変わる日本の投資家心理?!
昨年、金の店頭小売価格が史上初めて1万円の大台に乗った時には、自宅に退蔵する金資産をほくほく顔で金買取業者に持ち込む多くの人が報道された。しかし、先月末、金小売価格が2万円の大台に乗ると、現在は、金の購入に5時間待ちの行列ができているとの報道が出ている。こうした投資家心理の変化が日本株にも波及するのか解説した。
1.デフレからインフレ時代への変化
昨年までは、国民の間では依然デフレマインドから脱却できず、金高騰は、絶好の利食い売りのチャンスとの見方が主流であった。しかし、今年に入ると、日経平均株価が、史上最高値を更新し続け、都内のマンション価格が1億円を超えて上昇し続けるに及び、インフレ時代の到来を感じずにはいられなくなったと考えられる。
2.金高の背景
通常、金が高騰すると、ドルが下がるのが一般的であるが、ドル円に関しては、全く下がっていない。その結果、世界的な金価格の上昇は、日本での金の店頭小売価格にそのままスライドして反映するため、国民はその上昇を実感しやすくなっている。
3.インフレヘッジの必要性の認識
日本では、実質金利のマイナスが長期化し、インフレが常態化してくると、金融資産の大半を預貯金に退蔵していては、円の価値が大きく棄損するとの感覚を多くの国民が認識するに至ったのが、今回の金買い行列の背景にある。
4.日本株だけが投資対象から外れる日本人のトラウマ
日経平均株価が連日史上最高値を更新する中、新NISA経由での個人の日本株投資動向を見ると、依然流出傾向から脱出できていない。海外株に関しては、1兆円以上の買い越しに回復しても、日本株だけは手を出さない傾向が続いている。年配世代は、バブル崩壊の苦い記憶を引きずっている可能性がある一方、若年層は、より成長性の高い海外株への指向が強いように思われる。また、海外株は、円安ヘッジの思惑もあることで、長期積み立ての対象となっていると考えられる。
5.割安に放置される日本株にいつ日本人が回帰するのか
日本の実質金利のマイナス状態の長期化や、インフレ率を大幅に下回る長期金利の水準を考えると、日本株は明らかに割安に放置されていると考えるのが妥当である。日本株は、日本銀行の追加利上げ観測から、買いにくいとの意見も多いが、これは過去の過剰な金融緩和の調整に過ぎず、実質金利のプラス転換の道のりは遠いと言わざるを得ない。その意味で、多少の利上げを継続しても、行き過ぎたインフレ期待の高まりを抑制するのに役立ち、株価上昇の妨げになる可能性は低いと考えるべきである。
自民党総裁選で積極財政を掲げる高市候補が逆転勝利したことで、日経平均株価が年末に向け、5万円を目指すことによって、日本人が覚醒し、日本株市場に日本人マネーが回帰する事を期待したい。

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2025年10月6日執筆 チーフストラテジスト 林 哲久
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