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「世界に冠たる中小企業」講談社現代新書を読む

表題の本は、数年前に古本屋で買った新書です。
寝床そばに積み上げ忘れられてた積読本11冊のうちの一つ、
黒崎誠著「世界に冠たる中小企業」という講談社現代新書を読むことにします。


最上級の切れ味ニッパー

本書で、
最初に紹介される会社は、新潟県三条市の『マルト長谷川工作所』という、ペンチやニッパーなどの工具類を作る会社で、創業90年を誇る老舗企業です。

ごめんなさい。
実は、この新書は2015年刊の初版。
古本だから、記事は10年前の内容な訳で、この創業90年は、現在、創業100年となります。
ごめんなさいね。
以後、何年前と書かれていたら10年加算して読み換えてください。ご面倒をおかけします。

さて、
この会社がある新潟県三条市は、モノづくりの歴史が長く、江戸時代には包丁や農具から日本独自の製法で作られる和釘やノミ・カンナなどの大工道具まで作る道具屋の町。
例えば、
伊勢神宮の「式年遷宮」が行われた平成5年(1993)と平成25年(2013)の建て替えに使用された和釘と金具類はすべて、ここ三条市の協同組合三条工業会が納入しているとのことです。
そんなモノづくりの歴史と伝統が、この『マルト長谷川工作所』にも息づいている、と筆者は強調します。
つまりは、
「伝統技術」を活かして世界を統べる会社の一つだ、と。

最初は大工道具を作っていたのですが、創業者の長谷川籐三郎さんがペンチの製造に乗り出し、これで成功したものの、終戦後は大口ユーザーだった海軍への販売がゼロとなったため、新しい販路を求め、海外へ活路を求めたのだそうです。

ドイツの見本市では、
家庭で使う工具類ではなく、プロが使う工具類を求められ、挑戦した結果、最高品質の工具が生まれ、世界トップのニッパーを作り出したといいます。

「新潟県人、なかでも三条地域の人たちにはモノづくりのDNAが流れている」と社長は言い、「ただのニッパーではなく、”切れ味”.を持つニッパーはこの三条の職人でなければつくれない。ニッパーにも感性が求められる」から、その三条の職人を、社員を大事にしているのだと。
現社長は海外に生産拠点を持つ考えはなく、
地域に根ざし、リストラもせず、製造工程の合理化を進めるものの、
輸出では、ほぼ100%円建てで実施。
大企業さえ苦しむ為替変動リスクを回避してきたといいます。

この小さな会社は、燕三条のモノづくりの伝統の中で生まれ、育ち、地元を大事にして、自分たちの強み、我慢強さ、忍耐力でもって、高品質品を生み出して、世界品質のKEIBA印の工具、ピアノ線を切断できるニッパーやMARUTOブランドの爪切りでトップを取る、まさに匠(たくみ)の会社です。

小さいけど、頼もしい日本企業です。老舗企業が多い日本の強み、秘密をここでも発見できた気がします。

多摩湖の夕陽

カニカマはSURIMIという名で世界的爆増中。

次の会社は、カニカマ製造機の会社です。

蟹もどきの「カニカマ」。
このカニカマの世界一消費国はフランス。
第二位がスペインで、
わが国は第三位となるらしい。
また、
世界最大のカニカマ生産工場は東欧のリトアニアの「ビチュナイViciunai」という会社であり、
欧州でのカニカマ消費量が爆増しているためらしいんです。

このことを「世界に冠たる日本の中小企業」というこの本で、はじめて知りました。

さて、
その「カニカマ」を作るカニカマ製造機械の約70%のシェアを持つ会社が山口県宇部市にあります。
世界最大の生産工場であるリトアニアの工場にも、この日本の会社の機械が導入されています。

そもそも、「カニカマ」は日本生まれの魚の練り製品です。
あの一昨年(2024年)元日に起きた能登半島地震の痛手がいまだ残る石川県七尾市の生鮮加工会社「スギヨ」で作られたのだそうです。
1972年、
半世紀前のことですね。

日本では「カニカマ」と呼ばれていますが、
海外では『surimi』と呼ばれるそうです。

カニカマなどの魚の練り製品の説明会で、日本人が使っていた”すり身”という言葉がそのまま製品の呼び名になったのでは?
そう言うのは、このカニカマ製造機械の世界トップシェアを誇る会社「ヤナギヤ」の柳屋社長です。

平成元年(1989)、
世界のカニカマ生産量は15万トンでしたが、
平成25年(2013)には50万トンに達しているといいます。

25年ほどで、
世界の生産量が四倍近く増えたのは、東欧を含むヨーロッパ各地で大きく増加したからだそうです。
ですから、
その消費国もフランスやスペインが先頭を走り、世界のカニカマ消費量を押し上げているんです。

このカニカマ製造機械のトップシェアは偶然の賜物ではなく、
最初は山口県でも20%ほどの製造機シェアだったのが、
当時の課題だった「顧客の不満」を素直に受け止めて、
一つづつ解決することで、業界の評判を得て、
さらには、海外では生産者の同業者からの引きで好転連鎖を生じて、
いまや世界最高水準のカニカマ製造機械だとの評価を得たのが「ヤナギヤ」という製作所です。
その道はかなり過酷な道で、
先のマルト長谷川工作所のペンチづくりもですが、その世界のトップブランドになるまでの努力と苦労は、じつに並大抵なものではありません。

こうした一連の経緯の中で「ヤナギヤ」の経営指針になったことが、次の4つだとのことです。
①誰もやらないことをやる
②あの会社がなくてはダメだと頼られる会社になる
③仕事を知り尽くす
④一歩先を提案する

「ヤナギヤ」はカニカマ製造装置だけでなく、蒲鉾、豆腐、豆乳、海苔乾燥機といった数多くの食品機械を製造しています。

いまや、
世界の「カニカマ」なんだと初めて知りました。


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