。
だが、本当に心が落ち着く場所は、何千年、何万年と姿を変えずに残ってきた自然なのかもしれない。
ナバホ族は、この土地を祖先から受け継ぎ、大切に守り続けてきた。
1958年には、アメリカ初の部族公園として「モニュメントバレー・トライバル・パーク」が設立され、現在もナバホ・ネーションによって管理されている。観光地でありながら、今もなお人々の信仰や文化が息づく、生きた聖地なのである。
もちろん、景色だけでも圧倒される。
朝日は岩山を真っ赤に染め、
夕暮れには長い影が砂漠を覆う。
夜になれば、街明かりのない空には満天の星。
都会では絶対に見ることのできない宇宙が広がる。
俺は、こういう景色を見るたびに思う。
「人間は自然を征服しているんじゃない。」
自然に生かされている。
だからこそ、聖地は守らなければならない。
写真だけ撮って帰る場所ではない。
そこに暮らしてきた人々への敬意を持ち、大地の静けさに耳を傾ける場所なんだ。
息子よ。
人生で一度くらいは、こんな景色を見てほしい。
テレビでも写真でも伝わらない。
あの赤い大地に立った瞬間、
きっと、お前も言葉を失うはずだから。
