どこまで進むDOW売り・DAX買い?!
ニューヨークダウ(DOW)のPER(株価収益率)は27倍、ドイツDAX指数は23倍でダウの方が割高である。また、債券との比較で株式の割高・割安を見るイールドスプレッドを比較すると、DOWが米国債比割高な水準にある一方、DAXは依然、割安な水準にある。今後、DOW売り・DAX買いがどこまで進むのか、解説する。
1.株価を犠牲にするトランプ政権
トランプ米大統領は、連邦職員削減による歳出削減政策と関税政策が、米経済を景気後退局面入りさせるのではないかとの質問に対して、「現在は、非常に大きなことを成し遂げる過渡期にある」と発言し、短期的な景気減速や株価下落を受け入れる姿勢を示している。
2.政府職員削減の本当の狙い
イーロン・マスク氏率いる政府効率化省による連邦政府職員の大幅削減は、歳出抑制により恒久減税実施のための財源確保を表向きの理由に掲げている。実際には、連邦職員の8割以上が民主党員である実態に鑑み、ディープステート(民主党を中心とするグローバリスト勢力など)の一掃を図っていると考えるのが理にかなっている。そのため、トランプ政権は、短期的な雇用情勢の悪化や景気減速には目をつぶると腹をくくっている可能性がある。
3.関税の対象に東アジア諸国が入らない背景
トランプ関税の現在の主たるターゲットは、カナダ・メキシコ・欧州など対米黒字を多く抱える国が対象となっているが、同じ様に対米黒字を掲げる日本・韓国・台湾・ベトナムなど中国を除く東アジア諸国が除外されているのが不自然に見える。
EUの中でも対米黒字が多いドイツはトランプ関税の主たる標的となってきた。それに加えイーロン・マスク氏が極右政党AfD(ドイツのための選択肢)を選挙応援したことの影響もあり、ドイツでは社会民主党政権が崩壊し、保守系のキリスト教社会・民主同盟(CDU・CSU)が政権を握ることになったことを、トランプ大統領は歓迎している。また、トランプ氏とウマの合わないトルドー首相率いるカナダへの圧力を強め、同氏を辞任に追い込むなど、国内同様、周辺諸国のリベラル勢力一掃を関税を武器に進めていると考えるのが自然であろう。
4.歴史的なドイツ財政政策の大転換
先月のドイツ総選挙で第一党になり、次期首相候補のメルツCDU党首は、米国とウクライナ鉱物資源契約合意が決裂したタイミングで、これまでドイツが戦後一貫してきた緊縮財政政策について、GDP1%以上の国防費増については、憲法が定める債務ルールの対象外とする財政政策の大転換を発表している。トランプ政権が駐独米軍を親露的なハンガリーに移転させる方針と伝えられるなど、米国が欧州の安全保障から距離を取る姿勢を示していることへの対応も含まれると考えられる。
5.市場のセンチメント一転させたメルツショック
ウクライナ戦争開始以降の対ロシア制裁発動により、エネルギー価格の高騰と景気後退に苦しむドイツは、2年連続のマイナス成長に沈んでいたが、今回の国防費大幅増やエネルギー政策の転換により、メルツ新首相がドイツ経済を成長軌道に回帰させられる可能性が出てきた。この決定を受け、ドイツの長期金利が35年ぶりの大幅上昇となるなど、ドイツ金融市場のセンチメントは大きく転換することとなった。
6.DOW売り・DAX買いのクロストレードはどこまで続くのか
トランプ政権が、来月発動が予定されるEUなどへの相互関税やメキシコ・カナダへの25%関税を発動すると、対象国からの報復関税発動を招き、米国国内インフレ高騰のリスクが高まる。ベッセント財務長官も、「これまでは政府支出に病みつきになっていた。これからは解毒期間となる」と発言、短期的な米景気減速と株価調整を受け入れる発言ともとれる。
DAX指数は、図表の通り、ニューヨークダウとの連動性が高いものの、米国株にはパフォーマンスが劣後する動きとなってきたが、先週のメルツショック以来、DAXがアウトパフォームするだけでなく、逆連動の流れが生じている。割高な米国株が昨秋以来の40,000ドル近辺まで調整した場合の受け皿に、DAXが選択される可能性は高く、為替市場でのユーロ全面高の動きと相まって、DOW売り・DAX買いが進捗する結果、DAXが股裂き的に、今後25,000方向に水準を切り上げることを予想する。

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2025年3月11日執筆 チーフストラテジスト 林 哲久
