国のトップが決める株価パフォーマンス?!
ここに来て日米の株価パフォーマンスが低迷する中、ドイツの株価だけが好調を維持している。最近、国のトップが交代して以降、株価パフォーマンス格差が拡大している背景は、それぞれのリーダーの国政運営力の差と考えても差し支えないであろう。今後の主要3先進国の株価動向を予測する。
1.石破政権発足以降の日経平均株価
昨年10月石破政権が発足して以降、日経平均株価(ローソク足)は、40,000円台が上値の壁となって、直近では36,000円台まで低迷している。石破政権は、過去30年間見直されてこなかった基礎控除・給与控除の大幅引き上げを見送り、本来の基礎控除の趣旨に反する所得制限を付けるなど、膨らむ税収の国民への還元を渋り続けている。加えて、高額療養費制度の上限改定に着手し、難病患者の医療費引き上げを提案したことで、自民党内部からの反発もあり、その後見直し凍結を発表したものの、徹底した緊縮財政路線を採っている。石破総理は、実質賃金3年連続マイナスで国民生活が困窮する中、ガソリン税暫定税率の廃止にも及び腰で、国内のインフレを放置した結果、日本銀行の利上げ観測が円相場を押し上げ、日経平均株価の下落に拍車をかける悪循環を演出している。このような失政が続く限り、日経平均株価の反発は難しい。

2.トランプ政権が悪化させる米国の景況感
トランプ政権が矢継ぎ早に打ち出す関税カードが、国内の消費者のインフレ期待を高め、足元の消費マインドを落ち込ませた結果、第1四半期のGDP予想は3%近いマイナスに転換している。こうした景況感の悪化は株価にも悪影響を与えており、ニューヨークダウは、政権発足直後の45,000ドル台をピークに現在は、42,500ドルまで下落している。トランプ大統領は、株価を見ていないと強がるが、先週の株価急落を受け、メキシコ・カナダへの関税を急遽1ヵ月猶予するなど、自らの政策続行への迷いも見て取れる。
3.政権交代により、上放れたドイツ株式市場
ドイツ株式市場(DAX)は、昨秋の利下げ局面入りを好感して、右肩上がりの上昇を続けてきたが、2/24ドイツ総選挙において、キリスト教社会・民主同盟(CDU・CSU)が政権を奪取すると、メルツ次期首相候補は、安全保障にかかわる米国の欧州離れの状況を重く見て、先週、GDP1%を超える国防費増額を憲法が定める債務ルールの対象外とする大きな政治決断を行った。これをドイツ株式市場は、財政政策の大転換と好感し、DAXは更に上放れ、史上最高値を更新している。
4.今後の日米独の株価の行方
日本は、7月の参議院選挙で、石破政権が敗北して、必要な財政支出を行うと共に、ガソリン価格や米価抑制のための、必要な対策を打ち出せる政権に替わらない限り、現在の日経平均株価の低迷からは抜け出せない。加えて、トランプ政権によるメキシコ・カナダへの関税や自動車関税の行方次第では、日本の自動車メーカーが巨額な損失を被る可能性があり、まさに内憂外患の火だるま状態で、株価パフォーマンスは現在でも突出して悪い状況にあるが、更なる下値リスクに警戒が必要である。
一方、トランプ政権は、関税政策に関して内外識者からも多くの批判を受けており、実際にトランプ政権が命綱とする株価にも悪影響を与えている現状を踏まえ、少なくとも中国以外の同盟国や友好国への関税は、あくまで交渉カードとして利用するに留まり、実質的な発動は見送られる可能性がある。これを見る上で、4月上旬の相互関税発動がその試金石になると思われ、その差配が今後の米国株価動向の方向を決定することになろう。
また、ドイツの積極財政への転換について、大手格付け会社S&Pは、ドイツの政策転換は現在のトリプルAの格付けを維持する上でプラスになる、との肯定的なコメントを出しており、財政拡大が必ずしも格下げ要因にならないケースとして注目に値する。
総括すると、積極財政と金融緩和路線を維持するDAX指数は堅調を維持し、ニューヨークダウも関税政策見直しにより反騰の可能性を秘めている一方で、景気低迷下での緊縮財政と金融引き締め路線を堅持する日経平均株価だげが出遅れることで、米欧との株価パフォーマンス格差が更に拡大するリスクには留意が必要であろう。
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2025年3月10日執筆 チーフストラテジスト 林 哲久
