帰ってきつつあるオアシス【続 アンダルシアの強い日差しと乾燥と硬水に闘いを挑みたい私の洗顔珍道中】
一昨日から、熱風がやってきている。
ただでさえ、今年は既に気温が34度ぐらいなのだが、そこへ熱風まで加わると、外を歩くだけでエネルギーを消耗する。

先日、断水になるかもしれないと書いた。
作業前日の夕方以降にだろうか、アパートの共有スペースに貼られたらしいお知らせの紙を見た夫が慌てていた。
12時間前通知ぐらいであるが、通知があったこと自体に感動を覚えてしまう。

あれ。
時間の箇所を二度見する。
8時から11時30分
ジョージから聞いた「9時から11時」という予告よりも時間が早まり、そして延びていた。
しかし、アンダルシアよ。この町に住んで7年になろうかという私を甘くみてもらっては困る。
こんなこともあろうかと、ジョージと話してから水を多めに買いに行き、2リットルの空のペットボトルにも水を貯めておいた。そして、今や私には、無敵のアグアミセラだってある。アンダルシアの水道よ、どこからでもかかってこい。

当日朝は、早めに起きて朝食やお手洗いなどを済ませた。
家で仕事をしていると、案の定、今朝初めて断水に気づいた近所の人たちが、ジョージに文句を言っている声が窓越しに聞こえる。さすがに、前日の夕方通知は、麗しのジョージをもってしてもだめだったようであった。

◆
今日書きたかったのは、断水の話ではなくて、魔法のような液体、人呼んで、アグアミセラ(ミセラーウォーター)のことである。
先日、乾燥と硬水に勝ちたいと書いたら、優しい皆さまが実体験とともにたくさんのアドバイスをくださった。
「きめ細やかな肌」の国の代表として、乾燥と闘う同志である皆さまは、私の想像していた通り、いや、それ以上に、とても勇敢で、かっこよかった。
コメント欄に書かれていたのは、これまでにいかにいろんな方法を試され、いかに試行錯誤されてきたかがわかるメッセージばかりであった。私は大変に勇気づけられ、あのnoteを書いた翌日にparafarmacia(ドラッグストアのようなところ)に飛んで行った。アグアミセラを買いに。
◆
いつものお店に入り、目当てのものを探す。
ビオデルマ、アベンヌ、ラ ロッシュ ポゼ
全部カタカナで、何かの呪文のようである。
スペインでも手に入るものということで、まずは、このどれかを試してみることにした。
奇跡的に、この町に全部あった。
まず、アベンヌのボトルを手に取る。
アベンヌなんて、いまだかつて購入したことがないが、闘いに勝つためには選択肢の一つとして考えてみようではないか。
PIEL GRASA(オイリー肌用)とある。
自分の肌がオイリーかどうかなどわからないのだが、乾燥に悩んでいるので、ここはオイリー肌用を購入するのは避けておこうとボトルを棚に戻す。その隣には、PIEL SENSIBLE(敏感肌用)と書かれたボトルがある。これか!と手に取ると、こう書いてあった。
ミセラ―ローション
一旦落ち着こうと思い、文字をゆっくりと目で追う。
3回読んだが、オイリー肌用のはミセラーウォーターとあるが、敏感肌用のはミセラ―ローションと書いてある。
ミセラーウォーターじゃなくて、ミセラ―ローション
アグアミセラの応用版だろうか。
一旦なかったことにして、隣の棚に移動する。
ラ ロッシュ ポゼだ。
こちらは、通常のアグアミセラの横にオイル入りと書かれたボトルもあった。
ミセラはミセラでも、ローションとオイル。
このあたりから、私の頭は考えることをやめてしまったため、お店の人に相談することにした。
◆
「アグアミセラを探しているんですが、今回初めて使います。この3つの会社のどれかにしようと思うんですが、ウォーターとローションとオイルと、どのような違いがありますか」
「ビオデルマは私も使ってるの。後はわからないわ、使ったことないから」
私の声に振り返り、笑顔で答えてくれたお姉さんは、昔、習い事の発表会のとき、よくわからないままアイメイクをした私が「あなた、それは京劇でしょうが!」と先輩に怒られたときのそれより3倍ぐらい濃いメイクを施していらっしゃった。
まつ毛はマスカラ1本分使ったのだろうかという重みと迫力であり、アイラインは耳の方までひかれていた。一瞬驚いたが、すぐにそれは私の「ドラッグストアはこういう場所だろう」という勝手な先入観のせいであったかもしれないと思い直す。実際、お姉さんにそのメイクはとても似合っていた。
ビオデルマ以外は知らないわ、とのことだったので、ミセラはミセラでも、ウォーターとローションとオイルの違いは何ですかと聞くのはやめにした。代わりに、お姉さんが使っているというビオデルマについて聞いてみることにした。
「ふふふ。私はね、中国人の肌に憧れているわけ。だから、あなたたちのように……」
と言って、私の顔を改めてじっくり見たお姉さんは、私の肌がお姉さんの憧れる基準を満たしていないことに気づいたのか、素早く話を変えた。
「とにかく、中国の人は肌がきれいなわけ。だから、私はそうなるために、スキンケアもちゃんとしてるのよ!」
「素晴らしいですね。ところで、アグアミセラは、メイクをしていても、拭き取りだけできれいになると聞きました」
「今日は私メイク薄めなのよ。まあ見たらわかると思うけど」
と言って、お姉さんは、勝負メイクのときは、まずアグアミセラを使ってからオイルを「浴びる」ことを教えてくれた。オイルは韓国のものを使っているとのことである。あなたの国、韓国にあるでしょこの商品と、お姉さん。私がさっきから相槌を打ちながら、たびたび、そしてさりげなく挟んでいた「ところで、私は日本から来ました」という一言はなぜかお姉さんの耳には届かず、どうやら私は、中国か韓国から来た、肌が乾燥している人になっているようだった。
結局、ミセラ―ウォーターが各会社でどのように違うのか、という話にはたどり着けず、お姉さんのスキンケア話を15分程聞き、その途中で、アベンヌの日焼け止めクリームを探していたセニョーラが来て、彼女が香料なしのものを探していたので、なぜか私も一緒になって探すことになり、気が付いたら30分が経過していた。
この30分で私が得た情報は、お姉さんが今日は勝負メイクではないこと、中国と韓国のスキンケア用品を使っていること、その日はアベンヌの日焼け止めの香料なし版は在庫がなかったことであった。
このあたりでもう思考力は停止しており、とりあえずどれかを買って試してみることにした。
お姉さんおすすめビオデルマの棚に行く。
「アグアミセラ」
の言葉を探す。
果たして、ボトルはフランス語表記であった。
事前にネットで調べたとき、敏感肌用のボトルのキャップは確かピンクであった。私はフランス語が「メルシー」と「トレビアン」と最近知った「饅頭」ぐらいしかわからないが、ピンクのキャップを見つけたので、勢いよくそれを手にとりレジに向かった。お姉さんは私が手に持っているものを見て、大変満足そうな顔であった。
◆
その夜、早速使ってみる。
魔法の液体をたっぷりコットンに含ませ、ぽんぽんと肌にあってていくような感じでやってみた。
シャワー前に1回、シャワー後に1回。
シャワー前は日焼け止めやメイクを落とすため、シャワー後は硬水に含まれる石灰を落とすため。
なんと、これだけでいいのか!

