テニス上達メモ189.「イラッ」と「イタッ」は同じこと――大谷翔平のしなやかさ、コナーズの闘志
「あのミスさえなければ……」と、試合中に引きずってしまう。
実は「イラッ」とするのは健康な証拠。
いい人ぶって「抑圧」すると問題化します。
怒りの圧縮で心は原子爆弾になる。
大谷翔平やジミー・コナーズ――怒りの取り扱い注意点。
▶引きずる執着が流れを悪くする
よく「あのポイントでミスしたのが敗因だ」などと言いますが、ミスそのものは、大きな問題とはなりにくい。
問題となりやすいのは、ミスしたあとの心の執着です。
「あのポイントでミスをした」という思い(怒り)を引きずってしまうと、次の問題に連鎖します。
「次のポイントは慎重にいこう」と弱気になったり、「パートナーに申し訳なかった」と遠慮したりする「執着」が、悪い流れを引き寄せます。
▶「イラッ」と「イタッ」は健康な証拠
怒ることと、怒りを引きずることとは、別です。
意外かもしれませんが、怒れることは、人として健康な証拠です。
危険にさらされたら自己防衛本能が働いて、犬だって猫だって怒ります。
「イラッ」を感じないのだとすれば、画鋲を踏んでも「イタッ」と感じないようなものです(関連記事「違和感を無視すると、大やけどする」)。。
でも、その怒りを引きずると――
イラッとするのは仕方がないけれど、イライラし続けると、集中できません。
そして引きずるのは「ここで怒ったら人として未熟だ」「器が小さいと思われそう」「相手の機嫌を悪くしてしまう」などと、むしろ怒りを抑圧するせいなのです。
結果、余計に長引かせる。
▶怒りの高密度化が、心を壊す
抑圧――つまり怒りの圧縮されたエネルギーが働くから、病みかねません。
抑圧するほど高密度化します。
だから心は原子爆弾なのです(関連図書『こころは原子爆弾―その巨大なパワーを有効に使う方法』アルボムッレ・スマナサーラ著、国書刊行会刊)。
怒りという感情を、機能的に見ることと、怒りを爆発させることとは、似て非なるものです。
▶「グルルゥーーー」と「ゴロにゃん」
犬も猫も、意にそぐわないと「グルルゥーーー」と怒りはするけれど、引きずりません。
怒ったと思ったら、直後には「ゴロにゃん」しています。
一方で怒らない、いわゆる「いい人」ほど、怒りを心の中にたぎらせ続けます。
そういう人は怒りによって、病みかねません。
▶大谷翔平は犬猫のように
大谷翔平も、デッドボールを当てられたその瞬間は怒った(困った)のでしょうけれども、あまりにも切り替えが素早いので、怒ったように見えません(関連記事「大谷翔平は怒らない──怪我やデッドボールさえ進化の糧にする「見方」の話」)。
彼は、犬猫のように心が素直です。
世界的スーパースターになったから、怒らないのではありません。
怒らない(怒り続けない)から、世界的スーパースターになったのです。
「順序が大事」です。
▶ポイントに「格差」をつけるのは、あなたのエゴだ
話を戻して、あるポイントを失って怒りを引きずる。
「あのポイントを取っていれば」などと後悔する。
しかしそもそも、ゲームの中に重要度の高いポイント、低いポイントなどあるでしょうか。
すべてのポイントが同じ価値を持ちます(関連記事「シナーが上回り、ジョコビッチが勝った理由」)。
「あのポイントは重要だったのに……」と振り返ったりするのは、過去を引きずっている執着です。
▶だからコナーズは諦めない
ブレークポイントやマッチポイントは、主観的には重みが感じられるけど、ポイントとして客観的に重いわけではありません。
等価なはずです。
「俺はすべてのポイントをマッチポイントだと思って戦っている」 と言ったのは、ジミー・コナーズでした。(関連記事「リードされても、『負け』ているわけではない」)
良し悪しかもしれませんが、ゲームの1ポイント目からマッチポイントと同じ心境で、コナーズはプレーしていたのかもしれません。
1991年全米オープン、エステューサの黄色いラケットを手に、ドフラットで真っ向勝負。
39歳でフラッシングメドウを駆け上がりました。
当時の39歳といえば、今でいえば49歳相当と言っては、言いすぎでしょうか(私もまだ若かったから、余計おじさんに見えたのか?)。
https://www.youtube.com/watch?v=e38U3Oa3s5s
▶理屈で怒りを抑えるな
まとめます。
ミスした気持ちを引きずるから、不利を招きます。
瞬間的にイラッとするのは仕方がないけれど、イライラし続けると集中できません。
断ち切れば、悪い流れも断ち切れる。
そしてイライラし続けないためには、イラッの感情を理屈(「未熟だ」「器が小さい」「寛容でいたい」などという思考)で、無理やり抑え込まないことが、肝要です。
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(テニスゼロ)
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テニスゼロ代表
吉田無型(よしだ・むけい)
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スポーツ教育にはびこる「フォーム指導」のあり方を是正し、「イメージ」と「集中力」を以ってドラマチックな上達を図る情報提供。従来のウェブ版を改め、最新の研究成果を大幅に加筆した「note版アップデートエディション」です 。https://twitter.com/tenniszero