DOW SELLING CLIMAX ?!
3/11発表された1月米JOLTS求人件数は、市場予想を上回ったものの、トランプ政権が、カナダに対する鉄鋼・アルミ関税を50%に引き上げる決定を行うと、ニューヨークダウは500ドル近く下落し、直近高値から10%近い値下がりとなった。トランプ関税が株価センチメント悪化の要因と考えられるが、今週の下げが、この局面でのselling climaxとなるのか検証する。
1.株価調整のきっかけはトランプ政権誕生とDeepSeekショック
ニューヨークダウは、図表1の通り、1月末に付けた直近高値の45,000ドルから現在の41,500ドルまで10%近く値を下げている。今回の米国株安を牽引したのはマグニフィセント・セブンに代表されるナスダック市場のハイテク株であるが、その中でも最大の値下がり銘柄は、テスラで高値から50%以上下落している。イーロン・マスク氏がトランプ政権に入り、政府効率化省で連邦政府職員の大幅削減に取り組む一方、ドイツの総選挙で極右政党を支援したことなどが、消費者のテスラ離れを誘発したことが主因と考えられる。2番目の下落幅は、エヌビディアで約30%下落している。これは、いわゆる1月末のDeepSeekショックで、これまでのAI投資の過剰感が意識されたため調整売りを誘っている。

2.トランプ関税が押し下げる景気センチメント
トランプ関税の発動と中国・カナダによる報復関税の発動は、米国内のインフレ期待を高め、消費マインドを低下させている。その結果、アトランタ連銀のGDPナウで今年第1四半期GDP予想が2%台のマイナス転換しており、米国の景況感が急速に悪化していることが株価低迷の大きな要因となっている。
3.VIX指数(恐怖指数)が昨夏以来の高値に近づく
投資家の不安心理を反映するVIX指数が基準値の20を超え、図表2の通り、足元30に接近するまでに市場の投資センチメントが悪化している。しかしこれは、市場の過度の悲観を表しているとも言え、これ以上の株価調整余地が狭まっている証左とも考えられる。

4.米国株独り勝ちから適正水準への調整?
現在の調整は、昨年の米国株が主要先進国中で、最も高いパフォーマンスを記録したことの、適切な反動安であるとも言える。また、今年に入り、日米の株価は下落しているものの、欧州や香港の株式市場は上昇基調を維持するなど、世界同時株安となることで、世界恐慌が懸念されるような事態からは程遠い状況にある。今回の米国安は、過度な強気相場からの適切な調整で、今週の下げがselling climaxとなる公算は相応に高いと考える。
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2025年3月12日執筆 チーフストラテジスト 林 哲久

