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円高を懸念する財務相!

3/11日経平均株価が1,000円近く下落し、36,000円割れが視野に入り、ドル円相場も146円台まで下落した局面で、加藤財務相が、「為替、影響を注視し適切に対応する」と円高を懸念する発言を行った。その背景を解説し、今後の金融市場への影響を考察する。


1.業績悪化が懸念される日本企業

日本の輸出企業の過半が今年度の想定為替レートを150円以上に設定しているため、現在の円高水準の定着は、経常利益の押し下げ要因となる。また、GPIFを含む日本の金融機関は、期末に向けての株安・金利高・円高で、内外株式・債券の含み損を多く抱え込むことになっており、今年度決算で減損処理を迫られるなど悪影響が懸念される事態となっている。

2.トランプ政権が委縮させる世界経済

トランプ政権による度重なる関税発動は、世界経済の今後の後退観測を高め、世界の金融市場の不安定化を招いている。3/11武藤経産相が訪米し、ラトニック商務長官に鉄鋼・アルミへの関税対象から日本を除外するよう申し入れを行ったが、米国から受け入れを拒否されている。円高に加え、今後、自動車に対する関税が発動される事態に至れば、日本企業の業績への悪影響は更に拡大することになる。

3.インフレ抑制・景気刺激に舵を切らない石破政権

日本の第4四半期GDP第二次速報値では、インフレが上方修正されながら、経済成長率が下方修正される悪い結果となった。それにもかかわらず、石破政権は、インフレ抑制のためのガソリン暫定税率の廃止や消費拡大のための基礎控除・給与控除額拡大を実質的に先送りにしたことで、現在の高インフレ・低成長に政治が何の施策も打たない姿勢を続けている。

4.円安も円高も受け入れられなくなった財務省

円安の進行は輸入インフレを惹起することで、受け入れられない一方、円高も企業業績の悪化に繋がることで受け入れられなくなった財務省は、今後の相場変動自体を許容できないジレンマに陥っている。

5.トランプ政権の為替政策

トランプ米大統領は、日本が円安誘導により米国を不利にしていると日本の為替誘導を批判している。一方、ベッセント財務長官は、原油増産によりインフレを抑制し、長期金利の低下を通じてドル安に向かえば、対外不均衡の是正に繋がるとのスタンスである。しかし、足元では、関税政策が消費者のインフレ期待を高め、消費意欲を削ぎつつあることで、景気後退懸念が浮上するなど、経済のソフトランディングに失敗するリスクが生じている。今後、米国金融市場が債券安・株安・ドル安のトリプル安に陥ることで、トランプ政権の経済政策が失敗に終わる懸念が生じている。

6.綱渡りの米財政政策

3/14につなぎ予算の期限が到来するのに伴い、トランプ米大統領は、予算案可決をめぐって政府機関一部閉鎖の事態となるかもしれないと発言した。もし予算案延長に失敗すれば、格付け機関による米国債格下げリスクが高まることで、米金融市場が混乱する可能性がある。問題は、トランプ政権自体が連邦職員の大幅削減に取り組んでおり、政府機関の閉鎖に同調しかねない危うさを含んでいる点が懸念材料である。

7.日本銀行の金融政策の行方

最近の円高・株安により、日本経済にデフレ圧力が高まっているにもかかわらず、植田日銀は、再利上げの方向性を維持している。植田総裁は、春闘での賃上げ予想が順調であることを理由に挙げているが、足元では、賃金上昇が物価上昇に追いつかず、実質賃金が3ヵ月ぶりにマイナスに転落した段階でも、利上げの旗を降ろさないことが景況感を弱めている。現在の日本経済と日経平均株価の低迷は、石破政権・植田日銀による緊縮財政・金融引き締め政策による人災である。いち早く、積極財政に舵を切ったドイツを見習って、必要な財政出動を行うことが、唯一の袋小路脱却策となることから、7月の参議院選挙で成長路線を掲げる政権に移行することが、株価と為替安定への近道であろう。

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2025年3月11筆 チーフストラテジスト 林 哲久


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