【ドキュメンタリー】『ワシントン アメリカ初代大統領(1話)』〜軍事というOSの上に立つ国家。ワシントンの生涯から読み解くアメリカの成り立ち
視聴環境:U-NEXT
〈内容〉
アメリカ初代大統領ジョージ・ワシントンの生涯を、再現ドラマと専門家の解説を交えて描く3話完結の歴史ドキュメンタリー。
〈感想〉
本作を鑑賞するまで、私はワシントンに対して「軍人出身の誠実で優れた政治家」という、教科書的なイメージを抱いていました。しかし、その印象は本作を通じて大きく覆されました。
本作が描き出そうとしたのは、神格化された英雄ではなく、一人の「生身の人間」としてのワシントンです。
有名な「桜の木を切り、正直に白状して褒められた」という逸話は一切登場しません。それどころか、物語は「正直者のワシントン」とは正反対の、狡猾で政治的な嘘に彩られたエピソードから始まります。
それは、弱冠22歳のワシントンがイギリス軍の小隊を率いた初陣での出来事です。彼はフランス軍の野営地を奇襲して撃破しますが、実はその部隊は休戦交渉のための使節団でした。この失態によりワシントンは降伏を余儀なくされ、自身の非を認める文書に署名します。これが後の戦局に大きな悪影響を及ぼすことになるのですが、驚くべきはその後の彼の行動です。
ワシントンは知人や報道関係者に対し、「自らの手腕でフランス軍と停戦に持ち込んだ」という偽りの手紙を送り、地元で英雄として喝采を浴びたのです。後にフランス側から正式な降伏文書が公表されても、彼は生涯その事実を否定し続けました。「嘘も言い続ければ真実になる」とは、トランプ前大統領の師である弁護士ロイ・コーンの言葉ですが、ワシントンの初期の名声もまた、こうした虚飾によって築き上げられたものだったとのことです。
また、興味深かったのは、元大統領ビル・クリントンや元国務長官コリン・パウエルが解説者として出演していた点です。彼らの言葉には、自身の政治経験や軍事戦略の重みが反映されており、特にパウエル氏によるワシントンの軍歴の分析は、実体験に基づいた説得力がありました。
他にも、188センチという当時としては異例の高身長が社交界で武器になったことや、家庭の事情で高等の教育を受けられなかった学歴コンプレックスを、実戦経験で補っていった背景など、興味深い事実が多々ありました。農場主としても、最先端の輪作を取り入れるなど、非常に合理的で有能な人物であったことも印象的です。
本作を通じて感じたのは、アメリカという国家の性質です。アメリカは建国前から現代に至るまで、絶えず戦争を続けてきた国です。初代大統領が軍人出身のワシントンであったという事実は、この国が「軍事」という根幹(OS)の上に成り立っていることを象徴しているように思えました。
アメリカ成立前夜、人々がいかにして「アメリカ人」というアイデンティティを形成していったのか。第1話のラストで、初陣の惨めな失敗を乗り越え、総司令官としてイギリスに立ち向かっていくワシントンの姿には、一人の人間の成長の物語として純粋に感動しました。この頃のアメリカの歴史に疎い私にとって、建国史を知る上での極めて優れた教材となった作品でした。
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