見出し画像

「ピアノか、5教科か」の二元論が子どもの才能を窒息させるースイス名門校が音楽に求める“真のレジリエンス”

先日、日本の私立小学校にお子様が通われている親御様から、背筋が凍るようなエピソードを聞きました。

その女の子はピアノが好きで、しかも非常に得意で、素晴らしい才能を持っています。小学校の音楽会でも校歌や課題曲の伴走をするくらいに。ところが、小学校の二者面談で、担任の教師から親御さんに対してこう告げられたそうです。

やがて、ピアノを捨てて勉強に集中しなければいけない時が来ると思います

理由は定かではありません。ピアノで食べていける人は一握りだから、現実を見て5教科のテスト勉強を頑張れということなのか。

いずれにせよ、この教師の発言には、日本の公教育が抱える凡人の大量生産システムの病理がすべて詰まっていそうです。


「プロになれないなら無駄」という貧困な発想

「ピアノでプロになれるのは一握り」

——この常套句は、極めて表層的な視点です。

国内トップのインターナショナルスクールやIB(国際バカロレア)認定校、そしてアメリカやスイスの名門ボーディングスクールが、音楽やアートにおける卓越した実績を高く評価する理由。

それは決して、その生徒が将来プロの音楽家になると見込んでいるからではないのです。

かつてTestnationからスイスのボーディングスクールへ羽ばたいた男子生徒の例をお話しします。 彼は幼少期からピアノを習っており、現地でIB Music(国際バカロレアの音楽)を履修し、ピアノでの編曲(アレンジメント)というびっくりするほどの高度な課題に取り組んでいました。

彼は今、立派にグローバル社会人として活躍しています。
ピアニストになったわけではありません。

彼が学んだのは、単なる鍵盤の叩き方ではなく、既存の構造を分解し、自らの思想で再構築するという高い抽象思考力だったのではないかと推察しています。それが現在の彼のビジネスの現場で、圧倒的な武器として生きているのです。

それを「将来のお金にならないから受験の邪魔だ」と切り捨て、成績表の「C」を「A」にするために、最大の武器を削り落とそうとする。 もしあの教師のアドバイスに従っていれば、彼は「突出した才能を持たない、ただの少し勉強ができる透明人間」へと成り下がっていたでしょう。

連日の教育戦略ミーティング

この夏の時期、私たちTestnationはご家庭との教育戦略ミーティングを連日行っています。そこで親御様から不安の声と共に、時にこのような質問を投げかけられることがあります。

「苦手な弱点克服をそこまで頑張らなくていいから、得意なものだけで勝負できる海外のボーディングスクールを目指しているんですよね?」

私たちは、「システムとしてはその通りです」とお答えします。

実際にIB(国際バカロレア)やA-Level、APといった世界のカリキュラムは、日本の受験のように全科目をまんべんなくこなすことを求めてはいません。自分の得意な科目をハイレベル(HL)で極め、不得意な科目は戦略的にスタンダードレベル(SL)に留めるという選択と集中が明確に許容されています。

だけれども、もし親御様が「だから、日本の嫌な受験勉強から解放されてラクになる」と思っているのであれば、それは致命的な勘違いです

夏の風物詩である水泳競技を想像してみてください。
日本の受験が、すべての泳法をそつなくこなさなければならない個人メドレーだとすれば、海外のトップ校での戦いは得意な単種目(自由形)の決勝レースです

親御様は「苦手なバタフライや平泳ぎの練習をしなくて済むからラクだ」と安心するかもしれません。ところが、いざ自由形のスタート台に立ってみると、隣のレーンに並んでいるのは、バタフライや平泳ぎを早々に捨て、自由形だけに狂気的なまでの情熱と時間を注ぎ込んできた世界中のバケモノたちなのです。

弱点克服という苦痛から解放されるということは、自らが選んだ圧倒的な強みという刃一本で、このさらに苛烈な決勝レースに身を投じるということを意味します。

苦手な数学を平均点まで引き上げる苦労と、得意なアートやエッセイで世界のトップ層と知的に殴り合う苦労。果たしてどちらが過酷でしょうか。

グローバル教育環境へ行くということは、決して「逃げ道」ではありません。自分の最も得意な領域において、逃げ場のない真剣勝負を挑むためのコロシアムへの入場券なのです。

レジリエンスやグリットを履き違える大人たち

ここで、現代の教育において最も誤解されている言葉について触れておきます。レジリエンス(回復力)グリット(やり抜く力)という言葉です。

昔はそんな格好いい言葉などなく、単純に「向上心を持ったやつが、ガッツ(精神力)で多少の無理をし続け、結果を求めてやり抜くこと」が当たり前でした。 しかし最近、この「レジリエンス」という言葉は、まるで「苦しいことや苦手な科目を乗り越えるための応援歌」のように都合よく使われてるのではないでしょうか。先ほどの教師が「ピアノを捨てて、嫌いな勉強に耐えろ」と言うように。

