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ユーロより強いハンガリーフォリント!

ドイツがこれまでの緊縮財政を改め、国防費増強のために積極財政路線に舵を切ったことで、ドイツの長期金利が急騰、ユーロも対主要通貨で独歩高に転じている。その中で、ユーロより強い欧州通貨がある。それは、EU内で独自路線を歩むオルバン首相率いるハンガリーである。ハンガリーフォリントの魅力を解説し、ハンガリーフォリント円相場の行方を解説する。


1.ユーロをアウトパフォームし続けるハンガリーフォリント

ECB(欧州中央銀行)は昨年夏以降、景気低迷を受け、3/6の理事会まで5会合連続で利下げに踏み切り政策金利を2.5%としている。一方、ハンガリー国立銀行(ハンガリー中銀)は、インフレ率上昇を受け、政策金利を昨秋以来6.5%に据え置いている。そのため、ハンガリーとユーロの金利差が拡大し続けている結果、ハンガリーフォリントは、図表1の通り、対ユーロで年初来上昇し続けている。


(図表1 ユーロ/ハンガリーフォリント日次推移チャート 右軸:単位 ハンガリーフォリント 出典:Trading View)

2.ハンガリー中銀の金融政策

ハンガリー中銀のインフレ率目標の上限は4%であるが、1月のインフレ率は5.5%まで上昇してきており、これ以上上昇すると、金融引き締め政策に転じる可能性すら出てきている。一方のECBは、ドイツの経済政策が積極財政に転じたことで、インフレ期待が高まることを考慮し、現在の金融緩和政策を今後終了させる可能性があるが、市場の利下げ織り込みは、年内あと2回、中立金利とされる2%までの引き下げを予想している。従って、ハンガリーとユーロの金利差は当面拡大することはあっても、縮小に向かう公算は低く、ハンガリーフォリントが対ユーロで堅調推移を辿ると判断できる。

3.市場のユーロ円ポジション

ユーロの投機筋ポジションは、昨秋以来のECBの利下げ局面入りを捉えて、最近までユーロ売りポジションを積み上げてきており、年内に対ドルパリティー割れを見込む向きが過半を占めてきた。更に、トランプ政権誕生以降は、関税カードを連発していることで、金融市場のセンチメントは急速に悪化、世界の株式市場が不安定な値動きとなったことを受け、リスク回避の円買いポジションも増加している。その結果、ユーロ円相場は、今月一時155円を割り込む水準まで下落することになった。

4.市場センチメントを一変させたドイツの財政政策の大転換

米国の軍事力に過度に依存するNATOに不満を持つトランプ政権が誕生し、米国が欧州の安全保障に関与しない姿勢を打ち出したことで、NATO諸国は軒並み国防費増額を迫られることとなった。そういう状況下で、これまで財政規律に厳しい財政運営を続けてきたドイツにおいて、2/24総選挙で、積極財政を掲げるキリスト教民主・社会同盟(CDU・CSU)が勝利すると、米国がウクライナへの軍事支援一時停止を発表したタイミングで、憲法が定める財政ルールを、GDP比1%を超える国防費に関しては対象外とする大きな政策転換を発表した。これにより、ドイツの長期金利が急騰、ユーロ買い戻しが殺到し、これまでユーロに弱気であった市場のセンチメントが一変することとなった。

5.現状のユーロ円とハンガリーフォリント円相場動向

現在ユーロ円相場は、今週に入り、一時161円を回復するなど、急反発局面に入っているが、市場のポジションは、ユーロ円ショートを解消する段階にあり、ユーロ円ロングに転じ切れていない可能性が高い。今後、市場参加者がドイツの積極財政への転換を好感して、ユーロ円ロングに転じていくことを考慮すると、ユーロ円相場の上昇余地は大きいと判断できる。その結果、ユーロ円を上回る堅調トレンド維持するハンガリーフォリント円相場は、図表2の通り、今年の高値を上回ってきており、更なる上値余地を試す局面に入っている。

(図表2 ハンガリーフォリント円日次推移チャート 右軸:単位 円 出典:Trading View)

6.トランプ関税の行方

トランプ米大統領は、施政方針演説で、来月以降、欧州を含む高関税地域に相互関税を賦課する方針を明らかにしており、今後、ユーロに売り圧力が高まる公算が大きい。しかし、カナダ・メキシコへの関税賦課が来月まで猶予される措置が発表されており、欧州のような同盟地域には交渉の余地があることも事実である。欧州としては、米国への自動車関税引き下げと併せて、米国からのエネルギー輸入を増やすことで、トランプ政権と妥協の余地を探る余地は大きいと判断でき、必ずしもユーロが大きく売り込まれるとは限らない。むしろ、ドイツの財政政策転換がEU全体の防衛費増額に繋がり、それを米国が評価する可能性もあり、今後もぎりぎりの交渉が進められることとなろう。

7.オルバン首相の外交的強み

ハンガリーのオルバン首相は、EUの伝統的な国際協調路線とは一線を画し、ロシアからのエネルギー輸入を継続するなど、プーチン政権とは良好な関係を維持してきた。また、オルバン首相は、トランプ大統領ともウマが合い、大統領就任前にトランプ邸を訪問する仲であり、欧州と米国の間を仲介することもできる立場にある。今後、ウクライナ戦争が停戦に向かえば、ウクライナの復興期待からユーロやハンガリーフォリントが一段高となる可能性もあり、オルバン首相の動向にも注目が集まる。

8.良好な経済ファンダメンタルズを維持するハンガリーフォリント円の行方

ハンガリーは足元のハンガリーフォリント高にもかかわらず、経常収支の黒字基調を維持し、外貨準備高も過去最高水準まで順調に積み上げてきており、ユーロとは独立した財政運営を維持するメリットを生かして、機動的な財政・経済政策運営を行っている。最近では、中国の電気自動車メーカーの誘致に成功するなど、欧州における電気自動車生産のハブを目指す戦略を打ち出している。
ハンガリーフォリント円はユーロよりも4%金利の高いユーロ円という見方もでき、更に対ユーロで上昇を続ければ、ユーロ円を上回る為替益も期待でき、図表3の通り、昨年夏の高値を回復するポテンシャルを秘めていると判断できる。

(図表3 ハンガリーフォリント円週次推移チャート 右軸:単位 円 出典:Trading View)

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2025年3月7日執筆 チーフストラテジスト 林 哲久






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