使い始めて2週間が経過した。
泡で顔を洗わないことに慣れるのに1週間ぐらいかかったが、慣れてしまえばとても楽である。特に、断水時とワクチン接種後は、拭き取りだけで済むのがありがたかった。このように、思わぬところで実力を発揮してくれたこともあり、私の中でのアグアミセラの株がますます上がった。
1週間目ぐらいから気づいたのだが、肌の色が少し明るくなったような気がする。ごわごわ感も前より少ない。
どうだろうかと夫に聞くと、つるつるですよ! と嬉しいことを言ってくれる。
もしかすると、死海へ行く途中に見た砂と岩の山のような肌に、オアシスが生まれつつあるのだろうか。
肝心の乾燥問題であるが、目じりの皴にはまだ別れを告げられていない。こちらは、ビオデルマのもう少し保湿力の高いブルーのボトルを試してみるなどして、これから試行錯誤していこう。
この2週間ですっかりアグアミセラに魅せられた私は、これからもスペインにいる間はアグアミセラを使い続けるような気がしている。
一つ懸念点があるとすれば、2週間で500mL入りボトルの半分以上を使ってしまったことで、もしかすると使い方が間違っているのだろうかということである。
また、頂いた皆さまからのメッセージには、乳液やオイルでの拭き取り、シアバター、ローズウォーター、ワセリン、ベビー用品など、今の私にはまだレベルが高いが、今後試してみたい上級者向けの貴重な情報がたくさんあった。
この勝負、皆さまのお力添えのお陰で、勝たせていただけるかもしれません。
これからも私の洗顔珍道中は続く。
アンダルシアの日差しと乾燥と硬水に勝つそのときまで。