これは大きな間違いです。 レジリエンスとは、嫌なことに耐えるための力ではなく、むしろ「自分の好きなこと(強み)」を極め続け、圧倒的な高みへと引き上げるためにこそ発揮されるべきものなのです。

ペンシルベニア大学の心理学者アンジェラ・ダックワースは、成功者の共通点としてGrit(グリット)を提唱しましたが、多くの日本人はこれを根性(Perseverance)と誤訳しがちかもしれません。

しかし、彼女の本来の定義は下記です。

Grit = Passion(情熱) + Perseverance(粘り強さ)

ダックワースの研究では、「ただ苦痛に耐えるだけの粘り強さ」は長続きせず、トップレベルの達成には至らないことがデータで示されています。さらに、その対象を深く愛している(強み・興味)というPassionというエンジンがあって初めて、困難を乗り越えるレジリエンスやグリットが持続可能になると結論づけています。

別の研究でもおもしろい結果がでています。世界的な世論調査・コンサルティング企業であるギャラップ社は、数十年をかけて何百万人ものビジネスパーソンや学生のデータを収集し、弱点克服よりも強みの最大化が圧倒的な成果を生むことを証明しています

彼らの公式レポートである"Employees Who Use Their Strengths Outperform Those Who Don't"によると、毎日自分の強み(得意なこと)を使っている人は、そうでない人に比べて、仕事や学習へのエンゲージメント(没入度)が6倍高く、困難から立ち直るレジリエンスが顕著に高いことが分かっています。弱点克服にエネルギーを割くことは、心理的なバーンアウトを引き起こしやすいというファクトです。

では、この真の精神力は、どのようにして若者の人間的バックボーンにインストールされるのでしょうか。大きく分けるとルートは3つしかありません

①原体験: 勉強やクラブ活動において、自ら限界を突破した強烈な成功・挫折体験。

伝承: 経験がまだ浅くても、親をはじめとする大人が「それが生きる上で最も大事だ」と徹底的に教え込むこと。

アート(芸術): 小説の行間や、音楽の深い没入体験(まさに先ほどのピアノです)から、人間の精神の美しさと本質を疑似体験として吸収すること。

あのピアノの女の子は、日々の過酷な練習と没入(アートの体験)を通じて、すでに世界基準のレジリエンスを獲得しつつあったのです。それを大人が奪うなど、言語道断です。

「無意味な苦痛」と「知的な摩擦」を切り分ける

苦手なことや、本人が全く興味を持てないことを、日本の偏差値基準に合わせて無理やりやらせ続けること。これは子供にとって無意味な苦痛であり、撤退すべき領域です。

しかし、「得意なこと」「熱狂していること」の領域においては話が全く別です。 一つの強みを世界トップレベルまで引き上げる過程には、必ず強烈なプレッシャー、分厚い壁、そして残酷な敗北が待っています。しかもこれらは決してトラウマなどではなく、お子様の思考の背骨を太くするための知的な摩擦です。

親の役割は、子供をこの摩擦から守る無菌室を作ることではありません。 子供が自分の選んだ戦場(強みの領域)で、思い切り壁にぶつかり、傷つき、挫折した時に、それを致命傷にさせず、次の一歩を踏み出すための安全基地(セーフティネット)として機能することなのです。

弱点を埋めるための無意味な苦痛からは、逃がしていい。
だけども、自らの強みを磨き、世界で勝ち渡るための正義のストレスと強烈な摩擦からは、絶対に逃がさない

その傷つく覚悟を持てたご家庭の子供だけが、自分の強みを狂気的なまでに研ぎ澄まし、真のグローバルエリートへと覚醒していくことが多いのではないでしょうか。

真の知的な摩擦をデザインする

お子様が今抱えている苦痛は、撤退すべき無意味な我慢なのか。それとも、次のステージへ向かうために不可欠な知的な摩擦なのか

そして、お子様の内に秘められた本当の強み(Spike)を、世界のトップ校がリスペクトするレベルまでどうやって研ぎ澄ませていくのか

この見極めとさじ加減を、親の愛情というバイアスがかかった家庭内だけで正確に行うのは、なかなか困難かもしれません。もちろん、そのひとつひとつの困難は振り返ると笑い話にはなりますが。

私たちTestnationがご提供する教育戦略ミーティングや日々のセッションは、単なる留学手続きやテスト対策ではありません

お子様の知性の体幹の強さを深く解剖し、ご家庭が向かうべきグローバル教育の羅針盤をミリ単位の精度で補正していく、高度なコンサルティングです。

もし、無難な優等生ではなく、世界でリスペクトされる圧倒的な個へと我が子を導く覚悟がおありなら、ぜひ一度、Testnationの扉を叩いてみてください。

私たちが【The Gold Standard】の圧倒的な精度と熱量をもって、お子様の真の才能を覚醒させるための戦略を描き出します。

▼ Testnation公式ウェブサイト/教育戦略ミーティングのお申し込みはこちら


この記事が参加している募集