金が押し下げる米国GDP!
アトランタ連銀のGDPナウによると、今年第1四半期米国GDP成長率がマイナス2.4%、と前期比大幅に悪化する見通しとなっている。その一番大きな要因は、外需の減速である。すなわち、米国1月貿易収支が、前月比300億ドル以上悪化し、史上最大の1,300億ドルを超える赤字を記録したことが影響している。輸入増加の中で、特に金の輸入が急拡大したことが原因となっている。その背景を説明し、今後の米国経済の行方と金融市場への影響を解説する。
1.金輸入大幅増加の背景
貿易収支大幅悪化は、トランプ関税発動を恐れた米国への駆け込み輸出が急増したことが原因であるが、その中でも、金の輸入が200億ドルに達したことが外需減速の最大の要因となった。トランプ関税の対象に金も含まれるとの懸念が強まったことの他に、ロンドンの金現物市場とニューヨークの金先物市場の価格差が、過去最高水準にまで拡大したため、割安な金現物をロンドンからニューヨークに移送し、現物と先物との裁定利鞘を取得する取引が急増したことが背景にある。昨年の世界的な金価格の高騰を受け、中央銀行による外貨準備に占める金保有割合を増加させる動きに加え、個人や機関投資家が金ETF投資を急増させたことで、先物価格に連動するETFの金価格が現物価格と乖離して高騰したことが要因となっている。
2.トランプ関税が縮めた金現物価格との乖離
現在は、ニューヨーク先物価格がロンドン金現物価格に収斂する形で、価格差が縮小している。これは、トランプ関税の影響から、世界の金融市場はリスクオフの動きが金相場にも波及したことで、2,900ドル前後での揉み合い推移となっていることが原因と思われる。しかし、今後、地政学リスクの高まり等を契機に、いつ金買いが再燃するか予断を許さない状況にあり、供給を大幅に上回る潜在的な需要が早晩、金価格を押し上げることになろう。今後も投資主導での金買いが盛り上がるタイミングで、折に触れ金先物価格が主導する展開での現物価格との剥離は断続的に発生しよう。

3.外需の減速が内需に波及するのか
前述の1月の1,300億ドル規模での米貿易赤字は、一時的な増加である可能性があるが、トランプ関税により国内インフレ懸念が強まれば、個人消費に悪影響を及ぼす可能性は相応に大きく、トランプ政権による連邦職員大幅削減などによる景気下押し圧力も高まっており、今後、外需の減速が内需に波及すれば、GDP成長率マイナスが長期化する懸念がある。
4.今後は貿易量縮小の懸念
トランプ関税の発動を受け、中国やカナダなどの貿易相手国が報復関税を発動していることで、今後、世界の輸出入に係わる貿易取引が阻害され、世界経済が縮小均衡に向かう公算が大きい。3/10ニューヨークダウは、一時1,100ドルの急落をみせたことで、暗号資産や商品市況など多くの資産が下落するリスクオフ相場が始まっており、トランプ政策が世界経済や金融市場の下押し圧力となる地合いが継続しよう。
情報は、X(旧Twitter)にて公開中
前回の記事はこちら
2025年3月11日執筆 チーフストラテジスト 林 哲久
いいなと思ったら応援しよう!
この記事は noteマネー にピックアップされました

