懐かしの景色とバックミラーに映る君
先週末は、地元・神戸で父の四十九日法要と納骨でした。納骨は母もまだ済ませていなかったので、ふたり一緒に。なんだか大きな仕事をやり遂げた気分です。
両親を見送るのって、子どもにとって生涯最大の務めなのかもしれない。めちゃくちゃ重責だけれど、ちゃんと果たすことができてよかったなぁとしみじみ思うのです。
けどね、納骨って思っていた以上に寂しかった。お骨が自分の手を離れた寂しさもあるんだろうけど、それ以上に「完全に帰る場所がなくなっちゃった」という侘しさ、物哀しさのほうが大きいかも。
まだ実家はあるんだけど、だーれも住んでないしね。父の葬儀ぶりに部屋の中に入ったら、めちゃくちゃひんやりとしてました。人気も火の気もない家ってこんなにも寒いんやって、初めて知ったよ。
ふたりが元気なときは、実家がどうなったってわたしには関係ないと思ってました。なんなら帰省するのも「遠くてめんどくさい!」って言ってたのに、この寂しさはなんなんだろ。年を重ねると故郷が恋しくなるのは、こういう気持ちから始まるものなのかもしれないね。
◇ ◇ ◇
それにしても、ハードな週末でした。金曜の夜遅くに福岡を出て、神戸まで約600kmのドライブ。家族が多いから、移動はどうしても車になっちゃう。走る→仮眠→走る→仮眠を繰り返し、神戸に着いたのは翌朝。結局、車中泊となりました。首が痛い。腰も痛い。
と、大層に語っていますが、600km運転したのはすべて旦那です。え?わたし?高校生のお弁当作りが始まってから、毎日寝不足で……(言い訳)わたしだけ仮眠→熟睡→仮眠→熟睡、要はずっと寝てました。ほんまごめん。
おまけに、神戸に着いてからも全部旦那が運転してくれて。わたしのほうが道に詳しいのにね。ほんまのほんまにごめんやで。しかも、内に秘めたる寂しさを知ってか知らずか、地元をかるーくドライブまでしてくれたんです。
「ここ!おかあさんが通った中学校やで!」
「へぇー(子どもたちの興味なさそうな相槌)」
「ほら、あの階段の奥にでっかい木があるやろ?あの前で、卒業アルバム用の写真撮ってん!」
「へぇー(子どもたちの興味なさそうな相槌)」
「おかあさんの隣に写ってた子がクラスで一番可愛い子でさー。なんの罰ゲームやねんって思ったわ」
「へぇー(子どもたちの・・・以下略)」
「あー!この公園!冬になると、公園の周りをよぅ走ったなぁー。おかあさん、水泳部やったからさ。プールに入られへん時期はずっと走らされててん」
「でな、あのあたりの木陰に隠れて、ちょくちょくサボってたんよ。先生に見つかったら、めちゃんこ怒られたけどな」
「へぇー」
「成人式の日の夜にみんなで集まったサイゼやー。懐かしいなぁー。おかあさん、永遠の25才やからちょうど5年前やなー」
「へぇー」
「そういえば、お金ないから言うて、ミラノ風ドリアばっかり3つも注文した男子がおったわ。あいつ、今、何してんやろなー」
「サイゼのあとにカラオケ行ってんけど、そいつ『ブラッシュアップライフ』の加藤ばりにうまいねん。ビビったわ」
「へぇー」
何を言っても「へぇー」しか言わない子どもたち。ここはトリビアの泉か?それでもめげずに(!)話し続けていると、思わぬ展開に。
「あ、この定食屋さん。じぃじが入院した日の帰りに食べたとこや。ほんで、隣のコンビニでデザート買って帰ってん。あれが最後の入院になってしもたなぁ」
セオリー通りなら、ここで子どもたちの「へぇー」が来るはずなんだけど、めずらしく旦那が口を挟んできたのです。
「そういえばさ、俺、言うてなかってんけどさ」
「ん?何?」
「神戸に来る間、じぃじがずっと車に乗ってたで」
「!!!」
予想外の告白に、子どもたちのテンションが一気に変わりました。
「えっ!どういうこと?じぃじの幽霊???」
「パパ、幽霊見えるん?なんで?」
「ボクも見たかったな。あー、でもやっぱちょっと怖いなー」
わたしと子どもたちが爆睡している中、旦那はバックミラーに映り込む父と一緒に、ここまで長旅をしてきたらしいのです。
「じぃじ、どんな感じやった?」
わたしは旦那に聞いてみました。「自分を責めなくてもいい」と大勢の人に言ってもらったけれど、やっぱ今でも申し訳なさが消えないんよね。最期を独りきりにしてしまって、怒っていないか悲しんでいないか、どうしても気になる。
「顔は見えんかった。バックミラー越しに頭のてっぺんがチラチラ見えるだけで」
それが本当のことなのか優しい嘘なのかはわからないけど、旦那はそう言ってました。
「四十九日の法要が終わってから、ピタッと見えへんようになったわ」
亡くなった人の魂は四十九日までこの世にいるなんて言われたりするけれど、父の魂も福岡まで来てくれてたんかなぁ?葬儀が済んで後飾りでお祀りしている間、父の存在を不思議なくらい身近に感じていました。今から思うと、こういうことやったんかもなー。
まぁ、でも。見えなくなったということは、無事に極楽浄土へ旅立てたということなのかもしれません。うん、きっとそうだ。
今頃、母と二人、あの世で仲良くやっていることでしょう。否。「私がおらんようになったら、すぐにテレビやなんやら買い換えて!生協もアホみたいに注文して!無駄遣いし過ぎや!」と、怒られてるかもね。
【あとがき】
ヤスさん企画の三題噺。先週分のお題が出されてから、毎日考えたりコツコツ書いたりしていたのですが、〆切に間に合わず・・・無念。みんなどうしてあんなマッハのスピードで仕上げられるんだろ。羨ましすぎる。
せっかくなので、タグ付けなしで投稿させてください。小説じゃなくエッセイなので、イレギュラーな作品かもしれませんが。最後、じぃじが車に乗っていた云々のくだりも実話です。世の中には理屈で説明できないことが起きるんだよね。
≪4/18三題噺:お題≫
『幽霊』
『卒業アルバム』
『サイゼリヤのミラノ風ドリア』
ヤスさん、ありがとうございました!
▼ヤスさんからの三題噺挑戦状はコチラ
▼今週のお題はコチラ!
いいなと思ったら応援しよう!
応援ありがとうございます!これからも心を込めて、書いていきます!